近年、農林業の分野でも化学肥料や化石燃料を使わないサステナブルな農林業「循環型農林業」が注目されている。馬搬(ばはん)・馬耕(ばこう)といった馬を使った農林業もその一つだ。昭和初期以前、馬や牛の畜力を使った農林業は、日本中のあらゆる場所で見ることができた。昭和中期に機械化が進むことで、馬による農林業は急速に姿を消していった。道の整備されていない山から木材を馬で運びだす「馬搬」は、山を無理に削る必要がないため、自然環境や水源の保全に役立つ。馬で田畑を耕す「馬耕」では、馬糞も優れた肥料として活用されている。

こうした馬による循環型農林業の認知を広めるため、2022年1月23日に「はたらく馬と米作り -鈴木杏樹さんと現役馬方が語る日本の伝統農林業-」と題したイベントが開催された。イベントが行われたのは、東京都有楽町にある「Sustaina Station DaiDai」。メイド・イン・ジャパン・プロジェクト株式会社が運営する、サステナブルなプロダクトや食品を販売するショップと産地直送の食材を使用したカフェが併設された施設だ。

イベントでは、日本で数名となった馬搬・馬耕の技術者である岩間敬氏、一般社団法人メイド・イン・サスティナブル・プロジェクトのアンバサダーを務める女優の鈴木杏樹氏、馬搬材を使った絵馬を手がける絵馬師の永崎ひまる氏、モデレーターの峯田さゆり氏による、馬搬・馬耕の文化と現在における取り組みについてのトークショーが行われた。

また、馬耕で作った米「馬耕米」を使った定食、猪肉を使用したおつまみプレート、そして馬耕米で作られた日本酒「田人馬(たじんば)」が提供された。

この「田人馬」は、一般社団法人馬搬振興会の代表理事として人馬材育成にも取り組む岩間敬氏が立ち上げた株式会社三馬力社が販売する日本酒だ。馬耕により無農薬で育てられた酒米から作られており、化粧箱も馬搬で運び出した木「馬搬材」で作られている。白と黒の2種類のラインナップがあり、田人馬(白)は、圃場のある新潟県津南町の地元酒造会社「津南醸造」による純米大吟醸酒。田人馬(黒)は、創業1645年の京都の酒蔵「招德酒造」の生酛造りで、日本酒ながら1−2年、またはそれ以上の長期熟成が期待される。
効率化を優先し、目にする機会が減った馬搬や馬耕による農林業。また、馬を調教するにもスキルが必要だ。一方で、現代の農業では農薬や化学肥料による土壌汚染などが問題となっている。馬搬や馬耕のような循環型農業は限りある自然を大切にし、有効利用しながらうまく共存しているといえる。田人馬のようなサステナブルなストーリーのある食材を扱うことで、お客さまへお店の姿勢を伝えるきっかけにもなるだろう。次回のイベントは4月に行われる予定なので、興味のある方は参加してみてはいかがだろうか。

【参照サイト】 [レポート]はたらく馬と米作り -鈴木杏樹さんと現役馬方が語る日本の伝統農林業-
【参照サイト】 [イベント]はたらく馬と米作り -鈴木杏樹さんと現役馬方が語る日本の伝統農林業-

table source 編集部
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table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
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