アップサイクルとは

アップサイクルとは資源循環の方法のひとつで、「創造的再利用」とも呼ばれている。

廃棄物の素材を生かしながらデザインやアイデアによって新たな価値を与え、元の状態より価値を高めること。商品そのものを最大限利用でき、寿命が長くなることが期待される。

大量生産・大量消費の現代の消費活動から、持続可能な循環社会への移行が求められている今だからこそ、特に注目されているキーワードだ。

 

また対義語に、ダウンサイクルがある。廃棄物を分解して原料へ戻し、元の状態より価値や質の低い、または同程度のものに生まれ変わらせること。例えば古着を雑巾にする、などがそれにあたる。使った後は再び捨てられる可能性が高く、リサイクル製品としての寿命は短い傾向にあると言える。

 

5Rのなかでも間違いやすい(リユース・リサイクル・リペア)との違い

5RとはRで始まるごみを削減するための5つの方法を指す。

具体的には2000年に作られた「循環型社会形成推進基本法」にて法制化された3R(リデュース・リユース・リサイクル)に、リフューズ・リペアを加えた5つの行動のことだ。

これらの言葉とアップサイクルは、たびたび混同されやすい。特に間違われやすいリユース、リサイクル、リペアとの違いを詳しく見ていこう。

 

Reuse(リユース)

リユースとはものを繰り返し長く使うこと。ひとつのものにアレンジが加えられることなく、誰かの手に渡ることも含め使い続けられるということを指す。

着なくなった服はフリーマーケットやアプリを通して売る、家電製品の調子が悪ければまず修理に出す。また購入する際にもフリーマーケットやリサイクルショップで中古品を買ったり、何回も使えるリターナブルびんを使ったりすることも含まれる。

Recycle(リサイクル)

リサイクルとはごみを再び原材料に戻し、エネルギーとして有効に活用することを指す。

アップサイクルとの違いは、捨てるものを再利用する目的は同じだが、リサイクルは廃棄された缶やペットボトルなどを分解して資源化し、新たな製品の「原料」として再利用するという点。リサイクルしやすい材料としては、びんや紙、ペットボトルなどがある。
ただリサイクルするためには、ごみの分別が正しく行われている必要がある。そのためごみ出しの際の、私たちひとりひとりの心掛けが大切になる。

Repair(リペア)

リペアとは、ものが壊れたら修理して、できるだけ長く使うことを指す。ぬいぐるみや服、革靴などは修理に出すのが一般的なものだろう。古くなったり壊れたりした家具をリメイクするなどの行動はごみを出さないことに繋がる。

これらはごみを減らすのが主な目的だが、アップサイクルとは資源をよりサステナブルに循環させることを目的としている。結果として、ごみを出さないことに繋がるものだ。

 

アップサイクルが注目される背景

食品業界とファッション業界では特に大きな動きがみられる。大量生産・大量消費の時代になり、衣類の廃棄と食品ロスの量は年々深刻になっているのがその理由だろう。

食品業界のアップサイクルトレンドについては、年々深刻になる食品ロスが背景にある。食品ロスとはまだ食べられるにも関わらず廃棄される食品のこと。
農林水産省及び環境省が公表している食品ロスの推計によると、2020年度の食品ロス量は前年度と比べてマイナス48万トンの522万トンとなり、推計を開始した2012年度以降で最少となった。近年のSDGsへの取り組みの呼びかけが浸透していること、そして各自が消費活動を意識的に行い始めている結果と言える。

また国内のファッション業界では、家庭から廃棄される衣料が年間約51万トンにもおよぶ。その68%は焼却・埋め立て処分され、そのうち再資源化されるのはたった5%。そのことからも環境へ大きな負担がかかっているのがわかる。ただCSRの観点からも、再生素材を採用した衣料や、古着や廃棄物を活用したアップサイクルに力を入れるブランドが増えてきているのも事実だ。

 

アップサイクルとSDGs

現在、企業だけでなく消費者にも、SDGsの目標達成に向けた取り組みが求められている。

アップサイクルと関わりの強いSDGsは目標12「つくる責任 つかう責任」だろう。17の目標を達成するために求められる「ターゲット」を見てみると、下記のようにある。

 

  1. 12.2「2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する」
  2. 12.5「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」
  3. 12.8「2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする」

 

これらのための具体的な行動は示されていない。だからこそ私たち一人ひとりや各企業がアイデアを出し合い、実践に起こしていくのが必要になるのではないか。アップサイクルは間違いなく、そのひとつとなり得るだろう。


 

アップサイクル認証とは

アメリカのアップサイクルフード協会(UFA)は2020年、食品廃棄を防ぐ製品を示す「アップサイクル認証」をスタートした。アップサイクルされた食品や製品についての世界初の認証制度だ。

同協会によるアップサイクルフードの定義とは、下記のようなものがある。

 

  • アップサイクル食品は、本来なら食品廃棄される食材や製造過程においての副産物から作られるもの
  • アップサイクル食品は、付加価値のある製品
  • アップサイクル食品は、人が消費するもの
  • アップサイクル食品は、監査可能なサプライチェーンで調達・生産されているもの
  • アップサイクル食品は、どの原材料がアップサイクルされたものかを明記しているもの

 

認証された企業・ブランドは、ロゴ入りの認証マークを製品につけることができるため、消費者が一目でわかるようになる。

 

飲食業関連のアップサイクル事例

現在飲食業関連のアップサイクルにおいて、各大手企業が生産・加工時に発生する廃棄物や副産物を原料にして、別の商品を企画・開発するといった様々な取り組みを進めている。

具体的な取り組みをいくつか挙げてみよう。

 

「Boulanferme(ブーランフェルメ)」は余ったパンの耳で全国のブリューワリーと協同で醸造したクラフトビールを醸造、食品販売の「オイシックス」は野菜や果物のヘタや皮を使ったスナック菓子を販売、京都発のサステナブルな食品ブランド「SIZEN TO OZEN(シゼントオゼン)」はほうじ茶やチョコレートの製造過程で出た副産物を使った「カカオチャイほうじ茶」を販売している。

また、ニッコー株式会社では廃棄されるバスルームのタイルを食器としてアップサイクルした「uptile dish(アップタイル ディッシュ)」を商品化。同社では、バスルーム事業や陶磁器事業を含め、複数の事業を展開しており、廃材の管理や商品への加工、出荷、販売までをすべて自社で行うことで、アップサイクルに伴うエネルギーの削減も実現している。

 
昔からあるものに価値を加えて、新しい製品を造るという取り組みは今に始まったことではない。むしろ日本人の得意分野と言えるかもしれない。造る方も使う方も、義務感からではなく楽しみながら暮らしに取り入れていけば、アップサイクルはもっと浸透する可能性がありそうだ。

 

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廃棄タイルを食器へアップサイクル。バスルーム事業と食器事業を展開するニッコーが発売

【参考サイト】アップサイクルとは? リサイクルやリメイクとは違う、SDGsへの新たなアプローチ

【参考サイト】Defining Upcycled Foods

【参考サイト】Upcycled Food Association

【参考サイト】環境省:SUSTAINABLE FASHION

【参考サイト】食品ロス量が推計開始以来、最少になりました

【参考サイト】SDGs|目標12 つくる責任つかう責任|食糧が余っているのに飢餓!?