近年、世界中で関心が高まる「培養肉」。培養肉とは、鶏や牛などの家畜の細胞を体外で組織培養することによって作られる肉のことだ。2020年には、アメリカのフードテック企業「Eat Just」がシンガポール政府から世界で初めて培養肉の販売承認を取得し、同年12月に販売を開始したことが話題となった。
培養肉は飲食業界でも注目されており、2022年9月にイギリスに本社を置く市場調査コンサルティング会社「Censuswide」がアメリカのシェフを対象に実施した調査では、86%が培養肉の提供に前向きであると回答した。また、多くのシェフが通常メニューに培養肉を加えることを検討しており、飲食業界でも培養肉の市場参入が待ち望まれている。
培養肉は従来の食肉と違い、家畜の成長過程で使用する広い土地や水が不要で、家畜を殺す必要もなく、地球環境に与える負荷が低い。他にも、食中毒のリスクが低く保存可能期間も長いなど多くの利点がある。より環境負荷の低い健康的な食肉の選択肢として、2040年までに世界の食肉消費量の30%が培養肉になると推計されている。
すでに世界では培養肉の実用化も進んでおり、従来の鶏肉に匹敵する栄養価を持つ培養鶏肉の生産で注目を集めるイスラエルのフードテック企業「SuperMeat」は、ガラス越しに培養肉が製造される様子を眺めながら調理された培養肉を味わえるレストランをオープンした。同施設では世界初の培養肉ブラインドテイスティングも行っており、同社の培養鶏肉が従来の鶏肉とほとんど区別がつかないという感想も多く寄せられているという。
現在、世界23か国で100以上の企業が培養肉開発に取り組むなかで、2022年3月に「日清食品ホールディングス株式会社」が日本で初めて「食べられる培養肉」の作製に成功したことを発表するなど、培養肉の技術開発は国内においても急速に進んでいる。日本ではまだ馴染みのない培養肉だが、市場に流通するのもそう遠くはないかもしれない。
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