グリーンウォッシュとは
グリーンウォッシュ(グリーンウォッシング)とは、企業が実際よりも環境に配慮した商品と見せかけるマーケティング手法のこと。ごまかすという意味のホワイトウォッシュのホワイトを、環境に配慮するという意味のグリーンに差し替えた造語で、1980年代に環境保護主義者のJay Westerveldのエッセイで初めて使われた。
視聴者測定データ分析会社のNielsonが2015年に実施した調査では、66%以上の消費者が環境に優しい商品により多くのお金を払いたいと回答。50%以上が、購入前に商品が持続可能かどうかを検討すると回答。環境に配慮した商品かどうかは、売れ行きに大きく影響することがわかる。そのため、グリーンウォッシュは企業によって故意に行われたり、マーケティング担当者の誤解から生まれることもある。
たとえ意図的ではなくても、あたかも環境に配慮した商品であるような誤った情報を広めて消費者を混乱させたり、本来の持続可能な取り組みから目を逸らさせてしまう罪は重い。ブランドイメージを大きく損なう可能性があり、中には訴訟に発展する場合もあるので、企業や店舗は注意が必要だ。
グリーンウォッシュの事例
様々なグリーンウォッシュの事例があるが、その一部を以下に紹介する。
エシカルなコーヒーの調達やマイタンブラーの推奨など、数々のサステナブルな取り組みで知られるスターバックス。2018年、プラスチックの無駄使いを避けるためにストローのない蓋を導入した。しかし、従来の蓋とストローを使用するよりも、新しい蓋の方がプラスチックを多く使用していることが判明。世界中のプラスチックのリサイクル率はわずか9%しかないことからも、批評家から非難を受けた。新しい取り組みを環境に優しいと宣伝しながら、マイナス効果を無視する隠れたトレードオフが発生していた事例だ。
自社製品の肯定的な事実を強調しながら、否定的な事実については意図的に言及を避ける選択的な情報開示をするケースもある。世界的飲料メーカーのコカ・コーラは、プラスチックが海に廃棄されることがないよう、2030年までに全てのペットボトルを回収し、新しいボトルにリサイクルすると宣言。環境団体Earth Island Instituteは2021年6月、同社が世界最大のプラスチック汚染企業であるにもかかわらず、環境に優しいと虚偽の宣伝をしていると提訴した。
ファストファッションブランドのH&Mは、2019年に「Conscious」と題した独自のラインを発表。サステナブルやグリーンなど、環境に優しいイメージを暗示する言葉を用いたマーケティング手法が、ノルウェーの消費者庁から誤解を招くと批判された。一方、ファッション非営利団体ReMakeによると、世界で廃棄される繊維製品のうち、再利用やリサイクルされるのはわずか20%に過ぎないという。このように、ごく一部の取り組みを誇大に宣伝し、企業が環境に与える全体的な負荷から目を逸らせる事例もある。
一般的にグリーンウォッシュの多くは故意に消費者を騙そうとしたものよりも、客観的な視点が足りなかったがために意図せず起こっている場合の方が多いといわれている。次の項では、自社の取り組みをグリーンウォッシュとみなされないためにはどのような点を気をつけるべきかを紹介したい。
グリーンウォッシュとみなされないために
企業や飲食店が環境に優しい商品やサービスをアピールする際は、グリーンウォッシュとみなされないように下記を注意する必要がある。
- 個々の製品がどれだけ環境に配慮しているかや、企業全体の持続可能性の取り組みについて、正直に消費者に伝える。そのスケジュールや目標は、具体的に示す。
- 消費者にわかりやすい明確な表現を使用する。例えば、「オーガニックコットン使用」ではなく、「オーガニックコットン70%」と、具体的な測定単位を使用する。
- 第三者機関の認証や、信頼できるデータで裏付けされた持続可能性を表記する。データは最新の情報をアップデートし、ホームページ等で随時更新する。
- 広告やパッケージの画像で誤解を与えないように留意する。緑色や自然のイメージを使用して、過剰に商品や企業が環境に優しいことを暗示しない。
【参照サイト】 A Guide to Greenwashing and How to Spot It
【参照サイト】 What Is Greenwashing?
【参照サイト】 10 Companies and Corporations Called Out For Greenwashing