培養された「ラムひき肉」が誕生。見た目も味も従来のラム肉と同等の仕上がり

「細胞農業」が、サステナブルな食料生産方法として関心を集めている。「セルアグリ」とも呼ばれる細胞農業は、従来の家畜や水産資源などに比べて、特定の細胞を培養することで収穫できるため、効率的な生産が可能だ。

世界23か国で100社以上の企業が培養肉の開発に取り組むなか、イスラエルのフードテック企業「Future Meat Technologies(フューチャーミート)」は、「培養ラム肉」の生産を2022年8月25日に発表した。

世界最大のラム肉消費国であるEUに加え、中東、北アフリカ、アジアの一部など、多くの国々でラム肉は主要な食肉だ。同社の培養ラム肉は、見た目も味も従来のラムひき肉と遜色なく、バーガーやケバブの調理に最適だという。

フューチャーミートは、2019年から培養ラム肉開発に着手。アワシという種類の羊から分離した線維芽細胞から、無限に分裂する2つの羊の細胞株を生成した。同社が生産した動物細胞株は、遺伝子組み換えをせずに永遠に成長する。動物の屠殺の必要がなくなり、食品生産業界の根本的な変革の一翼を担う企業として期待が集まっている。

羊の細胞株から、大規模な培養ラム肉生産ができるようになった同社の革新的な技術は、今後牛肉や豚肉を含む他の培養食肉の生産にも活用されていく。2022年着工予定の新たな施設では、米国市場への参入準備として、ラムやチキンを含む培養肉製品の生産規模拡大に焦点を移していく。

米国のフードテック企業Eat Justが開発した培養鶏肉は、2020年にシンガポール政府から世界初の培養肉の販売許可を取得した。日本ではまだ培養肉は市場に出ていないが、特定非営利活動法人日本細胞農業協会が実施した調査では、39.1%が「培養肉を知っている」と回答。また、27.9%が「市販で売られている肉より高い金額でも培養肉を食べてみたい」と回答した。

国内でも、日清食品と東京大学の共同研究グループなどが、培養肉の開発を進めている。今後、国内外でどのように規制が確立され、消費者に受容されるのかどうか、動向に注目していきたい。

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【参照サイト】 AN INDUSTRY FIRST: FUTURE MEAT TECHNOLOGIES PRODUCES CULTIVATED LAMB, EXPANDING ITS PRODUCT LINE AND TRANSFORMING THE GLOBAL LANDSCAPE
【参照サイト】 多様で豊かな食文化をもつ日本人の次世代の食に関するアンケート

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