石川県金沢市にあるイタリアンレストラン「Osteria Del Campagne(以下、オステリアデルカンパーニュ)」。1994年10月にオープンし、まもなく27周年を迎える。金沢という地の利を活かし、地元で採れた新鮮な野菜や魚介類などをふんだんに使ったメニューが並ぶ。美味しい料理や温かなサービスだけでなく、飲食店のサステナビリティにも力を入れ始めている。今回は、オステリアデルカンパーニュの店長でありソムリエの堀友磨さんにお話を伺った。
コンセプトは「大人を楽しませるレストラン」
1994年10月にオープンし、まもなく27周年を迎えるオステリアデルカンパーニュ。金沢という地の利を活かし、地元で採れた新鮮な野菜や魚介類などをふんだんに使ったメニューが並ぶ。鮮魚のカルパッチョやチーズリゾットが特に人気だという。20代から60代まで幅広い世代の方が訪れ、ランチや女子会、デート、記念日など、さまざまなシーンで利用される。子供の頃家族で訪れ、大人になってからデートで訪れる方もいるようで、地元で愛されるレストランだ。そんなオステリアデルカンパーニュのコンセプトは「大人を楽しませるレストラン」。ソムリエがおり、会話をしながら食事を楽しめるようにするなど、テーブルでのサービスを強化しているという。
「我々が理想とするのは、石川県の食材をイタリア料理に落とし込み、その魅力をお客様に伝えることで、料理を楽しんでいただくことです。テーブル脇で料理をおすすめし、提供からお見送りまでをコーディネートし、美味しい、楽しい、感動を運ぶサービスを目指しています。」
料理やサービスだけでなく、お皿にもこだわりたい
元々、レストランで提供する大皿料理にはニッコーのお皿を使っていた。割合でいえば、全体の7~8割程度だという。料理やサービスにこだわるからこそ、お皿にもこだわりたい。そんな想いがあった。
一般的に、飲食店の利幅は大きくない。昨今はコロナ禍ということもあり、例年の売上まで届かず経営が苦しい飲食店も多い。オステリアデルカンパーニュも例外ではなく、コロナ禍では理想とする料理やサービスを実現させることが非常に難しい状況に置かれていた。通常営業と違い時間に制限がかかるだけでなく、酒類提供も停止になり、これまでレストランに普通だった光景が変わり、一番得意であり提供したい食と酒の場を表現し辛くなってしまったという。しかし、そんななかでも前向きにピンチをチャンスととらえ、新たな挑戦をしていた。
「お客様の満足度と笑顔、そしてそれを感じたスタッフの幸福感を大切にしたいと考えています。色々と制限があるなかでも出来る事を模索し、お弁当販売やチョコレートテリーヌの販売、オードブルに出張シェフサービスなど様々な施策を行いました。しかし、金銭的な理由から取り皿までこだわれていなかったことが心残りでした。」と堀さんは話す。
そこで、取り皿にまでこだわりたいという当レストランの声をもとにニッコーが提供を開始したサブスクリプションサービス(以下、サブスク)「sarasub(サラサブ)」を早速導入した。
sarasubは、一定数(50、100枚)のニッコーの食器を2~3年単位で借り、月額費用を支払うというサービス。食器は6種類の中から好きなものを選び、利用中にお皿が割れたり欠けたりすると交換が可能だ。オステリアデルカンパーニュは半年ほど前からサブスクの利用を開始し、100枚のお皿をレンタルしている。レンタルするお皿はニッコーの食器の特徴でもあるボーンチャイナという素材を使った丈夫な品質のお皿で、半年間で1枚欠けただけだという。最初に100枚ものお皿を揃えることは金銭的にかなり負担がかかるが、月額制であれば初期投資が少なくて済む。
「取り皿をニッコーさんのものに替えてから、お客様の反応が良いですね。以前はお客様が料理の写真を撮る際、大皿だけを撮影する方が多かったですが、取り皿を替えてからは、取り皿も含めて写真を撮るお客様が増えたように思います。」
飲食店ならでは方法でサステナビリティに取り組みたい
以前、オステリアデルカンパーニュを運営するカンパーニュレストラングループの取り組みとして、環境負荷が低い洗剤を使用したことがあった。堀さんはこれまで「サステナブルな取り組み」にあまり関心がなかったが、日常的に使う洗剤を環境に良いものに切り替えることも「サステナブル」の一種であることに気づき、多角的にサステナビリティを考えるきっかけになったという。現在、オステリアデルカンパーニュでは、農家の規格外野菜などを買い取り、形はいびつであっても美味しく食べれることを直接お客様に伝えることや、野菜の端や皮など食べられないため廃棄していたものを出汁に変えたり、パスタに練り込んだりして旨味を活かして提供するなど、フードロス削減に努めている。
「飲食店という場は食の美味しさや楽しさを感じる場でありながら、街や社会の大事な機能の1つとしてフードロスを出来るだけ減らしたり、規格外商品を使用したり、野菜の皮まで無駄なく使ったりすることなど、その方法をお客様に伝える事が出来る場でもあると感じています。食べることは人が生きていく上で欠かせないことで、飲食店の果たす役割も大きいからこそ、飲食店がサステナビリティに取り組んでいったら世の中が大きく変わっていくのではないかと思います。」
実際に、能登のあんがとう農園の規格外野菜を使ったお料理をアミューズ(突き出し)として提供する企画を行っている。
「あんがとう農園さんでは、収穫する農作物の約20~30%が他の生き物に少し食べられてしまうことや少し変形したものであるために、従来の市場ルールでは価値がほとんど付かない規格外野菜となってしまいます。味は変わらずおいしいため、そのような規格外野菜に、地元に根付くイタリアンの技術を用いて付加価値をつけ提供することで農園の方への貢献をはじめ、フードロス削減、そしてお客様に対しても、より食材やその流通システムに興味をもっていただこうという想いで行っています。」
「私自身、何が本当にサステナブルなのか、きちんと理解しきれていない部分も正直あります。手探りの状態ではあるものの、飲食店がどのようにサステナビリティに取り組むことができ、それをお客様にとっての付加価値にも繋げていけるか。30年以上(※)金沢の地で飲食を提供させていただいてる会社として、家庭や街、他の飲食店にも取り組みを真似していただけるようなことを率先して実行していきたいです。」
※オステリアデルカンパーニュは今年で創業27周年を迎えるが、カンパーニュレストラングループとしては33年、金沢で運営している。
取材後記
「サステナビリティ」と聞くと難しく捉えてしまい、「完璧にサステナビリティを理解した上で実践しないといけない」と思い込んでいる方も多いのではないだろうか。「サステナビリティ」は正解のない世界だ。特に環境問題は複雑な要素が絡み合い、多角的に考える必要があるため、今はサステナブルだといわれることでも、いずれ研究が進んだり、長期的な視点に立ったりすれば実はサステナブルではなかったということも出てくるかもしれない。
今回、堀さんにお話を伺う中で、料理やサービスなど、自分たちが理想とする形にこだわっていくうちに、自然とサステナビリティに繋がっていった点が強く印象に残った。サステナビリティを強く意識するあまり、自分たちのやりたいサービスができなくなっては本末転倒だ。たとえば、地産地消は輸送中のCO2排出量削減の観点からは推奨されるべきと一般的にいわれる。
オステリアデルカンパーニュも、地元の野菜や魚介類を積極的に使うが、あくまで「お客様に感動していただける料理にする」ことを目的に選んでおり、遠方の産地の食材であっても、その目的に適うのであれば産地を地産地消にこだわらない。今回の食器のサブスクは、自分たちの目的の達成のために必要な選択で、気づかないうちにサステナビリティに結び付いていた。こういった形は本当の意味で「持続可能」であるように思うし、「気づいたらサステナブルだった」となるような仕組みの構築も今後重視されていくのではないかと思う。
【参照サイト】 オステリアデルカンパーニュ
sarasubのご案内
NIKKOでは、サステナビリティやサーキュラーエコノミーの取り組みを強化したいレストラン・ホテルの皆さまに向けて、自社のサステナビリティ活動の現状評価から社内浸透、サステナビリティ・サーキュラー調達、PRにいたるまでワンストップのソリューションを提供しています。
調達においては、取り皿に特化した食器のサブスクリプションサービス「sarasub」の提供を開始しました。sarasubにご興味をお持ちの方はぜひ詳細ページをご覧の上、お問い合わせください。