ベジタリアン(菜食主義)とは

ベジタリアン(菜食主義)とは、肉、魚介類および、それらの副生成物(含有食品)を食べない人のことを指す。語源は、「健全な、新鮮な、元気のある」という意味のラテン語“vegetus”だといわれており、「ベジタリアン」という言葉は1840年頃にイギリスで使われ始めたと考えられている。

宗教上の理由や倫理上の観点からベジタリアンになることを選択する人が一定数いたが、近年では環境問題を背景にベジタリアンを選択する人も増えてきており、米国の歌手アリアナ・グランデや同じく米国の俳優ブラッド・ピットはヴィーガンであることを公表している。

ベジタリアンの種類と規模

ベジタリアンの中にもいくつか種類があり、植物性食品に加えて何が食べられるかによって分かれている。

ヴィーガン
  • ベジタリアンの中でも特に厳格で、肉・魚介類・卵・乳製品を一切食べず、植物性食品のみ摂取できる。さらに「動物を搾取しない」という考えのもと、蜂蜜など動物由来の食品の摂取や動物製品(皮製品・シルク・ウール・羊毛油・ゼラチンなど)を身につけることを禁じる。
  • 植物性食品のみの食事をするが、食用以外の動物の利用を必ずしも避けようとしない「ダイエタリー・ヴィーガン」も存在する。
  • ヴィーガンよりさらに厳格なのが、「フルータリアン」である。ヴィーガンとの違いは、植物性食品の中でも植物を殺さない食品しか摂取できないことだ。 たとえば、にんじんを食べるとにんじんそのものを殺すことになるため食べられない。トマトやりんごなど、食べても苗木や木自体は死なない食品は食べられる。
ラクト・ベジタリアン
  • 植物性食品・乳製品を摂取でき、肉・魚介類・卵は食べない。
オボ・ベジタリアン
  • 植物性食品・卵を摂取でき、肉・魚介類・乳製品は食べない。
ラクト・オボ・ベジタリアン
  • 植物性食品・卵・乳製品を摂取でき、肉・魚介類は食べない。
ペスコ・ベジタリアン(ぺスタリアン、ペスキタリアン、ぺスクタリアン)
  • 植物性食品・卵・乳製品・魚介類を摂取でき、肉を食べない。
ポーヨー・ベジタリアン
  • 植物性食品・卵・乳製品・魚介類・鶏肉を摂取でき、鶏肉以外の肉(獣肉)のみ食べない。

国際ベジタリアン連合(International Vegetarian Union)は、ぺスコ・ベジタリアンやポーヨー・ベジタリアンをベジタリアンと認めていない。

ユーロモニターインターナショナルの調査によると、世界のベジタリアン・ヴィーガン人口は約10%。欧米諸国を中心に増加傾向にあると言う。特に、1990年代中盤以降に生まれた「Z世代」で増加傾向にあり、Z世代の54%が肉やその他の動物ベースの製品を避けているという調査結果が出ている。こうした背景から、プラントベースの市場は拡大しており、プラントベースミルクや代替肉、ヴィーガンチーズ、ヴィーガンマグロといった商品を大手メーカーが続々と開発している。

なぜ、ベジタリアンを選択するのか?

近年、畜産業界が地球環境に及ぼす悪影響を理由に肉食を避ける人が増加傾向にあるといわれるが、それにとどまらず、ベジタリアンを選択する背景はさまざまである。

宗教

宗教上の理由から、肉や魚介類を食べられない場合がある。たとえばヒンドゥー教では、牛が神聖な生き物だと考えられていることから牛肉を食べることは禁じられているが、牛乳を飲むことはできる(牛を殺さないため)。また、豚が不浄な生き物とされ、豚肉を口にしない人もいる。ジャイナ教は、生き物を殺すことが認められていないことから、植物性食品以外を摂取することは難しい。

健康

菜食中心の食事は、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取が少なく、食物繊維やビタミンなどの摂取が多くなるため、非菜食主義者と比べて、心臓病や脳卒中、特定のがんや肥満などの慢性疾患を発症するリスクを抑えられると言われている。一方、必須アミノ酸やビタミンB群、鉄分は不足しやすいため、さまざまな穀物、豆類、種子類、ナッツ、野菜をバランスよく食べることが推奨されている。

倫理

人間が食べるために動物を殺すのは、人を殺すのが許されないのと同様に倫理的に許されないと考える人もいる。また、畜産動物が劣悪な環境下に置かれていることを問題視する動きもあり、農林水産省ではアニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮した家畜の飼養管理の普及に力を入れている。

環境保護

FAOによると、世界の畜産由来の温室効果ガス排出量は、年間7.1ギガトンのCO2に相当し、人為的な温室効果ガス排出量全体の14.5%を占めており、自動車や飛行機などの輸送による排出量にも匹敵すると言われている。畜産由来の排出量の内、44%は牛などの反すう動物による消化器官内発酵によるメタンガス排出が占めており、41%は家畜に与える飼料の生産によるものとされている。また、飼料の生産には大量の水が必要となり、水資源の課題も指摘されている。

食料問題

ユニセフによると、世界では約8億2100万人が慢性的な栄養不足状態であるとされ、人口増加や異常気象による農作物の不足により、今後大規模な食糧不足に陥ることも懸念されている。家畜動物を育てるために大量の穀物と大豆が必要となるため、食糧不足を助長させるおそれがある。

飲食店におけるベジタリアン対応事例

国内においてもベジタリアンの需要が増加していることから、ベジタリアンやヴィーガンに対応する飲食店が増えてきた。ここでは、ベジタリアン対応を行う店やベジタリアン専門店の事例を紹介する。

ベジタリアン・ヴィーガン対応を行う飲食店

IKEA

2030年までにクライメートポジティブの達成を目標に掲げるIKEAのレストランでは、植物由来の原料だけを使用したプラントベースフードがメニューに並ぶ。レストランのアイコンとも言われるミートボールをプラントベースのタンパク質でつくったプラントボールや、プラントカツカレー、ブラントベースソフトクリームなど、食事メニューからスイーツまでプラントベースの選択肢を提供している。プラントボールは、黄エンドウ豆由来タンパク質、オーツ麦、ジャガイモ、タマネギ、リンゴでできており、クライメートフットプリントはミートボールの4%に収まると言う。

biotable.

東京・芝浦にあるダイニングスペース「biotable.」は、グルテンフリーやヴィーガンに配慮し、大豆ミートと米粉、タピオカ粉などを使って作られたヴィーガン対応のラザニアや、無農薬野菜を使ったパスタなどを提供する。ヴィーガンだけでなく、ノーマルな食志向の人でも美味しく食べられるよう、食材や調理方法にこだわっているという。

多様な価値観を肯定するダイニングスペース「biotable.」がオープン

ヴィーガン専門の飲食店

菜道

東京・自由が丘にあるヴィーガンレストラン「菜道」は、「美食同源」をコンセプトに、麺・丼・揚などジャンクな和食をヴィーガンレシピで提供している。2019年には、米国ヴィーガン・ベジタリアン向けレストラン情報サイト「Happycow」でベストヴィーガンレストランランキング世界1位に選ばれた。

2foods

渋谷や麻布十番など、都内に5店舗を構える「2foods」は、「ヘルシージャンクフード」をコンセプトに、プラントベースやグルテンフリー、白砂糖不使用、合成保存料・合成着色料不使用など、食材にこだわった料理を提供する。

ヘルシーなジャンクフード。「TWO」が植物由来のフードブランドを立ち上げ。「カゴメ」とも業務提携

【参照サイト】IVU – IVU – International Vegetarian Union
【参照サイト】The Rise of Vegan and Vegetarian Food – Euromonitor.com
【参照サイト】FAO – News Article: Key facts and findings
【参照サイト】Results | Global Livestock Environmental Assessment Model (GLEAM) | Food and Agriculture Organization of the United Nations
【参照サイト】The State of Food Security and Nutrition in the World 2019 – UNICEF DATA
【関連サイト】イケアレストランへようこそ|IKEA【公式】 – IKEA
【関連サイト】biotable
【関連サイト】東京のヴィーガン レストラン / 菜道 – Japanese Vegan Restaurant
【関連サイト】2foods(トゥーフーズ)|公式サイト