ゼロウェイストとは
ゼロウェイストとは、廃棄物(ウェイスト)をゼロにすることを目標に、ごみをどう処理するかではなく、ごみ自体をできるだけ出さないようにする活動のこと。例として、自転車や車のシェアリングサービスや、家具や家電のサブスクリプションサービスを利用することで新しい製品の購入を控えたり、コンポストを使用して生ごみを堆肥化して再利用するなどがある。
ゼロウェイストが世界中で注目されている背景には、プラスチックごみが及ぼす深刻な問題がある。風で飛ばされたり川に捨てられたプラスチックの海への流出量は年間800万トンにのぼり、海の生物がエサと間違い餓死してしまうニュースが後を絶たない。環境省のデータでは、2050年までに海洋中で魚よりもプラスチック量が増えると予測。また、大きさ5mm以下のマイクロプラスチックは、回収はほぼ不可能とされる。生物が飲み込んだプラスチックは、将来的に生態系に何らかの悪影響を及ぼしたり、それを食べる人間の健康も懸念される。
ゼロウェイストの5R
「ゼロ・ウェイストの伝道師」とも呼ばれるベア・ジョンソン氏の著書「ゼロ・ウェイスト・ホーム」(翻訳:服部雄一郎、出版:アノニマ・スタジオ)では、毎日の暮らしにゼロ・ウェイストを取り入れるための5つのステップが解説されている。
- Refuse(断る):買物の際の過剰な包装を断る。
- Reduce(減らす):長く使える物を購入し、すぐ壊れてしまう製品の購入を減らす。
- Reuse(繰り返し使う):中古品を購入したり、壊れたら修理をして繰り返し使う。
- Recycle(リサイクルする):ごみは分別してリサイクルする。
- Rot(堆肥化する):コンポストで堆肥化し、生ごみを減らす。
ゼロウェイストの実践例
近年、ホテルや飲食店でもゼロウェイストの取り組みが増えている。
- 開業88年を迎える琵琶湖ホテルでは、地元滋賀県守山市の生産者によるバラの装飾をロビーに展示。展示を終えた花はドライフラワーにして館内装飾などに再利用するなど、フラワーロス削減に貢献した。
- 家具家電のサブスクリプションサービスCLAS(クラス)を運営する株式会社クラスでは、京都市と連携して再利用を促進する新サービスを2022年2月1日より開始。返却品は専門のリペア職人によって修繕やリフレッシュが施された後、次のユーザーに貸出される。
- 株式会社O-line(オーライン)が運営する「四季 SHI-KI」は、年間4回まで内装を改修できるサービスを提供。和紙を用いて施行され、改修コストや時間、廃棄物も大幅に削減できる。
- テイクアウト容器のシェアリングサービス「Re&Go」は、2020年11月から2021年2月に沖縄県で実証実験を行った。複数の飲食店が、アプリを活用し、共同でリユーサブルな容器を使用し、パートナーと連携し回収と洗浄を実施。2021年11月からは東京でも実証実験を行い、2022年中の事業化を目指す。
- GRIT株式会社が運営するサラダショップ「GRIT TODAY」では、顧客が店舗に持参した容器にサラダを提供するサービス「MY ECO BOWL(マイエコボウル)」や、同サービス利用者に10%割引するキャンペーンを2021年5月30日から6月30日まで実施した。
ゼロウェイスト宣言都市
オーストラリアの首都キャンベラは、1996年に世界初となるゼロウェイスト宣言を行った。その後、こうした宣言はカナダのトロントやアメリカのサンフランシスコなど、世界中で広がっている。環境意識の高いニュージーランドでは、自治体の70%がゼロウェイスト宣言を出しているという。
日本では、徳島県上勝町が2003年に日本初となるゼロウェイスト宣言を行った。同町ではごみ収集は一切行われず、瓶や缶などの資源はごみステーションに持ち寄り、45種類に分別。リサイクル率は80%を超える。生ごみなどはコンポストを利用し、各家庭で堆肥化される。他にも、2008年に福岡県大木町、2009年に熊本県水俣市、2012年に奈良県斑鳩町、2020年に福岡県みやま市が同様の宣言を行い、ゼロウェイストに向けての取り組みを続けている。
【参照サイト】ゼロ・ウェイスト・ホームーごみを出さないシンプルな暮らし(著:ベア・ジョンソン 訳:服部雄一郎)
【参照サイト】ZERO WASTE HOME
【参照サイト】プラスチックを取り巻く国内外の状況(環境省)
【参照サイト】ZORO WASTE TOWN Kamikatsu
【参照サイト】大木町もったいない宣言
【参照サイト】熊本県水俣市:ゼロ・ウェイストのまちづくり
【参照サイト】斑鳩町ゼロ・ウェイスト宣言(斑鳩まほろば宣言・斑鳩まほろば行動宣言)の制定について
【参照サイト】みやま市ゼロ・ウェイスト宣言 行動計画