持続可能な社会を実現するために目指すべき、「誰一人取り残さない社会」。SDGsの目標のひとつにも、「2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。」と掲げられている。
このSDGsの目標達成に向けて、日本の自治体や民間企業でも、多様性を受け入れる様々な取り組みが進んでいる。
こうした、多様性について向き合う際の事例のひとつに“障がい”がある。内閣府が公開する「平成30年版 障害者白書」の参考資料「障害者の状況」によると、日本における障がい者の概数は936万人。単純な合計にはならないものの、国民のおよそ7.4%が何らかの障がいを有している、と述べている。
7.4%という数字からは、障がいのある人が誰にとっても身近な存在であることが分かる。障がいのある人とそうでない人との相互理解を深めることができれば、誰にとっても生きやすい社会となるだろう。
そうしたなか、石川県は2023年12月1日より、障がいのある人が手掛けたアート作品を貸し出す事業を始めた。この取り組みを通じて、10月14日から11月26日にかけて開催された「いしかわ百万石文化祭2023」における「第23回全国障害者芸術・文化祭」の機運を継続させたい考えだ。
「特定非営利活動法人 地域支援センターポレポレ」が運営する「Art Rental Ishikawa(アートレンタルいしかわ)」(以下、アートレンタルいしかわ)は、民間企業や公共施設などが障害のある人のアート作品をレンタルできるサービスだ。県内の特別支援学校に通う生徒や障害者支援施設の利用者ら49名が描いた計58点を対象とし、複製画を貸し出す。レンタル期間は1か月からで、利用料金は1点につき月額4,000円。また、作品サイズは、フレーム込みでA2かA3の2種類から選択可能だ。レンタルの申し込みや相談は、アートレンタルいしかわのホームページで受け付けている。
アートレンタルいしかわの作品を展示した空間では、より多くの人が気軽にアートを楽しめる。障がいのある人にとっても、自分の個性や才能をアートで表現できる絶好の機会だ。また、アート作品をレンタルした企業や店舗を介して新たなコミュニケーションが生まれることで、障がいのある人の社会参加を促せるだろう。
さらに、レンタル1点につき、月額料金から諸経費等を除いた1,000円が報酬として作者に支払われる。障害のある人に利益が還元される仕組みによって、経済的自立を支援するとともに、創作意欲を守り育てていけるところが大きなメリットだ。
日本チャリティ協会では、障がいのある人のアートを「パラアート」と呼び、感性豊かな表現力や才能の発掘・育成を目指している。このように障がいを個性として尊重する考え方は、多様性とのサステナブルな共生に欠かせないだろう。
今回紹介した取り組みは、レンタルという特性上、定期的に作品を入れ替えることができるため、その都度お客さまへの発信の機会を作ることができるだろう。飲食店やホテルにとって、独創的なアートを飾ることは他店との差別化にもつながりそうだ。
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【参照サイト】 ARI(アートレンタルいしかわ) – 石川県障がい者アートレンタル事業
【参照サイト】 参考資料 障害者の状況|平成30年版障害者白書(全体版) – 内閣府
【参照サイト】 日本チャリティ協会:「パラアート」を世界へ