60カ国以上に約2,000万人いるコーヒー生産者のうち7割超が小規模生産者とされ、このうち半数近くが貧困状態にあると言われている。その原因として、小規模生産者の立場の弱さが挙げられる。彼らは作物の市場価格の情報を持っていない状態で中間売買人と取引をしなければいけないため、安く買いたたかれてしまうことが多いという。フェアトレードコーヒーの販売を行う一般社団法人トランシード・グループのレポートによると、世界第5位のコーヒー生産国であるエチオピアのコーヒー農家は、ニューヨークのコーヒーの市場価格の約22分の1の報酬しか受け取っていない。

※一般的なコーヒーのサプライチェーンには多くの中間業者が存在するためトレーサビリティの担保が困難

そうしたコーヒー生産者の現状が問題視されるなか、サステナブルコーヒーを生産するGOOD COFFEE FARMS株式会社は、生産者・コーヒーショップ・消費者の三者にとってメリットのある仕組みとして「MyFarm契約」サービスを開始した。

「MyFarm契約」とは、コーヒーショップとGOOD COFFEE FARMSとの間で複数年にわたるコーヒー豆の売買契約を締結し、コーヒーショップはその購入規模に応じて、同社に所属する農園(エステート農園)の一区画を「MyFarm」として利用することができる制度である。これにより生産者は長期契約で資金繰りを改善することができ、コーヒーショップは自分たちで原料からカスタマイズしたコーヒーをつくることができる。結果として、消費者はトレーサビリティが担保された希少性の高いスペシャルティコーヒーを楽しむことができる、「三方良しの循環」が生まれることを目指している。

※GOOD COFFEE FARMSが開発した、水・電気・燃料を使用しない自転車脱穀機「ドライ・バイシクル・パルピング」

コーヒーショップのメリット

  • 原料からカスタマイズし、世界で自社だけのスペシャルティコーヒーをつくることができる
  • 発酵方法や乾燥時間まで、自分の思い通りの精製方法に挑戦できる
  • これまでアクセスできなかった生産側の情報を小規模生産者から直接入手できる
  • 自社農園としてPRやマーケティングに活用することができる(オリジナル麻袋も別注可能)

 
生産者のメリット

  • 生産者のメリット
  • 安定した収入を長期で確保できる
  • コーヒー生産に必要な運転資金を長期で確保できる
  • 消費側のニーズを直接知り、生産/精製方法の改善に活かすことができる
  • 消費側の顔が見えることで、モチベーションの向上に繋がる

消費側でも、新たな付加価値としてトレーサビリティやサステナビリティの担保されたコーヒーに注目が集まっている。GOOD COFFEE FARMSによると、高品質なスペシャルティコーヒーの市場は国内シェアの11%にまで拡大しているという。

同社は今回の契約サービスのトライアルとして、単年で利用可能なカスタム精製のサービス提供も開始している。精製開始時点で費用の一部を前金として支払うことで、発酵や乾燥を行う環境・時間等の条件、酵母の使用など、多様にカスタマイズした精製の研究を90kgから行うことができるという。持続可能な調達について興味のある方は、まずはトライアルから検討してみてはいかがだろうか。

【参照サイト】 トランシード・グループ:コーヒー産業/ビジネスと人権問題
【参照サイト】 世界で一つの自分でつくるサステナブルコーヒー「MyFarm契約」のサービスを開始

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