フレキシタリアンとは

フレキシタリアンとは、「フレキシブル」と「ベジタリアン」を掛け合わせた造語で、柔軟な菜食主義者ということ。つまり植物性食品を中心としつつ、ときには肉や魚、卵やチーズなども食べるというスタイルを取る人のことを指す。「セミベジタリアン」や「ゆるベジ」などとも呼ばれる。

厳しい制限を自らに強いず、それぞれに線引きが委ねられたフレキシタリアンは、ベジタリアンの中でもハードルが低く始めやすい。肉や魚を完全に排除するには、外食など日常生活で不便を感じる場面が増えるが、柔軟さを取り入れたフレキシタリアンなら状況に応じて対応できるのがメリットだ。

ヴィーガン・ベジタリアンとの違い

ヴィーガンとベジタリアンは共に菜食だが、食べない食材の範囲や頻度で棲み分けがされる。

ヴィーガンは完全菜食のことで、卵や乳製品、ハチミツも含め動物性食品をいっさい口にしない。
一方ベジタリアンは広い意味で菜食のことを指すが、その内容は多岐に渡る。例えば卵と乳製品を口にするベジタリアンは「ラクト・オボ・ベジタリアン」、五葷(ごくん)を除いたヴィーガン食を「オリエンタル・ベジ」と呼ぶ。五葷は仏教における禁葷食(きんくんしょく)に含められる、 臭いの強い5種類の野菜、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、タマネギ、ネギのことを指す。
ほかにも魚を食べるか食べないかでも別のカテゴリーがあり、フレキシタリアンはそれらをその時々で選べるため自由度が高い。

菜食を選ぶ理由

人々が菜食を選ぶ理由はさまざまだが、主に「自分や家族の健康のため」「環境保護のため」「倫理的なアニマルウェルフェアのため」という3つの理由が考えられる。
また同じヴィーガンであっても、動物の命を尊重することから実践することを「エシカル・ヴィーガン」、食事面のみでの実践を「ダイエタリー・ヴィーガン」と呼ぶ。このことからもヴィーガンやフレキシタリアンを実践することは食の選択に留まらず、生き方の指針でありその人が掲げるフィロソフィーとも言えるのではないだろうか。

さらにフレキシタリアンなど菜食を実践することは健康、環境保護、アニマル愛護など選ぶ理由や目的がそのままメリットになっている。

こちらの記事では、その理由が詳しく書かれている。

ベジタリアン(菜食主義)とは

フレキシタリアン人口調査

ドイツ・ベルリンのヴィーガン食品を販売するメーカー「Veganz」の行った2020年の調査では、7ヶ国・2,600人以上の回答者のうち、22.9%がフレキシタリアンだということが分かった。これに対しヴィーガンは1.9%という結果に。つまり動物性食品を完全に排除することは難しいが、肉を食べる機会や量を減らすことは、より実践しやすいと言える。

また日本では、ヴィーガングルメの情報を提供する情報サイト「Vegebowl」を運営する株式会社フレンバシーが20代から60代の2,413人を対象に行った2021年の「第3回日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査」において、自身が取り組んでいる食生活について、フレキシタリアンは、全体の15.8%に達している。ベジタリアンもしくはヴィーガンと答えた人は全体の5.1%だった。

近年、ヴィーガンが普及するにつれ、ヴィーガン向けの料理や調味料などが多く販売されるようになっている。ヴィーガンは「健康志向」に紐づけられがちだが、ヴィーガンと安心安全はイコールではない。つまり肉や魚、卵・乳製品などを口にしないことによる体へのポジティブな影響はあるかもしれないが、ヴィーガン向け商品には、化学保存料などをはじめとした食品添加物が大量に含まれている可能性があるということも知っておく必要がある。野菜や米が主な食材だとしても、それらの栽培方法などに農薬がたくさん使われていることもある。

フレキシタリアンやヴィーガンなどのタイトルはあくまで、食の嗜好でありライフスタイルをも表すものだが、その質はそれぞれの優先順位によって大きく変わってくることがわかる。

限られた人だけが厳格なヴィーガンを実践するよりも、より多くの人が週に一食でも菜食を実践する方が、環境問題など現在山積みになっている問題が改善していくのではないか。各個人に委ねらた自由度の高いフレキシタリアンは、その入り口として相応しいといえるだろう。食の選択が当たり前になることで、飲食店のフードダイバーシティ(食の多様性)への対応も避けて通れないものになりそうだ。

【参考サイト】第3回日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査 by Vegewel【21年12月】
【参考サイト】日本エシカルヴィーガン協会
【参考サイト】Key facts and findings
【参考サイト】VEGANZ NUTRITION STUDY 2020
【参考サイト】IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat