都市農業とは

都市農業とは、人口の多い都市部で行われている農業のこと。「都市型農業」とも呼ばれる。日本で行われている農業は大きく分けて、平野部、山間部、都市部で行われている3種類があり、都市農業は近年増加傾向にある。
また、農作物を生産する以外にも、教育や防災など様々な面で地域に貢献しているのも特徴だ。

都市農業のメリット

自然の多い地方ではなく、人口の多い都市部で行う農業のメリットとは何だろうか。
農林水産省では都市農業の6つの機能を下記のように挙げている。

  1. 新鮮な農産物の供給
  2. 農業体験・交流活動の場
  3. 心やすらぐ緑地空間
  4. 都市住民への農業への理解の醸成
  5. 国土・環境の保全
  6. 災害時の防災空間

新鮮な農作物の供給に留まらず、都市農業では都市部ならではの役割が多々あり、多面的に機能していることがわかる。

都会に住み「農業は地方や田舎で行われるもの」という考えでいると、日々口にする農作物への関心が薄れ、それらを選ぶ際には値段や量のみで選ぶことになりがちだ。しかし、都市部に農地があることで、人々は緑地空間に癒されるだけでなく、農業を身近に感じることができ、食への関心も高まるだろう。

また、都市農業には物理的なメリットもある。消費者との距離が近いことで運送コストや輸送燃料、中継地点での保管にかかるエネルギーも削減できるうえ、新鮮な野菜をスピーディーに供給できる。こうした無駄が省けることや、地産地消に貢献できることは大きなメリットだ。

都市農業のソリューション

屋上農園と垂直農法という方法がある。どちらも、限られた土地のなかで行う都市型農業のソリューションで「CEA(Controlled Environment Agriculture)」とも呼ばれる。
両者の違いは主に「農場」の設置場所にある。もう少し詳しく見てみよう。

 

屋上農園とは

名前の通り、高層ビルや工場、スーパーマーケットなどの屋上を使い、平面的に設備を設置した農園のこと。光は主に自然光(太陽光)を利用する。
土地を有効活用できるメリットは大きい。また、数え切れないほどある都市部の屋上を緑化することは、郊外に比べて都市部ほど気温が高くなる「ヒートアイランド現象」の対策としても期待できる。

スタイルとしては温度や湿度が調整可能な温室を設置したものや、プランターで育てている屋上農園もある。企業やNPOなどが運営するレンタル畑も多く、今まで農業と関わりのなかった人にもその門戸が開かれている。都会暮らしでも農業が叶う「電車で通える」農園は、今後ますます需要が高まりそうだ。

 

垂直農法とは

垂直農法は、傾斜面や高さを利用して農作物を育てる手法。室内で行われ、都会の超高層ビルや輸送用のコンテナ、使われなくなった倉庫などが活用される。高さは必要だが、従来の農法のように広大な土地が不要なため、都市部との相性が良い。

垂直農法では光を均一に当てる必要があるため、自然光とLEDライトなどの人工光を組み合わせて栽培することが多い。そのため天候にかかわらず一年中栽培でき、安定供給が可能だ。また、虫や野生動物、大型農業機の事故など、農業従事者のリスクを減らせることもメリットとなる。設備のコストはかかるものの、メリットが多いことも垂直農法の魅力だ。
 

都市農業を行う企業や団体

アグロポリスが設計した、世界最大級パリの屋上農園

パリでは、2020年に世界最大規模の屋上農園がオープンし、注目を集めている。フランス・パリ南西部にあるエンターテイメント施設の上にあり、土地の広さは約14,000平方メートル。屋上で作られる作物は30種類以上だという。
設計は、都市農業デザイン企業「Agripolis(アグロポリス)」。同社は他にも、パリ市内複数の都市農園において設計や運営に携わっている。収穫した作物は、パリの市民やスーパー、レストランなどに直接届けられるため、輸送コストやCO2排出量も最小限で抑えることができる。

 

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東京メトロが開設した高架下の植物工場

2014年、江戸川区を通る東西線の西葛西駅から葛西駅の間の高架下に開設された水耕栽培の工場。生産能力は一日あたりレタス、ベビーリーフ、バジルなど400株で、それらを「とうきょうサラダ」というブランド名で都内の飲食店やホテルに販売している。「えぐみやアクが少ない」と味も好評だという。

 

農業排水ゼロの省資源栽培を行うイチゴ農園

クラフト苺を生産する「BERRY」と膜式栽培農法など先端農業に取り組む「CULTIVERA」が、環境負荷を抑えながら美味しい苺を生産する「The Good Green Farms」を共同創業した。2022年5月16日に、シェフやパティシエをはじめとするプロフェッショナル向けの限定販売を開始した。

特殊なファイバー積層で形成した空間を気化水分で満たし、元来植物が持っている微細な「毛細根」を発生・活性させることで、効率よく水分や栄養を吸収することができる。気化水分で育てるため水の消費量が従来の栽培法の約1/10にもなるという仕組みだ。また、土壌の代わりに空間で育てるため、土をほとんど使用しない省土壌栽培を実現している。

栽培に必要な⽔は従来の1/10、農業排⽔ゼロを実現。気候変動に負けない苺が発売

屋内農園型障害者雇用支援サービス「IBUKI」

IBUKI」は、障害者の福祉的就労ではなく、企業就労としてハーブや野菜などの栽培を行う障害者雇用支援サービスだ。利用企業は屋内型農園であるIBUKI施設内に企業ごとの拠点を構えており、障害者を直接雇用することができる。

農園は屋内にあるため天候の影響を受けにくく、設備・環境を整えやすい。それぞれの企業では、栽培したハーブティーをオフィスやショールームで提供したり、無農薬野菜を使った食事を社員食堂で振る舞ったり、入浴剤やキャンドルなどに加工し福利厚生として配布するなど、さまざまな形で収穫物を活用している。

障害者の企業就労を。雇用支援サービス「IBUKI」がハーブ栽培などで200名以上を雇用

【参照サイト】農林水産省:都市農業について
【参照サイト】農林水産省:都会で行われている先進的な農業
【参照サイト】国土交通省:都市の農業・農地の果たしている多面的役割
【参照サイト】世界で盛り上がるフードテック、サステナブル都市型農業の最先端 コロナ禍で注目が高まる「屋上農園」と「垂直農法」
【参照サイト】都市農業とは・意味
【参照サイト】垂直農業とは・意味
【参照サイト】環境省:ヒートアイランド現象ってなに?
【参照サイト】栽培に必要な⽔は従来の1/10、農業排⽔ゼロを実現。気候変動に負けない苺が発売
【参照サイト】障害者の企業就労を。雇用支援サービス「IBUKI」がハーブ栽培などで200名以上を雇用
【参照サイト】BERRY公式ホームページ
【参照サイト】IBUKI公式ホームページ