消費者の命を脅かす危険もある、食品アレルギー。消費者庁は2021年に「加工食品のアレルギー表示ハンドブック」を作成。飲食店で食品を提供する際に、メニューやホームページに特定原材料を表示したり、研修でスタッフに周知するなど、健康被害の未然防止に取り組むよう呼び掛けている。
世界中でも食品偽造問題の発生などにより食の安全が懸念されるなか、食品スタートアップを支援するベルギーのEIT Foodが資金提供するプロジェクト、「ETHIChain」が進行している。EIT FoodはEUが支援を行っている組織だ。
ETHIChainは、イスラム教のハラールやユダヤ教のコーシャ食品といった宗教的な規律を重んじる食品や、ヴィーガン食品の透明性を高めるため、加工食品の成分を迅速に検査するDNA分析システム開発に着手している。EUをはじめ、世界各国の大学や企業等もパートナーとして名を連ね注目を集めている。
同プロジェクトで取り組むのは、3種類の診断ツール。1つ目はヴィーガン食品に含まれる肉の診断で、加工食品のほか、調理済の食品にも調査が進められている。2つ目はイスラム教のハラール食品に含まれる豚肉、3つ目はユダヤ教のコーシャ食品に含まれる馬肉やロバ肉を診断するツールだ。
一般的に診断には、ポリメラーゼ連鎖反応と呼ばれる技術が多く用いられ、大掛かりな装置と熟練技術者が必要となる。一方、同プロジェクトが開発中のシステムは、等温増幅法DNA分析を用い、最短30分で結果が分かり、費用対効果も高い。また、2時間程度の訓練を受ければ、誰でも使用できるようになり、導入コストも比較的抑えることができるという。
2021年5月から開始され、現在はデジタル化プラットフォームの完成段階に入っている同プロジェクト。2023年後半または2024年初頭までの完成を目指しているという。完成後は、EU圏内を始めとして、更なる流通拡大を目指す。将来的に日本でも同システムが飲食店に導入されるようになれば、食品偽装された食材の調達を未然に防ぐことが当たり前になる日も、そう遠くはないかもしれない。
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【参照サイト】 Rapid DNA Analysis System Being Developed To Audit Processed Vegan Foods
【参照サイト】 ETHIiChain
【参照サイト】 EIT Food
【参照サイト】 ‘We can fight food fraud at species level’.EthiCheain develops rapid DNA analysis for processed foods
【参照サイト】 加工食品の食品アレルギー表示ハンドブック