サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーとは今までの経済モデルにおいて廃棄されていたものを、価値ある資源として捉え直すこと。そして再び生産のプロセスに戻すことで資源を循環させ、環境負荷を増やすことなく経済成長を実現しようという考え方や活動だ。日本語では「循環経済」と訳される。

具体的には、従来の3R(Reduce/リデュース、Reuse/リユース、Recycle/リサイクル)の取り組みに加え、今までであれば廃棄していたものに付加価値を生み出す取り組みを指す。さらに資源や製品の価値を高め、資源消費を減らし、廃棄物を生まない社会を目指すものだ。

【左】リニアエコノミー(直線経済)【右】サーキュラーエコノミー(循環経済)

 

循環型社会においてのもの作り

3Rに加えて、「アップサイクル」という概念がある。使い終わった製品を原料にまで戻し、再び製品を作るリサイクルと違い、本来の物質の特徴を生かしながら新しい製品に生まれ変わらせる取り組みのことだ。

さらに最近では、廃棄物を発生させないことを前提とした「サーキュラーデザイン」も注目されている。製品を長く使うことを前提とし、耐久性の高い製品を作るだけでなく、修理しやすいように設計・デザインすることも含まれる。

 

導入された背景

サーキュラーエコノミーを世界で主導しているのはEU(欧州連合)。EU委員会は2015年の12月に採択した政策「サーキュラーエコノミーパッケージ」を軸とし、持続可能な経済成長や雇用創出など、EU共通の枠組み構築を発表した。

その背景には資源やエネルギーの枯渇、廃棄物量の増加など、気候変動を始めとする環境問題の深刻化が世界的な課題となっていることがある。そのため従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済活動から、サーキュラーエコノミーへの移行を中長期的に進めていくことが不可欠だと考えられている。

 

サーキュラーエコノミーの目的

サーキュラーエコノミーとは逆の大量生産・大量消費型の経済活動は「リニアエコノミー(直線経済)」と呼ばれ、気候変動問題、天然資源の枯渇、生物多様性の破壊など様々な環境問題を引き起こす可能性がある。年々深刻化するこれらの課題から脱却することが、サーキュラーエコノミーの主な目的のひとつ。

気候変動などの環境負荷を低減すること、そして雇用促進を含む経済効果という2つの側面を補充し合う循環型社会は、今後の事業活動の持続可能性を高めるカギになるだろう。実際に新たなビジネスモデルが国内外で進んでいる。

 

日本と循環型社会

EU主導で導入が進むサーキュラーエコノミーだが、日本はすでにそのポテンシャルを秘めていると言われている。昔から日本人はものを大切に扱う精神性を持ち、循環型の暮らしを営んでいたからだ。例えば江戸時代には様々な物に対し、専用の修理職人が存在した。日用品が壊れると何度も手直しして使い続け、着物や帯などは風呂敷やお手玉など様々な日用品にリサイクルした後、土に還されるというサイクルが成り立っていたのだ。さらに人口の多かった江戸の排泄物は、農村で堆肥として再利用・資源化されていたのだとか。

現代の視点から見ても理想的な環境ではないだろうか。日本人が本来持っている「もったいない」精神や習慣を取り戻すところから、循環型社会へと近付けるのかもしれない。

 

取り組みの実例

サーキュラーエコノミーへの移行を促進する上で、作り手側は主体的に製品設計から廃棄までを想定し、製品や業界の仕組みを作っていく必要がある。

サーキュラーエコノミーに取り組んでいる、国内外の一例を紹介する。

 

Apple(アップル)

アメリカのテクノロジー企業アップルでは、2030年までに製品製造における炭素排出の影響を実質ゼロにすると目標を掲げており、すでに企業活動は全て100%再生可能エネルギーで運営されている。さらに2020年、究極の目標として「地球から何も奪うことなくApple製品を作り上げること」だと宣言し、原料選びや製造過程において改善を続けている。

ユニクロ

大手アパレルブランドのユニクロは2020年、回収したユニクロ・GUの服から再び服を作る循環型プロジェクト「RE.UNIQLO」を始動。回収した服から再び服を作る循環型の生産・消費サイクルの構築を目指し、完全リサイクルのダウン素材の「リサイクルダウンジャケット」など、様々な商品が生み出されている。

MITUKAN・ZEMB(ミツカン・ゼンブ)

10年後の人と社会と地球の健康のために始動した新たな食のプロジェクト「ZENB」。トウモロコシの芯や枝豆のさやといった、素材をまるごと原材料として使うことで資源を有効活用し、同時に廃棄物を減らす取り組みだ。エレン・マッカーサー財団が立ち上げた「フード・イニシアチブ(Cities and Circular Economy For Food)」に日本企業で唯一参画。

ニッコー株式会社

table sourceを運営する株式会社ニッコーは、1908年に石川県金沢市で創業した陶磁器メーカーだ。社内で循環型の陶磁器づくりを推進する「NIKKO Circular Lab」を立ち上げ、「crQlr Awards (サーキュラー・アワード)」にも応募するなど積極的に取り組んでいる。同アワードでは2名の審査員より賞を受賞した。また、原材料の調達から製造、物流、利用、回収にいたるまでサーキュラーエコノミーの原則に則ったものづくりを目指している。

捨てられる食器から作られた肥料「BONEARTH(ボナース)」(ニッコー株式会社)

 

取り組みを共有するアワード

国内初の循環型経済をデザインするグローバル・アワード、「crQlr Awards (サーキュラー・アワード)」が2021年に誕生。「名声ではなく、行動のためのアワード」 「直線型ではなく循環型の評価を行う」「グローバル視点を獲得する機会」という3つの軸の元、世界中からプロジェクトを募集している。このようなアワードが生まれたことからも、サーキュラーエコノミーへの取り組みに注目が集まっているのは間違いない。

【関連記事】 陶磁器メーカーのニッコー、国内初の循環型経済をデザインするグローバル・アワードで二部門受賞

 

サーキュラーエコノミーの今後

サーキュラーエコノミーは「地球を守る」というテーマからも環境問題への対策の印象が強く、特に国内ではSDGsや企業のCSRの延長として捉えられることも少なくない。実際には持続可能な経済システムで、一時的な対策やトレンドではなく、今までの大量生産・大量消費の経済モデルからの根本的なシフトとも言える。

国内外のロールモデルや事例が増え、より多くの人に知られていくことで、世界は変わる可能性を大きく秘めているのではないだろうか。

【関連記事】

レストランのサーキュラーエコノミーを考える(1)基礎編

【関連記事】 NIKKO Circular Lab/ニッコーの取り組むサーキュラーエコノミー

【参考サイト】環境省:第2節 循環経済への移行
【参考サイト】経済産業省:「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」を取りまとめました
【参考サイト】apple
【参考サイト】RE.UNIQLO
【参考サイト】ZEMB
【参考サイト】国内初!循環型経済を目指すアイデアやプロジェクトを募集「crQlr Awards (サーキュラー・アワード)」募集開始