中国 食品ロス

※2023年1月6日更新

いま、世界で生産される食料のうち3分の1が食べられることなく破棄されている。中国社会科学院の研究によると、中国の主要都市の飲食店では、年間1,800万トンの食品が廃棄されており、これは年間で3,000万人〜5,000万人を養うことができる量に相当すると推定されている。

そんな中国で2021年4月29日、食べ残しを禁止する法律「反食品浪費法」が可決された。過剰な量の食べ残しをした客に対して、飲食店側は食べ残した分の処分費用を請求できる。飲食店に対しても、店員は客が適量を注文するよう促す必要があり、大量に注文させた場合は最大で1万元(約16万円)の罰金となる。その他にも、中国の動画共有サイトで人気の「大食い映像」の配信を禁止し、大食い番組に関わったテレビ局や動画配信業者に対しても最大10万元(約160万円)の罰金を科す。また、食堂を持つ政府機関や学校、出前アプリを運営するネット企業にも食品の無駄が生じないような施作を求めている。

中国ではもともと、客に対して食べきれない量の料理を並べてもてなす文化があり、そうして生まれた食べ残しが「食品ロス」として問題となっていた。今回の法律の可決は2020年8月に、習近平国家主席が食べ物を浪費しないよう指示を出したことがきっかけだった。地球資源が限界を迎えるいま、まさに中国は文化を変えようと大きく動き出しているのだ。

さらに、今このタイミングで食品の浪費が見直されている理由には、食糧安全保障への危機意識が高まっていることが挙げられる。中国は、主食であるコメ、小麦、とうもろこしの自給率は98%と、穀物については自給している一方で、大豆のような農作物はアメリカからの輸入に頼っている。新型コロナウイルスの感染拡大により、一部の農業大国で自国からの農産物輸出が制限されたように、世界的に食料供給が予測不能になっているのだ。

また、近年では中国の消費者の意識にも変化が現れはじめており、アジアの持続可能性に関する調査・研究を行う「Good Growth」社による2022年の最新の調査によると、中国の消費者の40%近くが肉の消費量を積極的に減らしていることがわかっている。

【関連記事】中国の消費者の40%近くが肉の消費量を減らしている。2022年最新の調査で判明

日本でも今、身近なファミリーマートで家庭の余った食品を店舗で回収し、寄付ができる取り組みが始まったり、廃棄食材を洋服の染料にするプロジェクトが広まっていたりと、「食品ロス」のトピックを目にすることも増えた。世界的に食料廃棄を減らす取り組みが進む中でも、今回の中国の「法律」は大きな動きである。今後どのような効果が見られるのか、注目が集まる。

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【参照サイト】China adds teeth to crusade against food waste with new law
【参照サイト】 なぜ?中国で「食べ残し」禁止令
【参照サイト】 新型コロナ 世界で感染拡大、食料供給は大丈夫?

本記事はIDEAS FOR GOODからの転載記事です。

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