2015年9月に採択された、持続可能な開発目標・SDGsの13番目の目標「気候変動に具体的な対策を」では、気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じることを目指している。気候変動により、世界各地で集中豪雨や土砂災害、干ばつ、洪水、強い台風やハリケーンなどの異常気象が深刻化している。
内閣府の調査によると1970年から2008年の間、自然災害の発生により全世界で毎年平均1億6000万人が被災、約10万人が死亡し、400億ドル以上の被害額が出ているという。
こうした気候変動による農作物への悪影響が問題になるなか、クラフト苺を生産する「BERRY」と膜式栽培農法など先端農業に取り組む「CULTIVERA」が、環境負荷を抑えながら美味しい苺を生産する「The Good Green Farms」を共同創業。2022年5月16日に、シェフやパティシエをはじめとするプロフェッショナル向けの限定販売を開始した。
この農場では、伝統的な農法の約1/10の水しか使わない節水かつ農業排水ゼロの省資源栽培を用いて、苺の通年生産と販売を行う。
CULTIVERAの開発したこの特許栽培技術「Moisculture(モイスカルチャー)」は、植物が生きるために張り巡らせる毛細根の可能性に着目し、水や土の資源消費を抑えながらも、栄養価が高く食味の良い作物を様々な環境下で育てることを可能にする技術だ。特殊なファイバー積層で形成した空間を気化水分で満たし、元来植物が持っている微細な「毛細根」を発生・活性させることで、効率よく水分や栄養を吸収することができる。気化水分で育てるため水の消費量が従来の栽培法の約1/10にもなるという仕組みだ。また、土壌の代わりに空間で育てるため、土をほとんど使用しない省土壌栽培を実現している。
世界の淡水の69%を農業で利用していると言われているなかで、高品質な苺を節水・農業排水ゼロ・省土壌で栽培し、安定供給できる画期的な技術。さらに、高価な設備を必要としないため世界中のさまざまな国・地域で普及可能だという。これらの技術をベースに気候変動から「美味しさ」を守る取り組みに、今後も注目したい。
【参照サイト】 クラフト苺生産のBERRYと膜式栽培農法のCULTIVERAが、気候変動時代に環境負荷を抑えながら美味しい苺を生産する「The Good Green Farms」を共同創業
【参照サイト】 内閣府:世界の自然災害の状況