
近年、文化や宗教のみならず、健康上の理由や思考に基づいて「フードダイバーシティ(食の多様性)」を尊重する動きが進んでいる。こうした傾向から注目されているのが、代替肉をはじめとしたプラントベース(植物性)フードだ。
市場規模も右肩上がりに拡大しており、世界的の食肉市場の年平均成長率が1%なのに対し、植物由来肉市場は30%成長すると予測している。日本でも代替肉への関心が高まっており、2021年5月の代替肉・代替たんぱく質に関する調査では、約半数が代替肉・代替たんぱく質を「食べてみたい」と回答した。
今後、さらなる代替肉の需要拡大を見据えて、日本国内における安定した生産・供給サイクルの確立が求められるだろう。
そうしたなか、次世代植物肉原料「ミラクルミート」を開発・製造する熊本発のフードテック企業「DAIZ株式会社」は、植物肉工場の新設に向けて、2023年10月12日に熊本県益城町と立地協定を締結した。
同社は、ミラクルミートの国内供給ならびに欧州・北米・アジアを中心とした海外展開を加速させていく成長戦略のもと、熊本県益城町にある新工業団地「くまもと臨空テクノパーク」内に大規模な量産工場を建設予定。投資総額は42億円で、2025年2月の操業開始を目指す。

新工場外観 鳥瞰図/敷地面積:40,000㎡、生産計画:ミラクルミート(乾燥タイプ)8,000トン/年(第1期計画)※順次拡大予定、着工時期:2024年1月
DAIZ株式会社の植物肉新工場は、「安心・安全」「挑戦と進化」「働きやすさ」「地球と環境に配慮」「DAIZの原点」「植物肉で世界へ」という6つのコンセプトを掲げている。なかでも注力しているのが、SDGsの観点だ。
ミラクルミートを生産するには、原料となる大豆の調達から生産・流通、廃棄物の処理に至るまでが一連のライフサイクルとなる。DAIZ株式会社では、早稲田大学創造理工学部 環境資源工学科の伊坪徳宏教授による監修のもと、ライフサイクルにおける環境負荷を定量的に算定する「ライフサイクルアセスメント(LCA)分析」を実施してきた。
このLCA分析を基に生産工程をブラッシュアップし、新工場の設計に反映させることで、エネルギー消費量や廃棄物温室効果ガスの低減を図る。
また、新工場では、AIの活用による自動運転化の実現や新規技術・事業展開も視野に入れているという。生産プロセスが最適化され、生産性の向上につながれば、商品の安定生産や供給拡大にとどまらず、持続可能な次世代型の生産体制も確立可能だ。

DAIZの開発した植物肉メニュー
DAIZ株式会社は、これまで環境負荷の少ないミラクルミートの普及を通じて、豊かな食生活の選択肢を提供してきた。
今後、環境負荷の低減と生産効率の向上を両立する量産工場が新設されることで、より一層持続可能な社会の実現に近づけるだろう。さらに、創業の地である熊本県の経済活性化や、新たな雇用機会創出による地域社会の発展にも貢献したいと意欲を示している。
量産により広く流通することで、多くの人にとってプラントベースフードがより身近な存在になるかもしれない。
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