牛乳や乳製品を生産するには、牛はもちろん酪農家の存在が欠かせない。しかし現在、酪農業界は温室効果ガスの排出に伴う地球温暖化への影響、飼料の高騰、深刻な人手不足などさまざまな課題に直面している。
食料安全保障と環境保全の観点からも、酪農を持続可能なものにする取り組みは急務だ。そのためには酪農家の自助努力のみならず、企業や団体による手厚いサポートも不可欠となるだろう。
そうしたなか、乳製品を含む3つの分野で事業を展開する食品飲料企業の「Danone(ダノン)」は2025年10月、世界の酪農家を対象に持続可能で回復力のある経営実現に向けて知識・技術・ツールを提供する多角的なプログラム「Danone Milk Academy(ダノンミルクアカデミー)」を立ち上げた。
複数年にわたるプログラムでは、ダノンの酪農家パートナーと農場経営チームの双方がよりサステナブルな酪農慣行を導入し、次世代に備えて技術を活用できるように支援する。

Danone Milk Academyはそれぞれ異なる農業モデルと規模に合わせて設計された3つの国際的なセンター・オブ・エクセレンスを基盤とし、各国で開催される現地研修の触媒として機能する。
まず、2025年11月にアメリカのオハイオ州にて世界初のセンター・オブ・エクセレンスが発足。ここには9カ国60名の酪農家パートナーに加え、学術パートナーとしてCornell大学、そして技術パートナーとしてLely、MSD Animal Health、Worldwide Sires、Zoetisといった動物のヘルスケアや農業を専門とする企業が参画している。
続いて、2025年後半にベルギーに設置された2つ目のセンターではWageningen大学と提携し、中規模農家に焦点を当てる。
最後となる3つ目のセンターは2026年にモロッコに開設される予定で、小規模農家が対象だ。
今回のプログラムにはデジタル学習プラットフォームも導入され、主要な酪農地域における対面式の学習セッションと組み合わせて世界中の酪農家のスキルアップを図ろうとしている。とりわけデジタル要素の強化により、ダノンの酪農コミュニティ全体で学術的・技術的専門知識へのアクセスを拡大するのはもちろん、最適解の共有を促進する効果が見込まれる。
そのうえ、物理的に現地研修に参加できない可能性のある酪農家も学習機会を得やすくなるだろう。

また、参加者はWageningen大学・研究校とCornell大学から認定された研修を受け、プログラムが科学的および専門的基準を満たしていることを保証する。
カリキュラムでは、酪農経営と持続可能性のあらゆる側面を網羅しているのも特徴。例えば、家畜の生産性と寿命、堆肥の効率的な処理、健全な土壌と飼料および作物のための再生農業、メタン排出の削減方法などが挙げられる。さらに後継者の育成計画や資源配分、リスク管理といった中核的なビジネスの能力も盛り込まれている。
ダノンは2022年3月に持続的に収益性の高い成長モデルを目指す戦略計画「Renew Danone」を策定し、2023年2月からは「健康」「自然」「人々とコミュニティ」の3つを軸としたサステナビリティロードマップ「Danone Impact Journey」を掲げている。
Danone Milk Academyの運用は、こうした方針の中核をなすものだ。同社は学術機関や技術パートナーと連携して乳製品サプライチェーンに変革を起こすことで、持続可能な酪農の実現に貢献しているといえるだろう。

持続可能な食を実現するべく、近年では日本でも生産現場のサポートに乗り出す企業が増えつつある。
今回紹介したダノンのサポートには相応のリソースが必要だが、持続可能な生産を応援するといった意味では、余剰時期に合わせたメニューの開発や応援フェアの開催、経産牛の活用など、ホテルや飲食店だからこそ果たせる役割が必ずある。まずは手の届く一歩から。その積み重ねこそが、大きな変化をもたらすための最短距離ではないだろうか。
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【参照サイト】Danone Launches Industry-first Academy for Farmers to Build Resilience in Global Dairy Supply Chain
【参照サイト】Danone Impact Journey | Danone Group




















































