魚介類に寄生する寄生虫、アニサキス。生きたアニサキスが付着したままの魚介類を生食や加熱不十分の状態で食べた場合、食中毒を引き起こす恐れがある。厚生労働省によると、2021年に届出されたアニサキス食中毒事件発生件数は344件だった。
飲食店でアニサキスによる食中毒が発生した場合には、食品衛生法第63条の規定により、食品衛生上の危害の発生防止の観点から店名などが公表される。営業停止処分や閉店に追い込まれる飲食店も少なくない。アニサキスによる食中毒は年々増加傾向にあるが、飲食店としてはなんとしても避けたい問題だ。
そうしたなか、特殊冷凍テクノロジーを活用した「Freezing as a Service®」を展開する「デイブレイク株式会社」は、2022年7月29日、特殊冷凍技術の活用による寄生虫アニサキスの死滅を立証したと発表した。また、同社が実施したアニサキスの死滅検証によると、一般的な-20℃設定の業務用冷凍庫では、厚生労働省が定めるアニサキスの冷凍処理基準である「芯温-20℃以下で24時間維持」ができない場合があることが明らかになったという。
特殊冷凍とは、食品の水分が凍る温度帯である最大氷結晶生成温度帯(0℃~-5℃)で、対象物の温度が停滞することがないよう、急速かつ均一に冷却する方法だ。冷凍にかかる時間も通常の冷凍庫よりも1/3以下に短縮されるため、細胞の損傷を極少化でき、うまみ成分の流出を防ぐことができるという。
同社が、エフティーピー化学研究所で実施したアニサキス死滅検証では、鏡検法によるアニサキスの検出と検出後の中体の運動性の確認が行われた。アニサキスを目視で確認した生サバを特殊冷凍機「アートロックフリーザー」で25分特殊冷凍。芯温-20℃以下を確認した後、-24℃設定の冷凍庫で24時間保管。24時間経過後は、冷蔵環境へ移して保管した。その後、12時間後と24時間後の運動性を顕微鏡観察した結果、アニサキスが完全に死滅している事を確認したという。
これまで魚介類の冷凍処理では、品質劣化が懸念されてきた。アニサキスを完全に死滅させられる上に、うまみ成分の流出も防げる特殊冷凍は、安全性と高品質を保つ有効な方法だ。また、高品質のまま、従来よりも長期間食材が保存出来るため、食品ロス削減にもつながる。こうした新たな技術を取り入れていくことは、お客さまの満足度向上だけでなく、サステナブルなお店づくりにも効果がありそうだ。
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