給食委託会社のパイオニア「メフォス」が想う、社員食堂のサステナビリティとは?

近年、世界的なサステナブル意識の高まりに伴い、人々の食の選択にも変化があらわれている。

2023年2月に発表された株式会社電通の調査レポートによると、約半数(47.3%)の人が「できるだけ環境に配慮して作られた食べものを選んでいる」と回答。 また、「あなたが料理をするうえで大事なことを、すべてお知らせください」という項目では、「食材を無駄にしない(46.9%)」という回答が一位だったことが明らかになっている。これは「自分の好み(40.7%)」や「栄養バランス(36.7%)」という回答よりも多い結果で、消費者の食におけるサステナビリティ意識の高まりがうかがえる。

今回のインタビューでは、幼稚園や学校をはじめ、病院や企業の社員食堂などさまざまな分野で食事を提供する「株式会社メフォス」の吉村直晃さんと太田美香さんに、サステナブルな食材の選定や調理するうえでの想いを伺った。

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右:株式会社メフォスの吉村直晃さん、左:株式会社メフォスの太田美香さん(ニッコー株式会社の食堂にて)

1962年の創立以来、乳幼児から高齢者まで、さまざまな年齢・健康状態の人々に食事を提供してきた「株式会社メフォス」。北陸第一事業部の吉村さんは、石川県白山市にある洋食器メーカー「ニッコー株式会社」の社員食堂を担当。太田さんは、その食堂で調理責任者として毎日約120食の料理を提供している。

きっかけは、サステナブルな取り組みへの共感から

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株式会社メフォスでは、2023年秋より、ニッコー株式会社が開発した「捨てられる食器をリサイクルしたサステナブルな肥料・BONEARTH(ボナース)」で育てた野菜やお米を、社員食堂の食材として採用している。

【関連記事】 世界初、捨てられる食器から生まれた肥料「BONEARTH」。洋食器の老舗ニッコーが商品化

吉村さん「ニッコーさんの社員食堂の担当をするなかで、ニッコーさんが『持続可能な食の循環』をはじめとするさまざまな取り組みを行っていることを知りました。メフォスでも、事業を展開している全国の各地域でサステナブルな取り組みを行っており、重なる部分を感じました。

また、ぜひサステナブルな食の取り組みに協力したいという自分自身の思いもあり、ボナース野菜やボナース米の採用に至りました。」

太田さん「調理スタッフたちにもボナース食材のことを説明したのですが、『すごいね』『画期的だね』と驚きの声が上がっていました。皆んな調理者として日頃からニッコーさんの食器に触れているので、食器の循環の取り組みにぜひ協力したいと率直に感じたようです。」

目でも舌でも食事を楽しんでほしい

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また、吉村さんによるとボナース食材の採用については、食器メーカーであるニッコーの食堂だからこそこだわりたかった面もあるのだという。

吉村さん「ボナース野菜には、ビーツやコールラヴィなどの西洋野菜などがありますが、こうした珍しい野菜は、仕入れ数や価格の問題で、社員食堂の食材として使われることはほとんどありません。でも、色鮮やかな食材を使うことで目でも舌でも味わってもらえます。サラダなどにピンク色の野菜が入るとデパ地下のデリのようなちょっとおしゃれな一品に見えますよね。

ニッコーさんの食器は、世界中のホテルやレストランで使われています。日々そうした食器を作っている社員の方々に提供する食事には、味だけではなく見た目も求められていると思っています。

ボナース米に関しても食堂で提供することで、ニッコー社員の方々が自社の販売するお米を味わうひとつの機会になります。結果的に、食堂の利用率アップにもつながると考えました。」

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調理者と利用者のコミュニケーションのきっかけにも

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左:石川県白山市の鳥越地域にあるBONEARTH FARM 右:BONEARTH FARMで栽培されたナス

調理責任者の太田さんによると、ボナース食材を使って調理するのは、作り手のモチベーション向上にもつながっているという。

太田さん「食堂調理で使用する食材は、安定した供給が求められるため、冷凍の野菜を使うことも多いのですが、ボナース野菜は石川県白山市の農園で育った朝採れの野菜です。鮮度が高いため、野菜は冷凍のものに比べてとても色が綺麗で、特にナスは違いがはっきりと出ていました。

また、実験的に栽培された甘長ししとうやビーツ、コールラヴィなどのボナース野菜は、普通のスーパーでは売っていないようなちょっと珍しい食材です。さまざまな調理法を調べたりしながらメニューを考えることで、調理者としての発想力が鍛えられたと思います。」

甘長ししとうは煮浸しや天ぷらに、ビーツはコールスローや和物に、コールラヴィはスパイシー揚げやポテトサラダに調理したという。

太田さん「食堂を利用する社員の皆さんと『甘長ししとうってこうやって使えばいいんだね』『ビーツの下ごしらえはどうしたらいいの?』など、声をかけていただくことが増え、自然とコミュニケーションの機会が増えました。メニューを通して色々な野菜の使い方を提案することで、今まで以上に食堂の食事に興味を持っていただけていると感じます。」

給食委託会社のパイオニアとして、メフォスが目指すもの

今回紹介したボナース野菜やボナース米の採用は、株式会社メフォスが目指すサステナビリティの実現に向けた取り組みの一例だ。メフォスでは、1962年の創業以来、給食委託会社のパイオニアとして地域密着を貫き、地産地消や食育など、多様化する人々のニーズに真摯に向き合ってきた。

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メフォスの設定する、SDGsにおける9つの重点目標

全国500ヶ所以上で学校給食を展開していることから、食育活動にも力を入れている。随時開催している「Chef’s Lunch」というイベントでは、一流の料理人と栄養教諭や調理員が力を合わせて献立作りや調理を行い、「学校給食」として提供することで日頃の給食に変化を持たせ、子どもたちの新しい食体験に繋げる取り組みだ。

昨年11月に福島市で行われた第五弾は、メフォスの受託先である福島市東部学校給食センターで開催。参加した子どもたちは、季節の食材と和食のコラボレーション給食やシェフとの交流を通じて「食事の楽しさ」「季節の食材の魅力」を感じることができたという。

この他にも地域活性化に貢献するための農業体験や、従業員のモチベーション向上や調理技術向上を目的とした「メフォス料理コンテスト」の開催など、幅広い取り組みを行っている。

また、メフォスの目指す姿を表現しているというブランドサイトではメフォスがこれまで大切にしてきた想いや、メフォスの描く未来、クライアントや取引先の人たちの声などを読むことができる。

【株式会社メフォス】 ブランドサイト

社員食堂だからこそ、伝わる想いがある

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最後に、今後の社員食堂でどのような食事の提供を目指しているのか、吉村さんにその想いをうかがった。

吉村さん「やはり、一番は『お客さまに喜んでいただける料理を提供したい。』という想いです。そのために日々、新しい食材の研究もしていますしトレンドもキャッチするようにしています。現代の時代のニーズやトレンドというと、当然サステナビリティの実現も含まれますよね。

社員食堂での食事は、家での食事や外食とはまた違うもの。日々の食事として社員の皆さまの身近にあるものだからこそ伝わるメッセージがあると思っています。」

今回インタビューでうかがった吉村さんと太田さんの言葉からは、「社員食堂での食事」に真摯に向き合う姿勢と、時代のニーズや利用者に寄り添う温かな想いを感じることができた。メフォスにとって、そうした想いの延長線上に自然と存在するものが“サステナビリティ”なのではないだろうか。

【参照サイト】 株式会社メフォス
【参照サイト】 株式会社メフォス/ブランドサイト
【参照サイト】 電通、「食生活に関する生活者調査」を実施

table source 編集部
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table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
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