隈研吾 家具

素材を生かし、デザインやアイデアによって新たな価値を生み出す「アップサイクル」。資源循環の方法のひとつであり、「クリエイティブ・リユース(創造的再利用)」とも呼ばれている。

大量生産・大量消費が主流の現代において、持続可能な循環型社会への移行が求められる今、アップサイクルは特に注目されるキーワードだ。

世界中で役目を終えた廃棄物をアップサイクルする取り組みが進むなか、今回は、ものづくりの段階からその先のアップサイクルまでを視野に入れた国内の事例を紹介したい。

隈研吾 家具

東京のラグジュアリーライフスタイルホテル「東京エディション虎ノ門」と「東京エディション銀座」では、昨年のクリスマスシーズンに、有名建築家・隈研吾氏デザインによるクリスマスツリーをディスプレイ。
そして、2025年2月10日よりホテルウェブサイトにて、このクリスマスツリーの木材パーツを使って製作する「生まれ変わり永遠を生きる」家具の販売をスタートした。

さらに、マスターピースのサイレントオークションを同日から4月9日まで実施することも発表。各1点ずつ創り出される特別なこの家具は、期間終了後に最高価格入札者に落札される。

隈研吾 家具

サステナビリティを一つの柱としたこのプロジェクトは、フェスティブシーズンが終わった後にツリーから家具を創り出すことを前提に構想されている。木製のツリーは、どちらのツリーも小さな木のユニットを積み上げ、それぞれの街の特色を表現しているという。また、日本の森から調達したナラ・セン・ホオ・クルミ・イタヤカエデといった、複数の樹種を使うことで、森の循環・育成に貢献している。

それぞれのツリーで使用したパーツはアップサイクルされ、隈研吾デザイン、カリモク家具製作による、特別な家具へと生まれ変わる。

また、より良い社会を実現する活動の一環として、そしてホリデーシーズンの美しい「贈り物」の慣習にならい、家具の販売とオークションの収益を、難病と闘う子どもたちの支援を行うボランティア団体「公益財団法人メイク・ア・ウィッシュオブジャパン」へ寄付するという。

KIGUMI DESK 東京エディション銀座

隈研吾 家具

世界の最先端と日本の伝統文化が織りなす街、銀座。「織る」をテーマにした建築、宝石箱をイメージしたロビーに合わせて、木の枝で織って創られた、ジュエリー・ツリー「木組み」から生まれるKIGUMI DESK。

「直線状の木の枝、『木組み』のユニットで作ったジュエリー・デスク。ブロンズとシルバーのメタル塗装が、手作業で仕上げられた樹種ごとの木の美しさを引き立て、世界で同じものが二つとないピースとなっています。」 – 隈研吾

KIGUMI DESK
サイズ: 幅・奥行480mm 高さ720mm / 重量:約7kg
価格:22万円(税込・送料別)

KIGUMI DESK MASTERPIECE
サイズ:幅・奥行1400mm 高さ750mm / 重量:約50kg
オークション入札期間:2025年2月10日– 4月9日
最低入札価格:96万円(税込・送料込)
主要素材:天板:合板突板仕上げ / 脚:天然木(ナラ・セン・ホオ・クルミ・イタヤカエデ・ウォールナット)*ツリーパーツリユース

KOMOREBI TABLE| 東京エディション虎ノ門

隈研吾 家具

開発が進み、日々変化する若々しい街、虎ノ門。明るい「森」をイメージした高い天井のロビー空間に合わせてデザインされた、「木漏れ日」が集まったようなツリーから生まれるKOMOREBI TABLE。

「木のリングとディスクを組み合わせて作った、柔らかく有機的なテーブル。円形の鏡がきらきらと光を集め、明るく軽やかな木の表情を引き立てます。」– 隈研吾

KOMOREBI TABLE
サイズ:幅・奥行800mm 高さ370mm / 重量:約16kg
価格:35万2000円(税込・送料別)

KOMOREBI TABLE MASTERPIECE
サイズ:幅・奥行1500mm 高さ708mm / 重量:約70kg
オークション入札期間:2025年2月10日– 4月9日
最低入札価格:141万円(税込・送料込)
主要素材:天板:ガラス / 脚:天然木(ナラ・セン・ホオ・クルミ・イタヤカエデ)*ツリーパーツリユース

KIGUMI DESK とKOMOREBI TABLEは、港区西麻布のKARIMOKU RESEARCH CENTER(カリモクリサーチセンター)で現物を見ることができる。(要事前予約)

隈研吾 家具

アップサイクルに関する2021年の意識調査によると、「興味がある」と回答した人は65.3%と、半数以上にのぼった。試してみたい商品についての質問では、「規格外の魚・野菜を利用した食品」を選んだ人が54.9%と最も多かったが、「廃材・端材を使ったインテリア用品や家具」と回答した人も32.9%にのぼることが分かった。
近年、人々の環境意識はますます高まっており、2025年現在ではこれらの数字がさらに増えているのではないだろうか。

今回紹介した「東京エディション虎ノ門」と「東京エディション銀座」の事例のように、製品設計の段階から再利用しやすい素材や構造を採用することで、廃棄物を減らし、資源を有効活用できる。

さらに、役目を終えた後も新たな価値を生み出すことで、お客さまの共感を得るとともに、持続可能な循環型社会の実現にも貢献できる。これからのものづくりには、こうした視点を取り入れることがますます重要になるのではないだろうか。

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【参照サイト】【東京エディション虎ノ門・東京エディション銀座】建築家 隈研吾氏によるクリスマスツリー「生まれ変わり永遠を生きる」家具として2025年2月10日(月)より販売開始
【参照サイト】【東京エディション虎ノ門・東京エディション銀座】建築家 隈研吾氏による「家具として生まれ変わり永遠を生きるツリー」をお披露目
【参照サイト】コロナ禍で、ごみへの意識が変わった!? 「アップサイクル」に興味のある人 65.3% 日本人の「もったいない精神」に響いている!?

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table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
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