今、世界中の多くの人々が飢餓の危機に瀕している。G8(主要国首脳会議)によると、アフリカでは深刻な飢餓に直面している人が約4,000万人にものぼるという。また、WFP(世界食糧計画)は、アフリカで120万トンの食糧不足が生じるとの推計を明らかにしている。

そうしたなか、南アフリカ、ケープタウンを拠点とする培養肉企業「Mzansi Meat」は、2年間の研究開発期間を経て、アフリカ初の培養肉を使ったビーフバーガーの開発に成功したことを発表した。

同社は、2022年4月中旬にケープタウン市で開催されたイベントで、培養肉のハンバーガーを披露した。このイベントは、市の経済成長担当市長委員や同社の創設者が参加し、この開発がアフリカの食糧安全保障にとって画期的なものであると評された。

同社は、2020年の設立以来、実際に動物に害を与えることなく動物の細胞から肉を作るために、細胞農業技術を利用してきた。

同社のCEOであるTasneem Karodia氏はイベントのなかで「培養肉は細胞が発達・分裂するのに必要なビタミンや塩分、タンパク質を含む特殊な食品です。製造方法は複雑で、まず動物にできるだけ危害を加えずに、動物の組織細胞を採取する。そして、採取された細胞を栄養価の高い輸送媒体に入れ、研究所に運び、培養液の中で成長させています。Mzansiが生まれるまで、アフリカでは細胞農業は産業として成立していませんでした。私たちのハンバーガーは始まりに過ぎず、次のステップはスケールアップです。将来的には毎月何トンもの培養肉を生産することを目指しています。」と話している。

現在、アフリカの人口は増え続けており、2050年にはさらに13億人から25億人にまで増加することが予想されている。現状のフードシステムでは解決困難である食糧危機のなかで、新しいタンパク源である養殖肉が食料安全保障の解決策になることが期待されている。

培養肉のメリットとしては、畜産による地球環境への負荷が軽減される点が挙げられる。また同時に、SDGs2番目の目標「飢餓をゼロに」を解決へ導く糸口にもなる。近年、培養肉が普及してきていることは広く周知されているが、食糧危機問題において一番の当事者であるアフリカが、こうした取り組みをスタートさせたことは大きな意味を持つのではないだろうか。

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【参照サイト】 Africa’s first cultivated beef burger unveiled in Cape Town

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