
世界的な健康志向の高まりとともに、世界における魚の消費量が年々増加している。一方で、漁船漁業の生産量は1980年代後半以降、横ばい傾向のため、需要の拡大分は養殖生産によって補われている。ところがこの養殖業の急激な発展により、沿岸域の自然破壊や水質汚染、餌の乱獲といった問題が起きているのが現状だ。環境的にも経済的にも安定した生産体制を維持できる養殖業の実現に、世界中の注目が集まっている。

資料:FAO「Fishstat (Capture Production、Aquaculture Production)」(日本以外の国)及び農林水産省「漁業・養殖業生産統計」(日本) に基づき水産庁で作成
そうしたなか、北関東中心に食品スーパーを展開する株式会社ベイシアは、近畿大学と大手食品メーカーの株式会社ニチレイフーズが共同開発中の養殖魚「アセロラ真鯛TM」を、2021年11月16日より限定試験販売することを発表した。
アセロラ真鯛TMは、ニチレイフーズのアセロラ商品の生産過程で生成されるアセロラの搾りかす粉末を配合した餌で養成した養殖魚。アセロラの搾りかすにはアントシアニン系のポリフェノールとビタミンCといった抗酸化作用のある成分が多量に含まれている。近畿大学とニチレイグループでは、この成分の働きを養殖魚の「後味の良さの向上」と「肉質の保持や色味の保持」といった品質の向上に役立てるため、2018年から共同研究に取り組んでいる。また、商品の劣化を遅らせることで廃棄を減らし、食品ロスの軽減にも貢献したい考えだ。
販売対象店舗は、ベイシアの全店舗137店。販売価格は、サク100gで537円、お造り6切で429円、生寿司単品(5貫)で429円。いずれも売り切れ次第販売を終了する。
今回の試験販売では、消費者の意見を検証するためのスマホアプリ「ベイシアアプリ」を使って食品の味などについてのアンケートをとり、結果を研究開発に活かす予定だという。
このアセロラ真鯛TMは、人工種苗による持続可能な養殖業による生産物であることを証明する第三者認証「SCSA認証」を受けている。SCSA認証とは「NPO法人 持続可能な水産養殖のための種苗認証協議会」が、人の手で必要な稚魚を必要な分だけ作る「人工種苗」による養殖が、天然資源への依存度を下げ、持続可能な水産業に寄与するとの考えのもとで設立された認証だ。この認証を受けた養殖施設や加工会社は、第三者の認証機関によって人工種苗の生産から飼育、そして店舗に並ぶまでの工程や履歴を厳しく管理される。
SCSA認証商品の大手小売店での販売はこれが初めてだという。
環境に配慮されたサステナブルシーフードについて、まだまだ手に入りにくいという印象を持っている人も多いかもしれない。アセロラ真鯛TMのように、身近なスーパーマーケットで販売されることで、多くの人が持続可能な漁業について考えるきっかけになるのではないだろうか。
【参照サイト】 近畿大学とニチレイフーズが「アセロラ真鯛TM」を共同研究開発11月16日(火)からスーパー「ベイシア」全店舗※で限定試験販売持続可能な養殖業に寄与するSCSA認証商品の販売は大手小売店初!
【参照サイト】 水産庁:世界の漁業・養殖業生産
【参照サイト】 SCSA:特定非営利活動法人持続可能な水産養殖のための種苗認証協議会