⽇本⼈にとってソウルフードともいえる、⽶。しかし、農林水産省の調査によると、国民一人当たりの米の年間消費量は、1962年度の118.3kgから2020年での50.7kgまで減少。日本人の米離れが進む中、国内の米農家が廃業に追い込まれたり、食品ロスが多く発生しているという。

そうした米の食品ロスをはじめとする現在社会が抱えるあらゆる問題に焦点を当てたのが、世界的デザイナーとして知られるジョルジオ・アルマーニ氏が監修を勤める「アルマーニ/リストランテ」だ。ミラノ、ドバイ、ニューヨーク、東京の4都市で4店舗を展開している。東京店のエグゼクティブシェフ・カルミネ・アマランテ氏は、2022年5月13日にフードロスバンクとタッグを組み、新メニュー「サステナビリティ」を発表。「⽇本⽶」「地⽅」「フードロス⾷材」の3つのサポートをテーマに、6皿を完成させた。

第1のサポートは「⽇本⽶」。イタリアンレストランでリゾットを作る際は空輸されたイタリア⽶を使うことが通例とされているが、同メニューでは⽇本⽶を使⽤したリゾットを提供。リゾットの楽しみでもあるアルデンテの⾷感を残すために、フードロスバンク提供の多くの⽇本⽶を試⾷し、さらに⽇本⽶に適した調理⽅法を考案。空輸に頼らないことで、フードマイレージ削減にも貢献している。

そして、第2のサポートは「地方」。地方創生を支援するため、今回のメイン食材は全て北陸産に統一した。1つの地域でこれほどまでに豊かな食材が入ることをお客さまに知っていただくことで、地方の豊かな可能性を表現しているという 。

第3のサポートは「フードロス⾷材」。見た目の問題で通常ルートでの出荷ができない食材を一部の料理に使用。普段は廃棄する野菜の切れ端なども出汁として使用している。

【サステナビリティメニュー】
銀座のアルマーニ/銀座タワー、10階と11階の「アルマーニ/リストランテ」にて12,000円(税込・サービス料金別)で提供される。

(左)高農園のサラダ、(右)スモークハマチ

アミューズは「高農園のサラダ」。伝統野菜を含め多くの野菜を栽培する石川県能登島の「NOTO 高農園」は化学肥料を使用せず、畑に無理のない輪作栽培を採用している 。

前菜の「スモークハマチ」には福井県産のハマチを使用。サイズが小さかったり、食用としての需要が少なかったりして市場に出回らない「未利用魚」を獲らない工夫がされた定置網漁で水揚げされた魚を使用することで、海の生態系の保護と食品ロス削減に貢献している。

スナップえんどうのリゾット

イタリアンレストランでリゾットを作る際は空輸されたイタリア⽶を使うことが通例とされているが、「スナップえんどうのリゾット」には、新潟県産米のロスを防ぐため、リゾットにあう新潟県産米を厳選して配合した「れすきゅう米」を使用。出汁は、本来捨ててしまう野菜の切れ端からとっている。

鰆の炭火焼き クレソンソース

メインの「鰆の炭火焼き クレソンソース」では、前菜と同様に福井県で獲れた鰆を使用。鰆の下にはグリーンアスパラのスライスが敷かれており、ソースはアスパラガスの切れ端部分でとった出汁にエシャロット、ポロネギ、クレソンを合わせて仕上げている。

(左)とみつ金時、(右)いちご 酒粕

福井県の農業生産法人「フィールドワークス」産のとみつ金時を使用したプレドルチ。とみつ金時とは福井県あわら市の富津(とみつ)地区で栽培されたさつまいものこと。同メニューでは、味に問題はないものの形や大きさの理由で通常ルートでは出荷できないとみつ金時をペースト保存していたものを買い取り使用している。フィールドワークスの農園では、土壌環境のために三年に一度休耕地を作り、クロタラリア(豆科)を植えて土壌の活力維持に努めている。

デザートには、石川県のイチゴ・紅ほっぺと福井県産の黒龍の酒粕を使用。フレッシュなイチゴで囲まれた内部には、形を理由に出荷できないイチゴのピューレをシャーベットにしたものと、酒粕を使用したジェラートが。酒粕は、日本酒を製造する際に出来る栄養価の高い副産物だが、常温だと数ヶ月しか保存できないため、「黒龍酒造」では酒粕を蒸留して焼酎を作るなどの有効活用に取り組んでいるという。イチゴはマイクロ水力発電による電力を使用して地域と共生している、石川県白山市の「いちごファームHakusan」のイチゴを使用。

農林水産省のデータによると、2019年の食品ロス量は前年度より30万トン減少し、今後も更なる削減が期待される。今後も季節毎に異なる地域の魅力あふれる食材を発信していく予定だという同レストラン。なかでもフードロス食材の試みは、飲食店でも比較的取り入れやすいのではないだろうか。

【関連記事】

シェフ8名と近隣生産者がコラボ。ルネッサンス リゾート オキナワが特別メニューを提供

【参照サイト】 【アルマーニ/リストランテ】フードロス問題や様々な食の課題と向き合う新メニュー「サステナビリティ」をスタートしました
【参照サイト】 食品ロス量が前年度より30万トン減少しました
【参照サイト】 年間1人当たりの米の消費量をおしえてください
【参照サイト】 フィールドワークス:とみつ金時って?

table source 編集部
table source 編集部
table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
Share
This