コロナ禍を経て観光を取り巻く状況が大きく変化し、新たな旅のトレンドとして「エコツーリズム」や「サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)」を推進する動きが世界各地で活発になっている。国内でも、日本政府観光局(JNTO)が、2021年6月に「SDGsへの貢献と持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)の推進に係る取組方針」を策定し、「責任ある観光(レスポンシブル・トラベル)」を奨励している。
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観光業界全体で、サステナブルな取り組みが重要視されつつあるなか、世界最大級の宿泊予約サイト「Booking.com」は、世界34の国と地域にわたる31,000名以上の旅行者を対象に実施した2024年版の「サステナブル・トラベル」に関する調査の結果を発表した。
今回で9年目となるこの調査では、世界の多くの旅行者が「サステナブルな旅行が重要である」と感じていることが明らかになった。
世界の旅行者の75%(日本の旅行者:53%)は、「今後12ヶ月間に、よりサステナブルな旅行をしたい」と回答した。その理由は、「そうすることが正しいことだと思うから」(世界の旅行者:32%、日本の旅行者:21%)、「サステナブルでない旅行を選択することに罪悪感を感じる」(世界の旅行者:43%、日本の旅行者:21%)などさまざま。
また、世界の旅行者の71%(日本の旅行者:56%)が「訪れた場所について、到着したときよりも良い状態で旅行先を後にしたい」と回答している。
さらには、世界の旅行者の62%(日本の旅行者:34%)が「よりサステナブルな旅行をすることで最高の自分になれる」と感じ、結果として、帰宅後もその前向きな気持ちが持続すると回答した。環境に配慮した選択をしている旅行者は、サステナブルな旅行体験によって、旅行の価値がさらに高められていることを実感しているようだ。
同時に、ホテルなどの宿泊業でも、こうした旅行者の意志を実現できるようなさまざまな取り組みが求められている。
「よりサステナブルな宿泊施設に魅力を感じる」世界の旅行者は、ほぼ半数(45%、日本の旅行者:36%)に上る。より多くの宿泊者に選ばれるためには、一貫した認証基準を定めることが重要であると考えられる。実際に、67%(日本の旅行者:44%)が「すべての旅行予約サイトが共通のサステナブル認証やラベルを使用すること」に賛成している。
一方で、今年初めて実施された新しい分野の調査では、「環境への影響に配慮することの重要性を認識していない」旅行者の存在も明らかになった。
回答者の3人に1人が(33%、日本の旅行者:29%)で、自分たちが環境に与える影響について「すでに生じたダメージは回復不可能で、旅行者の選択によって状況が変化することはない」と感じ、4人に1人(25%、日本の旅行者:21%)の旅行者は、「世間で言われているほど、気候変動は深刻ではない」と考えているという。
こうした問題に対する関心の低さが、旅行の計画に影響している可能性がある。サステナブルな取り組みを発信する際には、どのような課題があるか、解決することでどのような効果が得られるか、といった取り組みに至る背景も伝える必要がありそうだ。
旅行業界がよりサステナブルな方向へ前進するには、業界が一丸となって取り組み、旅行者に対しサステナブルな選択をする機会を提供することが、これまで以上に重要といえるだろう。
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