ビジネスネームで、接客現場の多様性とウェルビーイングを後押し。カスハラ対策にも

近年、プライバシー保護やカスタマーハラスメント対策の観点から、接客業を中心に「ビジネスネーム」を導入する動きが広がっている。ビジネスネームとは、本名とは異なる仕事用の名前のこと。芸能人の芸名や作家のペンネームもその一種といえる。
とりわけネット社会では、従業員の顔と名札をもとに第三者が個人情報を特定することは十分可能だ。

こうした接客の現場においてビジネスネームを上手く活用することで、性別、国籍、ライフスタイルを問わず、柔軟に対応できるケースも考えられる。LGBTQをはじめとする多様な個人の事情に配慮し、ビジネスネームの導入を進めることは、職場のウェルビーイングの向上や、多様性を尊重し合う組織風土の醸成にもつながる可能性がある。

ビジネスネーム

実際に、地方自治体やさまざまな企業において、顧客が目にする名前にビジネスネームを使用するケースが増えてきている。

例えば「京王電鉄バスグループ」では、2024年4月よりバス車内での乗務員の氏名掲示にビジネスネームを導入した。乗務員は本名とビジネスネームのどちらを掲示するか、自身で選択できる。2023年に道路運送法施行規則が改正され、車内で乗務員の氏名を掲示する義務が廃止されたことを受けての措置だという。

ビジネスネームであれば、乗務員が不用意にプライバシーを侵害されたり、カスハラで精神的苦痛を感じたりするリスクを抑えやすい。同時に、氏名掲示を続けることにより、利用者からの感謝の言葉が乗務員の励みになるという従来の相乗効果も失われずに済むだろう。

一方で、ビジネスネームの活用シーンは顧客への対応業務に限らない。建機のレンタルを行う「レンタルのニッケン」では「公私の区別を明確にする」ため、全社員がビジネスネームを使って就業しているという。名前に責任を持つことで、日常からスイッチを切り替え、プロ意識を持って働くという考え方を定着させたいとしている。

ビジネスネーム

企業側としては、ビジネスネームの利用を認めることで、多様性を尊重する方針を対外的に示せるところがメリットだ。従業員も、本名で働くことによって生じる不都合を解消し、個性や能力を発揮しやすくなる。

ただし、ビジネスネームには問題点もある。企業のイメージや雰囲気にそぐわない名前を使えば、取引先との信頼関係が崩れかねない。あまりに特徴的な名前はSNS上で批判される可能性も考えられる。また、ビジネスネームと戸籍上の名前が異なることで、給与明細、社会保険、雇用契約書などの事務処理が煩雑になる可能性もあるだろう。
そのため、企業がビジネスネームを導入する際には明確な基準と運用ルールを設定したうえで、取引先や顧客など社外とも共有することが重要といえる。

今後、ホテルや飲食店でビジネスネームの活用が広まり、社会的な理解が進むことで、個人の意志や多様性が尊重され、誰もが自分らしく働ける環境づくりが一層進んでいくのではないだろうか。

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【参照サイト】「ビジネスネーム』の導入について
【参照サイト】企業情報 ビジネスネームについて|建機レンタル
【参照サイト】カスハラ対策に「ビジネスネーム」導入の動き ネット社会で情報漏れる実名勤務はリスクに
【参照サイト】本名と異なる「ビジネスネーム」好評、ストーカーやカスハラ防止…「安心して働ける」「私生活と区別」 : 読売新聞

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