コロナ禍を経て、サステナビリティに対する人々の意識が急速に高まるなか、「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」という概念が注目を集めている。サーキュラーエコノミーとは、製品などの生産過程から廃棄物や汚染が出ない設計を行い、一度経済のシステムの中に投入した原材料や製品はできる限り長く使い続けることで、自然のシステムを再生していく経済のありかたを指す。
食とサーキュラーエコノミーの分野では、フードロスの削減やコンポスト、容器・包装の削減、食品残渣の再資源化やアップサイクル、地産地消型のサプライチェーンなど幅広いテーマがあり、世界でもゼロウェイストに取り組むレストランや廃棄食材を活用したレストランなどが注目されている。
陶磁器メーカーの「ニッコー株式会社」では、組織横断型の研究開発プロジェクト「NIKKO Circular Lab」をはじめ、サーキュラーエコノミーの原則に沿ったさまざまな取り組みを積極的に進めてきた。そうした取り組みの一つとして、2023年11月9日より、世界初の捨てられる食器から生まれた肥料「BONEARTH(ボナース)」を使って育てたコシヒカリ「ボナース米」の発売を発表した。
1908年創業の老舗の食器メーカーであるニッコーでは、⼯場での⽣産過程で⽣じる規格外品から、リサイクル肥料である「BONEARTH(ボナース)」を開発。2023年9月には、BONEARTHを起点とし、生産者から消費者まですべての人がつながり合い、楽しみながら、持続可能な“食の未来”について考えるためのコミュニティ、「BONEARTH CIRCULAR COMMUNITY(ボナースサーキュラーコミュニティ)」を発足した。
その活動の一環として、石川県白山市でお米や野菜の栽培を行う「株式会社グリーンサポート出村」の協力のもと、BONEARTHを使いさまざまな農作物を育てている。今回はBONEARTHを使い、日本人の主食であるお米を栽培した。
BONEARTHには肥沃な土壌を形成する効果があるリン酸が含まれている。さらに水に溶けないため、河川流出しづらく、用水が近くて水に恵まれた農園でも安心して使用できる肥料だ。
ボナース米はニッコーの本社がある白山市に位置する、鳥越地域で育てられている。鳥越地域は、山間部で寒暖差が大きいことや、白山おろしと呼ばれる山風、朝日が早くのぼり夕日が落ちるのが早いなど、昔からおいしいお米ができると言われている。そこで育つお米は、中山間地のため稲の成長が遅く、穂の数が少ないことが特徴。穂の数が少なく育ったことで、旨味が詰まっており、炊き上げた時に光沢のあるお米に仕上がる。
今回、「ボナース米」の栽培に協力している農家・株式会社グリーンサポート出村の出村氏は、安全で美味しいお米を育てたいという想いのもと、「今回のお米は、農薬の使用量と肥料を減らす(節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下)という条件でBONEARTHを使用して栽培しました。」と、あえて厳しい基準で栽培したと語る。
また、今年の全国的な猛暑・水不足で一等米に認定されるお米が減少する中で、今回収穫された「ボナース米」は、一等米の評価を受けている。
ボナース米は、東京都渋谷区富ヶ谷にあるニッコーのジェネラルストア「LOST AND FOUND TOKYO STORE」で購入が可能。1kg入り以外にも、お試し用やプチギフトとして最適な300g(2合)も販売中だ。
ニッコーの食器がリサイクルされ肥料となり、その肥料を使って育てられたお米が再びニッコーの食器に盛り付けられ、私たちのもとに戻ってくる。ニッコーではこうした「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」の取り組みを広めるには、自社の取り組みだけでは不十分だとして、食に関わる業界全体が結束して食器の循環に取り組むことを呼びかけている。
栽培する作物にユニークでサステナブルな付加価値を付けたいと考える農家や、食器から食材まで一貫したサステナブルなストーリーの実現に興味のある飲食店は、ぜひ問い合わせてみてはいかがだろうか。
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【関連サイト】 ニッコー株式会社公式サイト