新型コロナウイルス感染拡大の影響で、飲酒を取り巻く環境が大きく変化している。第一生命経済研究所が2022年2月に公開したレポートによると、コロナ禍で外食での飲食の機会が大幅に減ったことで、国内における酒関連の支出金額が大きく減少している。家飲みの需要は大きく増加しているが、外飲み需要を補うほどの消費増に至っていないのが現状だ。
そうしたなか、販売数量が大幅に落ち込み廃棄危機となったビールを再利用する取り組みが行われている。「循環経済を実現する蒸留プラットフォーム」をモットーに、廃棄素材を使用したクラフトジンの生産や、再生型蒸留所を運営する蒸留ベンチャーの「エシカル・スピリッツ株式会社」は、余剰ビールを蒸留し、ジンとして再生した「REVIVE(リバイブ)」シリーズを販売している。このシリーズから新たに2種のクラフトジンを生産し、2022年5月9日よりオンラインショップで一般販売を開始する。コロナ禍で2021年の夏までの段階で廃棄危機となった余剰ビール約60,000リットルが 、15,000本以上のクラフトジンとして蘇るという。
REVIVEの生産は、バドワイザーを展開するアンハイザー・ブッシュ・インベブ ジャパン会社と、老舗日本酒メーカー・月桂冠、エシカル・スピリッツ株式会社の3社が共同で、2020年9月より数量限定で行っている。再生と循環をテーマに、通常は廃棄される「酒粕」をジンに再生する取り組みを行ってきたエシカル・スピリッツ。同社の持つビールを蒸留しジンに変える技術を月桂冠へ提供。また廃棄予定であった約80,000杯分のバドワイザーの提供を受け、世界にも類を見ない漬け込み式のビールから生まれたジン・REVIVEが誕生した。
余剰ビールを再生するには2段階のステップが存在するという。一次蒸留のステップでは、まずはビールをジンのベーススピリッツにするために2回蒸留を行う。今回このプロセスでは茨城県の「明利酒類株式会社」と協力し、2021年9月から約2ヶ月でベーススピリッツが完成した。最終蒸留のステップでは、蔵前にある「東京リバーサイド蒸溜所」にて、ベーススピリッツの香りやそれぞれのブランドを意識したボタニカルを使用し、クラフトジンとして製品化した。
今回生産した「Root」と「Disrupt」の2種は、蒸留レシピをそれぞれ2段階で用意したもの。合計4種のレシピが存在している新シリーズのうち、この2種を第1弾として販売。第2弾の販売は今年の夏を予定しているという。
その他にも同社のオンラインショップでは、福祉を起点に新たな文化を創る「ヘラルボニー」とのコラボレーションデザインをラベルに施した日本酒の再生ジン「NINJA」や、3種のエシカルスピリッツを飲み比べできるディスカバリーセットなどを販売している。
エシカル・スピリッツ株式会社の社名にもある「エシカル」。消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮し、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うのが「エシカル消費」だ。近年、エシカルな商品が増えてきているが、その波は酒類業界にも見えはじめている。酒類を提供するレストランやホテルにおいては、今後無視できない話題となってくるだろう。
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