パートタイムヴィーガンとは

パートタイムヴィーガンとは、週に数回や月に数回など期間限定で、動物性食品を食べない「ヴィーガン」の食生活を送ること。環境や健康への意識が高まると共にヴィーガンへの関心が高まる昨今、気軽にヴィーガンを始める方法として推奨されている。

肉や魚はもちろん、卵や乳製品を含む一切の動物性食品を食べないヴィーガンの厳格な食生活はハードルが高いが、パートタイムヴィーガンは自分で期間を決めて宣言し、動物性食品を控えるため、普段肉や魚を好んで食べる人にとっても始めやすい。

ヴィーガンが推奨される理由

世界的なヴィーガン人口は年々増加傾向にある。アレルギーや宗教上の理由だけでなく、アニマルウェルフェアの観点や、深刻化する気候変動や環境問題の解決策のひとつとされていることから、ヴィーガンを選択する人も少なくない。

気候変動と食には強い関係性があり、特に動物性食品が及ぼす影響は大きい。動物を家畜として育てる過程ではかなりの環境負荷が発生しており、FAO(国際連合食糧農業機関)によると、世界中で排出される温室効果ガスの約14%が家畜に由来するものだという。

また、イギリスのオックスフォード大学マーティンスクールの研究者の発表によると、世界全体が肉類を減らし、果物や野菜を中心に摂取する食生活に切り替えることで、2050年までに最大800万人の命を救うことができるという。また、同時に温室効果ガスの排出を3分の2削減し、肥満解消による健康改善や1兆5000億ドルの気候変動の被害回避につながることも明らかとなった。

日本国内におけるヴィーガンの現状

プラントベースの情報サイト「Vegewel」の運営を行う「株式会社フレンバシー」が2021年12月に実施した調査の結果によると、日本のヴィーガン人口は2.2%、ヴィーガンを含むベジタリアンは5.1%だった。また、「意識して肉や魚など、動物性食品を減らすことはありますか?」という質問に対しては、19%が「ある」と回答し、ヴィーガンまではいかないものの、植物性の食生活を意識している人がいることも明らかとなった。

また、同社が2019年に公開した資料によると、日本を訪れる外国人観光客のうち5.7%がベジタリアンであると推計されている。コロナ禍による入国者数制限が緩和され始め、多くの観光客が見込まれる今、フードダイバーシティに対する飲食店の対応が求められている。

30日間ヴィーガンを試すプログラム

イギリスのヴィーガン協会は、30日間限定でヴィーガンの生活を試すこと推奨しており、その体験をサポートするプログラム「ヴィーガンプレッジ」を実施。同プログラムを通して毎月1,000人以上の人々がヴィーガン食のスタートを切っているという。

このプログラムでは、フォームからEメールでサインアップすると、30日間ヴィーガンの食生活に関するあらゆる側面からアドバイスを受けられ、ヴィーガン食を本格的に実践できるようサポートを受けることができる。今後こうした取り組みをきっかけに、本格的にヴィーガンになる人も増えそうだ。

今後、ヴィーガン人口のさらなる増加が予想される一方で、飲食店やスーパーマーケットにおいて、ヴィーガンの選択肢が少ないことは日本国内での普及に歯止めをかける可能性がある。

日本では海外と比べると、ヴィーガンの食生活はまだ広くは浸透していないが、世界的にフードダイバーシティーのニーズが高まっている昨今、ホテルやレストランにもさらに積極的な対応が求められるようになるだろう。

【参照サイト】The rise of the part-time vegans
【参照サイト】Take the Vegan Pledge
【参照サイト】地球温暖化ガスの14.5%、家畜に由来 FAO報告書
【参照サイト】第3回日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査 by Vegewel【21年12月】
【参照サイト】Plant-based diets could save millions of lives and dramatically cut greenhouse gas emissions
【参照サイト】2019年の訪日外国人ベジタリアン〜人数と市場規模〜