培養肉とは

培養肉とは、鶏や牛等の家畜の細胞を、体外で組織培養することによって得られた肉のこと。他にも、「試験管ミート」「クリーンミート」「バイオ肉」「細胞肉」などと呼ばれる。家畜を飼育するのに比べ、地球環境に与える負荷が低く、広い土地の必要がないなどの利点があるため、食肉の新たな選択肢のひとつとして世界中で注目されている。

2013年には、オランダのマーストリスト大学が細胞培養技術により培養ミンチ肉の開発に成功。当時、ハンバーガー1個の開発費用が約25万ユーロ(約3,000万円)と高額であったことが話題となった。以後、いかにコストを下げ、実際の食肉に味や食感を近づけるか、世界各地で研究開発が進む。また、食肉のみならず、海産物や牛乳などの細胞培養に着手する企業もある。

また、家畜をと殺することのない培養肉もプラントベースフード(植物性食品)と同様、従来の食肉に代わる「代替肉」に含まれる。

培養肉の開発例

世界中でフードテック企業への多額の資金提供が相次ぐ中、培養肉の開発研究が急激に進められている。その一部を、下記に紹介する。

  • 米国のEat Justは、ウコンと緑豆のタンパク質を使った植物性代替卵「Just Egg」を開発したフードテック企業。同社が2020年に開発した培養肉「GOOD Meat」は、世界で初めてシンガポール政府から培養肉の販売承認を取得。同年12月には、シンガポールで販売が開始された。

 

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  • 前述の世界初の培養ハンバーガーを開発したマーストリヒト大学のマーク・ポスト博士が2016年に共同創業したのが、オランダのMosa Meat。製品開発と多額の資金調達を経て、2022年に、ヨーロッパへの市場参入を目標とする。

 

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  • 2015年に設立したMemphis Meatsは、細胞培養によるミートボール、チキン、ダックの開発に着手。米国大手食肉加工会社タイソン・フーズや、農業食品会社カーギル、実業家のリチャード・ブランソンやビル・ゲイツからも多額の投資を受ける。2021年にUpside Foodsに社名を変更し、培養鶏肉を市場に出す計画中。培養シーフードの開発にも取り組む。

 

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  • 日清食品ホールディングス株式会社と東京大学大学院情報理工学系研究科の共同研究グループは、2022年3月に日本初の、産学連携の培養肉研究において食べられる培養肉の作製に成功したと発表。2024年中に培養ステーキ肉の基礎技術を確立する目標を掲げる。
  • フォアグラの培養に着手する企業も。2019年に創業されたフランスのGourmeyは、遅くとも2023年中には、高品質の培養フォアグラの商業的な発売を見込む。日本でも、2015年に設立されたIntegriCultureが、近年中の培養フォアグラや加工肉の他、2025年の培養牛肉の市場投入を目指す。

培養肉が示唆する可能性

このように世界中で関心が高まっている培養肉。目覚ましい進展を遂げる細胞培養技術が、ヒアルロン酸や毛皮、木材などにも広がることで、環境問題への更なる貢献も期待されている。一方で、培養肉が消費者に好意的に受け入れられるのかは未知であり、法律制定などの課題も残る。公益財団法人日本食肉消費総合センターが公表している2019年の調査では、15.8%の消費者が「不安なので食べたくない」と回答している。また、たった一つの細胞から培養できる技術は、将来的に何らかの形で悪用されるのではという懸念も少なくない。日本や世界各国が、今後どのように培養肉に付随する問題に対応していくのかが注目される。

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【参照サイト】 「食肉に関する意識調査」報告書