ニューヨークの老舗有名レストラン、伝統的なチキンメニューを植物性にアップデート

Delmonico´s restaurant

世界中で健康や環境に配慮した食への関心が高まるにつれて、食事スタイルも多様化している。企業や飲食店にとって、消費者のサステナブルなニーズに対応することは重要な課題だ。

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2023年1月に実施された調査によると、日本国内のベジタリアンもしくはヴィーガンの割合は全体の5.9%を占め、2021年の調査と比べて微増している。また、週に1回以上、意識的に動物性食品を減らす食生活を送るフレキシタリアンは全体の19.9%で、こちらも2021年より3.1%増加したという。

こうした動物性食品を避ける人々は食べられる料理が限られるため、特に外食時の選択肢が狭まりやすい。もし飲食店でプラントベース(植物由来)メニューが充実するようになれば、個人の主義や嗜好を問わず、誰もが自由に外食を楽しめるだろう。飲食店がヴィーガンやベジタリアン向けのメニューを開発するにあたって、既存の料理を代替品に置き換えて作るのもひとつの手段だ。

例えば、アメリカのニューヨークにあるレストラン「Delmonico’s(デルモニコス)」では、植物由来の代替食品によって伝統的なチキンメニューを現代に適合させている。

1837年の創業以来、Delmonico’sはアメリカを象徴する料理を数多く生み出してきた。日本でも有名なエッグベネディクトをはじめ、デルモニコステーキやロブスターニューバーグといった革新的な料理は、現在もメニューに載っている。

そのなかでも定番の「Chicken a la Keene(チキン ア ラ キーン)」が、今ではプラントベース仕様でも注文できるようになった。

チキン ア ラ キーンの起源ははっきりしないものの、1880年代にDelmonico’sのシェフであるCharles Ranhofer氏が考案したという説が有力だ。また、オリンピックの金メダリストでサラブレッド競走馬のオーナー兼ブリーダーであり、ウォール街の投資家としても知られるJames R. Keene氏の息子であるFoxhall P. Keene氏にちなんで名付けられたといわれている。1940年代にはDelmonico’sの日替わりメニューとして頻繁に登場。そして2020年に新型コロナウイルスのパンデミックによりレストランが閉店するまで、メニューに載ったり消えたりしていた。

2023年9月、Delmonico’sはデルモニコスレストラングループのオーナー兼マネージング パートナーであるDennis Turcinovic氏の指揮下で、正式に再オープンを果たす。この時、20年以上レストランで働いてきたDennis氏は、チキン ア ラ キーンを含めたDelmonico’sの名物料理の数々をメニューに復活させたのだ。

クラシックな料理を現代風にアレンジしたメニューと、世界の味を強調した新しいメニューを組み合わせて再始動したDelmonico’s。

伝統的なチキン ア ラ キーンは、クリーミーなシェリーソースとインゲン豆、チェリートマト、アスパラガスで作られる。一方で、新しい植物由来の“チキン” ア ラ キーンは「lion’s mane mushroom(ライオンズマンマッシュルーム)」というキノコを使い、料理の味と食感を忠実に再現した。

山伏茸

ライオンズマンマッシュルームは日本ではヤマブシタケ(山伏茸)と呼ばれ、ほんのり甘いナッツのような味わいが特徴。また、免疫システムのサポートや抗炎症作用など、健康への効能も期待されているという。しっかりとした歯ごたえとうま味があることで知られ、ローストしたりグリルしたりすれば豊かな風味が引き出されるとともに、カリッとした食感も加わる。海外ではタコスやハンバーガー、炒め物などの料理で肉の代わりに使われており、ネット上ではさまざまなレシピが紹介されている。

新しいプラントベースのチキン ア ラ キーンにおいても、料理の主役はライオンズマンマッシュルームだ。また、味噌ブールブランソースをかけたレンズ豆のパスタに盛り付け、カリカリに焼いたレンズ豆をトッピングすることで、食べ応えのあるひと品に仕上げている。

今回のように、古くから愛されてきたメニューをプラントベース(植物由来)にアップデートする取り組みは、幅広いジャンルの飲食店で応用できるのではないだろうか。

【関連記事】

飲食店が知っておきたいヴィーガンメニューを作る5つのポイント

【参照サイト】 Delmonico’s in New York, NY
【参照サイト】 The Guy Corner NYC|Delmonico’s Innovates Again With New Plant-Based “Chicken” a la Keene
【参照サイト】 【23年1月】日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査 by Vegewel
【参照サイト】 Foraged|What Do Lion’s Mane Mushrooms Taste Like? A Complete Flavor Profile

table source 編集部
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table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
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