フェアトレードとは

フェアトレードとは、途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」のことで、直訳すると「公平な貿易」を意味する。

フェアトレードが必要な理由

フェアトレードが必要な理由は、厳しい労働環境を改善させたり、児童労働により教育を受けられない子供たちをなくしたりするためだ。世界では約1億6,000万人の子供たちが児童労働しているといわれている。教育を受けられなければ将来的に安い賃金の仕事しかできなくなり、家庭を持った場合に安い賃金のまま家族を養うことができず、必然的にその子供たちも働かざるを得ない状況になる。こうして貧困の連鎖が繰り返される。

コーヒーやカカオ豆などの換金作物においては、国際市場で買取価格が決められている。買い手側からすると、気候変動の影響を大きく受け、コーヒーやカカオ豆が不作だったとしても買取価格が例年と大きく変動しないため安定的に購入できるが、生産者側からすると原価割れを引き起こす可能性があり、結果として不当に安い賃金で働かされることになってしまう。

フェアトレードの仕組み・基準

フェアトレード認証は、生産者に適切な賃金が支払われていることを第三者である認証機関が監査・認証するしくみだ。生産者一人ひとりが作った農作物や製品に対して認証がつくのではなく、生産者組合ごとに認証される。そのため、生産者組合が生産性向上のために機材を購入することができたり、学校や病院を建設したりと、生産者全体の利益のために有効活用される。

フェアトレード認証マークは3種類ある。①製品に対する認証、②団体に対する認証、③独自基準での認証だ。

製品に対する認証

1つ目の認証は、製品がフェアトレード基準を遵守していることを証明するもので、第三者機関による定期監査を実施する。最も有名なのが国際フェアトレード基準だ。国際フェアトレード基準は、開発途上国の小規模生産者・労働者の持続可能な開発を促進することを目指して設計され、生産コストをまかない、かつ経済的・社会的・環境的に持続可能な生産と生活を支える「フェアトレード最低価格」と生産地域の社会発展のための資金「フェアトレード・プレミアム(奨励金)」を生産者に保証している。

団体に対する認証

2つ目の団体に対する認証ではフェアトレード団体マーク(FTO)で、団体広報物にフェアトレードであることを掲載することができる。特に「WFTO(World Fair Trade Organization)」は事業活動全体がフェアトレード基準を満たしている団体のみ加盟できるため、相当に厳しい基準が設けられている。なお、製品への認証ラベルの掲載には別途認証の取得が必要である。WFTOに加盟する団体の例として、People Treeが挙げられる。

独自基準での認証

最後に、生産者と直接取引し、各企業や団体の独自の基準によってフェアトレードであることを公表するものだ。スターバックスは、常時30種類ほど提供するコーヒー豆のうち、「フェアトレード・イタリアンロースト」のみ国際フェアトレード認証を受け、その他はスターバックス独自の認証プログラム「Coffee and Farmer Equity (C.A.F.E)プラクティス」でフェアトレードに取り組む(2021年9月現在)。2015年にスターバックスで取り扱うコーヒー豆が「倫理的な調達」を99%達成したことを公表した。

これまでのフェアトレードの実績

フェアトレード・インターナショナルが2020年に公表した年次報告書によると、約1,700万人(72ヶ国)の農家や労働者がフェアトレード認証を受ける製品を生産し、フェアトレード製品は145ヶ国で販売されている。

インドのある村では女性がコンピューターを学ぶ場がなかったが、インドの米生産者組合がフェアトレード・プレミアムによって地域の女性たちのためにコンピューターセンターを開設した。マダガスカルのバニラ生産者組合では、サイクロンで損壊した橋をプレミアムによって再建できたという。

フェアトレードビジネスの課題

フェアトレード認証は、市場価格よりも高くなってしまう点が挙げられる。たとえば100円のチョコレートがあったとして、フェアトレード認証付きのチョコレートは同じ量で300円だったとする。差額の200円はすべてフェアトレード最低価格やフェアトレード・プレミアムとして生産者の取り分になるのではなく、認証費用の分も含まれているのだ。企業の年間総売上高によって認証費用は変動するが、初回認証費用は5~20万円、ライセンス料は商品の1%程度、年間ライセンス認証料は3~5万円かかる。追加産品ごとに別途追加料金もかかる。

元々、「安く買い叩かれた分を補填してプレミアムを付与しよう」というのがフェアトレード・プレミアムであり、買取価格が上がったからといって品質も上がることは保証されていない。消費者からすると、100円とフェアトレード認証付きの300円のチョコレートがほぼ同じ品質だったとしたら、つい100円の方を選んでしまう人も少なくない。消費者の意識に委ねるだけでは難しい部分もある。

各企業や団体の独自基準によってフェアトレードであることを公表する(1-3. ③)場合、第三者が介入して監査することがないため、透明性に欠ける。中には国際フェアトレード基準より厳しい基準を設けてフェアトレードに取り組む企業や団体もあるが、一見すると分かりづらく、企業や団体によってばらつきがある。加えて、何がフェアトレードか明確に法律で定まっていないことから、どんな基準でフェアトレード商品を販売しても規制や罰則を受けることがない点も問題として挙げられる。

飲食店によるフェアトレード商品導入事例

cafe rest montrose

広島県福山市のビジネスホテルの朝食レストラン「cafe rest montrose(カフェレスト モンローズ)」では、持続可能な農業を推進する「レインフォレストアライアンス認証」の付いたコーヒーを提供し、店内には生産者のストーリーと認証マークが描かれたポップが置かれている。また、使用する野菜の7割以上が福山市周辺の地元の農家から直接調達したもので、残りの3割の野菜もすべて国産だという。

家庭のキッチンに近い朝食を。地域を巻き込むビジネスホテルのレストラン「モンローズ」【FOOD MADE GOOD#2】

KIGI

東京都千代田区にある和食料理屋「KIGI」では、環境に配慮した取り組みの一環として、フェアトレード商品を取り揃えるよう切り替え始めている。フェアトレード商品を仕入れても最低ロットが大きいために使い切れず食品ロスになる可能性があるため、業務用商品の製造を依頼しているという。

リーダーも社員も同じSDGs初心者だから。皆で”学びながら”サステナブルな飲食店を目指す「KIGI」の奮闘記

フェアトレードやエシカルな想いを持ったカフェ、レストランだけで支払いができる電子マネー「フェアトレードコイン」を活用する例もある。加盟店は全国各地にあり、加盟店であればフェアトレードコインを自由に使うことができる。

【参照サイト】国際フェアトレード基準|フェアトレードとは?|fairtrade japan|公式サイト (fairtrade-jp.org)
【参照サイト】フェアトレードとは? 3種類のフェアトレードと児童労働の関係 | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース) (acejapan.org)