出産を経験した「経産牛」を活用し、畜産業を支援。1枚肉のハンバーガーを発売

日本の畜産業では、後継者不在による人手不足が深刻化している。また、肉のランク付けを重視するあまり、ランク外として廃棄されてしまう食用肉も多い。その結果、畜産農家の経営が圧迫され、廃業に至るケースもある。このまま畜産農家の戸数が減少し続ければ、日本国内の食料生産に影響を及ぼすだろう。

和牛肉において良質であるとされているのは、去勢した雄牛や未出産の雌牛だ。一方で、出産を経験した雌牛は「経産牛」と呼ばれ、「肉が硬くなる」と敬遠されやすい。そのため、経産牛のほとんどは加工して販売されるか、流通せずに廃棄されている。しかし、実際は出産を経て成長した雌牛の肉には、旨味が濃縮されているという。この経産牛を有効に活用できれば、畜産農家の支援だけでなく、消費者への安定した食料供給にも繋がる。

そうしたなか、地域振興プロジェクトに取り組む「合同会社パラード」は、経産牛を活用した「NIPPON和牛プロジェクト」のオリジナル商品「パイナップルパンバーガー」を2023年2月13日より販売開始した。東京都の中目黒にある「肉工房 志方」の店頭にて、1日限定40個、テイクアウトのみで提供される。

パイナップルパンバーガーは、これまで廃棄されていた経産牛の肉を独自の手法でやわらかく調理した1枚肉を使用することで、経産牛の濃縮された旨みをじっくり味わえるよう仕上げたという。バンズには、パンの上にクッキー生地を乗せて焼いた香港のソウルフード「パイナップルパン」を使用。手作りのパイナップルパンは不揃いの形でも使用することで、食品ロスの発生を防いでいる。

NIPPON和牛プロジェクトでは、本来食べられるにもかかわらず食品ロスとなっている牛肉に着目し、素材の良さを活かした製品開発に取り組んでいる。食品ロスの削減によってサステナブルな生産体制を構築すれば、食産業が一丸となってSDGsの目標達成に貢献できるだろう。飲食店として、食材への知識を深め、こうしたプロジェクトに参加することで、サステナブルな活動の幅を広げることができるのではないだろうか。

【参照サイト】株式会社熟豊ファーム:濃厚な旨味と芳醇な香り
【参照サイト】合同会社パラード
【参照サイト】廃棄されやすい食材を再資源化し、美味しく食べられる商品へ!NIPPON和牛プロジェクト発 新商品『パイナップルパンバーガー』店頭販売開始
【参照サイト】お口の恋人 LOTTE 香港のパイナップルパン

table source 編集部
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