個人はもちろん、カフェやレストランなどの飲食店にとっても欠かせない飲み物のひとつであるコーヒー。全日本コーヒー協会によると、2024年の日本のコーヒー消費量は40万218トンに達し、世界第4位の規模だという。また、2024年度のコーヒー需要動向調査でコーヒーを習慣的に飲んでいると答えた人は74.3%だった。
一方で、コーヒーは「コーヒー2050年問題」と呼ばれる危機的な状況に直面している。これは地球温暖化に伴う気候変動の影響によってコーヒーの栽培に適した土地が半減し、2050年までにこれまでの生産活動が存続できなくなる可能性を指すものだ。生産量が減少すれば、中南米やアフリカなど発展途上国で小規模農家の貧困が加速する要因ともなりかねない。
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私たちが日常的に楽しんでいるコーヒーは、決して当たり前に存在し続けるものではなくなりつつある。

こうしたコーヒーを取り巻く課題に向き合う取り組みとして、シンガポールを拠点に世界40ヵ国・230都市以上で宿泊施設を展開するホスピタリティグループ「The Ascott Limited」による新たな試みがスタートした。
同社は、ホテル&サービスレジデンスブランド「Citadines(シタディーン)」において、ネパールの山間部でコーヒー栽培と植樹活動を行う「BIKAS COFFEE(ビカスコーヒー)」と協業。コーヒーの植樹を通じて未来の一杯を育てる宿泊プラン「Coffee for the Future Stay」を、2025年11月27日より販売している。

シタディーンは、レジャーとビジネス双方の利用者をターゲットに世界で190以上の施設を展開し、「心に触れる体験で、暮らすように滞在するホスピタリティ」を追求するブランド。“For the Love of Coffee”をブランドシグネチャーに掲げ、コーヒーを通じて街と人をつなぐ体験価値を提供してきた。
一方、BIKAS COFFEEは「新しいGLOBALACTIONを開発し、すべてのヒトが社会に貢献できる経済社会をつくってゆく」ことを目指して創業。ネパールの山岳地域で、アグロフォレストリーの手法によりフルーツや野菜などと一緒に栽培されるコーヒーの流通網を拡げ、地域発展に還元しようとしている。
今回、両社に共通する“旅をしながら未来に貢献する”という価値観が協業を後押し、SDGsの視点からコーヒーの未来を支えるアクションとして「Coffee for the Future Stay」の企画が実現した。このプランは、シタディーンを運営するThe Ascott LimitedのグローバルCSRプログラム「Ascott Cares」の柱である3つの理念、すなわち「Community(地域社会)」「Environment(環境)」「Alliance(パートナー連携)」とも共鳴している。

「Coffee for the Future Stay」は、ゲストの宿泊体験が社会貢献に結び付く新しいサステナブルステイの形だ。実施対象はシタディーン新宿東京、シタディーンセントラル新宿東京、シタディーンハーバーフロント横浜、シタディーンなんば大阪の国内4施設。
いずれも予約期間が2025年11月27日から2026年12月30日まで、宿泊期間は2025年11月28日から2026年12月31日まで。
本プランでは、宿泊1泊につき税別1,000円が植樹プロジェクト「BIKAS COFFEE VILLAGE」に寄付されることになっている。

「BIKAS COFFEE VILLAGE」とは、支援者がネパールで育てられたコーヒーの苗を購入し、名前を付けて現地の村に植樹する活動。これにより雇用を創出し、結果として小規模農家が安定して収入を得られる仕組みを構築できる。同時に生産者の顔と消費者の名前が双方に伝わるため、持続可能なコーヒーの生産をベースにしたフェアな取引のモデルケースとなり得るだろう。
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また、森を育む農法のもとでコーヒーを栽培することには、森林の再生と環境保全を促す意図もある。同プロジェクトでは5年間で累計3,000本の植樹を行っており、年間最大約30トンの二酸化炭素(CO₂)を吸収する効果が見込まれているという。

そして、約3年後に収穫されたコーヒー豆は再びシタディーンに届けられ、ホテル内でゲストに提供される一杯のコーヒーとなる。ゲストは旅を楽しみながら、自らの滞在をエシカルな消費行動へと変換し、その価値が未来へ循環していく仕組みだ。
さらに、宿泊者にはBIKAS COFFEEの厳選豆を使用したダンク式コーヒーがプレゼントされ、宿泊プランが持つ意義をより身近に感じられる工夫も施されている。
コーヒーをはじめ、私たちが日常的に楽しんでいる食べ物や飲み物の背景には、生産の継続が危ぶまれるさまざまな課題が存在する。しかし、そうした問題を自分ごととして実感することは、決して簡単ではない。
今回紹介したシタディーンの取り組みのように、ホテルでの滞在がコーヒーの課題解決に直接つながり、さらに数年後に「循環」として体感できる仕組みは、消費と社会課題を結びつける有意義な機会になるのではないだろうか。
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【参照サイト】需要動向調査 | 統計資料 | 全日本コーヒー協会
【参照サイト】Coffee for the Future Stay|日本のシタディーンのサステナブルステイ
【参照サイト】私たちについて | BIKAS COFFEE




















































