sylpro

世界的な人口の増加に伴い、懸念されている食糧の安定供給。増え続ける世界人口を支えるため、食糧生産の大幅な増加が急務となっている。
FAO(国際連合食糧農業機関)は、2050年の農業生産の生産量を2012年の水準より50%以上増加させる必要があると発表している。なかでも肉・豚肉・鶏肉および乳製品などの畜産物の世界食糧需要量は、2050年までに2010年の1.8倍の13.98億トンに達すると予測されている。また、畜産物の需要が増え続けることで、飼料となる穀物や油糧種子の需要量も急増している。そうした課題を解決するため、畜産物に代わり、植物性の原料や食品技術によって新たに作られる「代替タンパク質」に注目が集まっている。

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アメリカとフランスに拠点を置く農業バイオテクノロジー企業のArbiom社は、木材を発酵させ「SylPro」と呼ばれるタンパク質に変換している。現在、食品・飼料業界のパートナーとともに商品化を目指している。
SylProは、魚肉や大豆製品などの他の代替タンパク質に比べて、60%以上の豊富なタンパク質を含み、リジン・メチオニン・スレオニンといった動物性食品に含まれる制限アミノ酸を3つとも含んでいる。また、木材を食料につくりかえるためには、独自のバイオマス処理・発酵技術が必要だが、Arbiom社では発酵に微生物の自然な遺伝子を利用している。遺伝子組み換え作物や化学的抽出、加工添加物は一切使用していない。栄養豊富で、安全性の高い代替タンパク質だ。

また、既存の他の代替タンパク質に比べ、膨大な量のタンパク質を作ることができるということもSylProの大きな特徴だ。2021年3月、Arbiom社が15立方メートルあたり7日間にわたって数回の実証実験を行ったところ、汚染や製品の品質に問題はなく、約2.5トンのタンパク質原料を生産することに成功した。

持続可能で再生可能な資源から作られる食糧の商品化と普及が、食糧問題の解決につながることを期待したい。

【参照サイト】Arbiom
【参照サイト】Arbiom: Novel Protein for Use in Human Food and Animal Feed
【参照サイト】FAO「世界の農林水産」2017年夏号(847号)
【参照サイト】2050年における世界の食料需給見通し

table source 編集部
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