作り手のクリエイティビティを刺激する。廃車の窓ガラスから生まれた食器「mado」

いま世界では海洋プラスチックをはじめ、ごみ問題が注目されている。日本のごみの量は、環境省の報道発表資料によると、平成30年度の一般廃棄物が4,272万トン、産業廃棄物は3億7,577万トンと推計されている。産業廃棄物と言うと、普段の生活で目にすることはあまりないかもしれないが、廃棄された自動車の一部も産業廃棄物になる。

経済産業省によると、年間で約350万台の自動車が廃棄されており、総重量の約80%がリサイクルされ、残りの約20%がシュレッダーダストとして埋め立て処分されてきた。近年、埋め立て処分に使用される最終処分場の容量が不足してきたことや、これに伴う処分費用の高騰が問題になっている。

こうしたごみ問題の解決策のひとつとして、沖縄県最大のリサイクル会社の拓南商事と手作りガラス工房の琉球ガラス村は、廃自動車の窓ガラスをアップサイクルして食器にするプロジェクトをはじめた。拓南商事では、月におよそ6,600台の廃車を解体し、リサイクルできない窓ガラスは県外の埋め立て処分場に送っており、処理コストは月に600~700万円にものぼっていたと言う。

今回は、琉球ガラス村を運営するRGC株式会社の広報である當眞大地さんに、madoプロジェクトについて話を伺った。

RGC株式会社の川上英宏さん(左)、當眞大地さん(右)

廃自動車の窓ガラスでつくる食器「mado」プロジェクトがスタート

窓ガラスの処分に頭を悩ませていた拓南商事から声をかけられたのが琉球ガラス村だ。當眞さんは、沖縄県内では琉球ガラスは再生ガラスのイメージが根付いており、挑戦することに迷いはなかったと語る。

「県の紹介で拓南商事さんから、廃自動車の窓ガラスを使って食器が作れないかとお話をいただきました。沖縄では、戦後の物資が不足していた時代に、米軍基地の中で米兵が捨てるコーラなどのジュースの空き瓶を集めて、当時のガラス職人たちが琉球ガラスとして生活用の雑器を作りはじめたという歴史があります。1980年代に入ってからは原料を調達しやすくなったこともあり、バージン原料を使用するようになったのですが、今回拓南商事さんからお話をいただいて、久しぶりに再生ガラスに挑戦することになったプロジェクトです。試作をつくってみると、想像以上に良い商品ができたので、当社から商品化したいとお話をして、拓南商事さんが粉砕した窓ガラスを継続的に買取させていただいて原料として活用することが決まりました。」

柄に込められた沖縄独自のストーリー

こうしてはじまったmadoシリーズは、現在ロックグラスやタンブラー、小鉢など複数の商品があるが、そのどれもにダイヤ柄とモール柄の2種類が用意されている。実は、この柄にも沖縄独自のストーリーが秘められていると言う。

左:ダイヤ柄、右:モール柄

「ダイヤとモールという2つの模様を展開しているのですが、モールは琉球ガラスの歴史の中でも初期から使われている模様でクラシックな形になっています。縦筋が入っている型にガラスを吹き付けて、縦の筋が出たものをねじることで、流れるような模様がつきます。また、物資が不足していた時代は、モール柄を作るために廃車のタイヤホイールを利用していました。当時は廃瓶の材料だけでなく、製造の工具も再利用していたようです。このようにして沖縄が守ってきたクラシックな模様を受け継ぎ、これからも使い続けたいという思いでモール柄を採用することにしました。

また、ダイヤ柄は、拓南商事のグループ会社の拓南製鐵さんにちなんだ柄になっています。拓南製鐵さんは、二次産業が少ない沖縄で製鉄をされている会社で、沖縄県外の鉄筋は横に筋が入っているのですが、拓南製鐵さんの鉄筋は格子模様になっているという特徴があります。拓南商事さんからのお声がけではじまったプロジェクトなので、拓南グループに縁のあるダイヤ柄をデザインしました。これにピンとくるのは間違いなく拓南グループの方だけなんですけどね(笑)。鉄鋼ひとつをとっても、沖縄がユニークな柄を持っているのは面白いと思っていて、こういった細かいところに意匠として思いを込めました。」

作り手が技術を発揮できる社会を目指して

廃自動車の窓ガラスを原料にしたmadoシリーズの制作は、バージン原料を使用したガラス製品の制作に比べて時間がかかり高度な技術も必要だと言う。そんな手間暇をかけて制作を続ける理由を尋ねると、當眞さんは、サステナブルな素材を提供することであらゆる手仕事の職人に新しいものをつくり続けていってほしいからだと語ってくれた。

「戦後の物がなかったときに、米兵が捨てたタイヤから島草履を作ったり、パラシュートを縫い直してシャツに作りなおしたりしていた時代があり、琉球ガラスもそのひとつで、物がないからこそ廃棄物をどうにか繋ぎ合わせて生活していたという歴史があります。いまも職人たちには物がなかった時代のスキルが残っていて、改めて工芸や民芸の世界を考えたときに、身近にあるものを再利用することは本流に立ち返るという意味でもすごく自然なことだと考えています。様々な手仕事の技術がある職人さんがいると思いますが、そういった方々がどういう素材を選択するかで、サステナブルな社会の実現に繋がるのではないかと感じています。また、手仕事の会社だからこそ叶えられる世界があると思っています。madoシリーズを使っていただける方には、サステナブルな食器や素材を調達することで、料理される方がこれまでに培ってきたスキルやクリエイティビティを遺憾なく発揮していただき、どんどん新しい料理を生み出していって欲しいと思います。」

取材後記

食器を通じてサステナブルな社会の実現を目指すべく邁進しているRGC株式会社の當眞さんのお話で印象的だったのは、琉球ガラス職人をはじめとしたあらゆる作り手へのリスペクトだった。戦後の物がない時代に廃棄物からどうにか物をつくり出していた職人や、いまもその技術を継承している職人、そしてmadoシリーズを使っていただける料理人など、あらゆる作り手にサステナブルなマテリアルを届けたいという思いが、従来の生産効率重視のビジネスモデルから循環型のビジネスモデルへの転換への大きな鍵となっているのではないだろうか。

沖縄では豚がよく食べられているが、「鳴き声以外は全部食べる」と言われている。琉球ガラス村と拓南商事では、madoシリーズを皮切りに自動車を余すことなく活用できるよう、今後も様々な取り組みをはじめていく予定だ。こうした資源を有効活用した商品を誰もが簡単に選択できる社会になることに期待したい。

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