持続可能な社会に向けてエシカル消費を促進するためには、消費者を「グリーンウォッシュ(グリーンウォッシング)」から守る仕組みが必要だ。
グリーンウォッシュとは、「実態とは伴わない取り組みにもかかわらず、環境に配慮していると見せかける」マーケティング手法のこと。たとえ意図的ではなくても、企業が商品・サービスについて事実とは異なる情報を広めれば、消費者を大いに混乱させてしまう。結果的に企業やブランドのイメージを損なうばかりか、サステナブルな企業活動そのものが消費者に敬遠されかねない。
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そうしたなか、カナダで企業のグリーンウォッシングに対処することを目的とした新しい法律が2024年6月に成立した。新法は、2023年11月に政府の秋季経済声明で提案された改正案に基づき、カナダにおける競争法の改正の一環として可決されたもの。カナダ政府は、この変更によって「誤解を招く『グリーンウォッシング』の主張を禁止するなど、消費者、労働者、環境の保護を強化する」と述べている。
新しく改正された法律の「欺瞞的なマーケティング行為」の条項では、「国際的に認められた方法論に従った十分かつ適切な実証に基づかない、環境の保護や回復、あるいは気候変動の環境的・社会的・生態学的な原因や影響の緩和に関する事業または事業活動の利点」に加えて、「十分かつ適切なテストに基づかない、環境の保護や回復、あるいは気候変動の環境的・生態学的な原因や影響の緩和に関する製品の利点」について、一般市民に表示することを禁止している。
特筆すべきは、製品や事業、事業活動に関する企業の主張について、その証明は「表示を行った者にある」と規定されている点だ。法律では、主張が誤解を招く内容だと証明するためにCompetition Bureau(競争局)などの法執行機関に頼るのではなく、当該企業にその正当性を証明する責任があることを示している。
また、この法律には欺瞞的なマーケティング規定に違反した企業に対し、厳しい罰則が含まれる。罰金として1,000万ドル、またはその後の命令で1,500万ドル、または欺瞞行為から得た利益の3倍、または企業における年間収益の3%のうち、いずれか高い金額が科されるという。
消費者がサステナブルな商品・サービスを選ぶにあたって、企業の正確な情報開示が重要だ。例えばカナダのように、政府主導でグリーンウォッシュを規制するのもひとつの手段だろう。
一方でこの規制の可決を受けて、法律専門家からは「改正法は誤解を招くような主張から消費者を保護することを目的とする一方で、企業に重大なリスクをもたらし、環境保護活動の進展を遅らせる可能性がある」との指摘もある。法律違反を恐れてサステナブルな取り組みに及び腰になってしまう企業も出てくるかもしれない。
グリーンウォッシュやSDGsウォッシュだと誤解されないために、どのようなポイントを押さえておくべきか、今一度見直す必要がありそうだ。
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【参照サイト】Guide to the June 2024 amendments to the Competition Act