エシカル消費とは

エシカルとは、日本語で「倫理的な」「道徳上の」という意味。つまり多くの人が考える社会的な手本となる良識的な考え方や行動のことで、法的な縛りのない社会的規範のこと。

対してエシカル消費とは人や社会、環境に配慮した消費活動を指す。消費者それぞれが社会的課題の解決を考慮し、消費活動を通してそうした課題に取り組む企業や生産者を応援することを意味している。

SDGsの「つくる責任 つかう責任」

SDGsとは2015年に国連サミットで決められた、2030年までの達成を目指す国際的な開発目標のこと。17の世界的ゴール、169の達成基準、232の指標から成り、持続可能な社会の実現を目標としている。

17の目標の12番目にある「つくる責任、つかう責任」は、生産者と消費者が心がけたい身近な目標のひとつと言える。つくる側(生産者)は原料選びから生産過程、そして使用後において人と環境に配慮していること。そして消費者はそういう取り組みを積極的に行う生産者から買うことが、その基本となるアクションで、まさにエシカル消費のベースとなる考えになる。

なぜエシカル消費が必要なのか

現在、特に日本をはじめ先進国と呼ばれる諸外国では大量生産、大量消費型の消費活動が中心となっている。それは世界中で大量の廃棄物を発生させ、不平等な雇用形態を生み、多くの社会・環境問題へ繋がっているということ。

エシカル消費を考える際には、その商品が作られるまでの流れや背景を意識したい。特に毎日着る服の原料となるコットン、チョコレートの原料となるカカオ、紅茶やコーヒーなど、日々消費する多くのものは、途上国で作られている。その生産背景に労働搾取や児童労働、環境破壊などの問題が潜んでいないだろうか。海外から輸入している商品なのに、あまりに安価で販売されているものはその可能性を含んでいると言える。

私たちは誰もが消費者なので、エシカル消費は日々の選択を変えるだけでできる、とても身近なサステナブルアクションなのだ。思いを込めて丁寧に作られたものや伝統的な商品と、設定金額のバランスを今一度見直してみたい。

エシカル消費への意識

電通はエシカル消費全体に対する産業別の認知度・共感度・実践意欲から、今後の意向・行動を分析した調査レポートを公開している。

全国10~70代の男女計1,000人を対象に行った「エシカル消費 意識調査2020」によると、5割以上が「エシカルな商品・サービスの提供は企業イメージの向上につながる」と思っているが、「エシカル消費という言葉を知っている人は4人にひとり」という結果。また新型コロナの影響により約3割がエシカル消費を意識するようになったことが明らかになった。

また、この意識調査では食品業界(11業種中)が様々な分野で上位に入っている。例えば「エシカルな取り組みをすでに行っている印象の強い業界」の一位に食品業界(38.1%)が位置しており、二位の自動車業界(23.4%)を大きく上回る結果に。そして実際に「購入経験の多い産業」「購入意欲が高い産業」はともに食品であった。
さらに、エシカル消費のなかで人々の認知、共感、実施意向の全てにおいて、まだ食べられるのに破棄されてしまう「食品ロス」が一位。認知としては「ベジタリアン、ヴィーガン」などの食生活が入ったものの、共感や実施意向は低かった。生活に取り入れたい実施意向は、食品ロスに次いで「地産地消」。食品を無駄にしない考えには共感し取り入れたいと思うものの、食生活を変えるほど現実的ではないようだ。

エシカル消費の課題

「エシカル消費 意識調査2020」からはまた、消費者のエシカルな商品の購入条件は「価格」と「商品メリット」への納得感だということがわかる。消費者からすると「同じ商品ならば安い方がいい」という考えは理解できる。ただその商品の購入が環境改善に加担できるものや、生産者の取り組みを応援するものであるなど、前向きな何かに繋がることを明確に伝える必要がありそうだ。

実際に購入条件は「価格が同じだったら」(35.3%)、「メリットがわかったら」(34.5)が上位となっている。

ただどうしてもエシカルな商品の価格は、一般的な商品より高めの設定になっているため、その理由が求められるだろう。例えば、フェアトレードはエシカル消費のひとつだが、通常料金より上乗せされた金額はすべてが生産者へ回されるわけではなく、フェアトレード認証費に充てられることなどから、値段の上乗せは避けられない。ただ長い目で見ると、そうしたフェア(対等)な取引が主流になるメリットは大きいだろう。その理由を知り、納得することができれば、エシカルな商品も選択肢のひとつに加わってくるのではないだろうか。

エシカル消費の今後

新型コロナウイルス対策の自粛期間により、家で過ごす人が増えたことから、30.9%がエシカル消費に対して「意識が高まった」と回答している。その一方で、実際に行動に移している人は6.5%にとどまっているということに、今後の課題が見えてくる。

エシカル消費が「いいこと」なのは頭でわかっていても、そこに個人の暮らしとの接点や、メリットが見い出せ初めて行動に移すことになるからだ。

いずれにせよ、人々のエシカル消費への関心が高まりつつあるのはポジティブな変化だろう。こうした消費行動の変化はまず私たちそれぞれが関心を持ち、知ることから始まっていくはずだから。

【参照サイト】消費者庁
【参照サイト】電通、「エシカル消費 意識調査2020」を実施