カーボンフットプリントとは
カーボンフットプリントとは、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算し、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みのこと。これにより、環境負荷を定量的に算定し、消費者に対して情報を「見える化」することで、事業者がサプライチェーンにおいて更なるCO2排出量削減を推進することを目的としている。また「見える化」された情報を用いて、消費者がより低炭素な消費生活へ自ら変革していくことも期待できる。
導入された背景
カーボンフットプリントが導入された背景には、地球温暖化の危機がある。世界の平均気温は上昇を続けており、このまま放置すると海面上昇や干ばつ、洪水などの異常気象のほか、生物多様性の減少などが予想される。この地球温暖化の原因となる温室効果ガスの主成分は二酸化炭素であり、工業化に伴って急激に増えた人為起源の二酸化炭素の排出量を削減することが、現在世界全体の急務となっている。このため、日本政府も含め世界の多くの国々が、2050年までにカーボンニュートラル(脱炭素)を実現することを宣言しており、その達成の一助として導入された。
なお、このカーボンニュートラルとは、人為起源のCO2の排出量と、自然作用や人工的な手段によるCO2の吸収量を等しくさせて、排出を実質ゼロにすること。
カーボンフットプリントを減らすために、飲食店が取り組めること
CO2排出量の算出
まずは、どこで無駄や非効率なエネルギー利用が起こっているかを見直すことが重要だ。環境省・経済産業省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームによると、CO2排出量の算出には店舗から出る温室効果ガスだけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計したサプライチェーン排出量が用いられる。サプライチェーン排出量は以下の3つのScope(スコープ)の合計になる。
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

グリーン・バリューチェーンプラットホーム|環境省・経済産業省より
温室効果ガスの削減
Scope1:ガス
・熱伝導のいい調理器具に切り替え
・オーブンを使う際はできるだけまとめて調理
・レンガの薪窯を採用
Scope2:電力
・エアコンや厨房機器を省エネのものに交換
・LED照明を導入
・エアコンの温度調整や節電のスタッフへの注意喚起
・再生可能エネルギーの導入
Scope3:間接排出
・植物由来の原材料を選定
・食品ロス削減
・廃棄物を削減
・地産地消を積極的に採用
・従業員の通勤は、車ではなく公共交通機関や自転車通勤を推奨
フードマイレージとの違い
近い言葉でよく耳にすのが「フードマイレージ」だが、これは商品の輸送の部分のみにかかる温室効果ガスの発生量を可視化したもので、それ以外の部分を考慮していない。科学誌「サイエンス」に2018年に掲載された論文では、食料の輸送に起因する温室効果ガスの排出量は、ほとんどの食料において10%以下だったと発表された。このことからわかるように、温室効果ガスの発生量はフードマイレージでは捉えきれず、その弱点を補うために作られた指標がカーボンフットプリントと言える。
カーボンフットプリントをめぐる世界と日本の動き
海外ではすでに食品や食事メニューの気候変動への影響度を示す計算ツールは開発・公開されている。牽引しているのがイギリスFoodSteps社で、2021年8月には1,000種類以上の食材の環境影響などを示した同国初のデータベースを開発し、カーボンフットプリントを算出するサービスを開始した。このサービスにより料理や食品の環境負荷を計算し、発行されたカーボンラベルを用いて、気候変動に配慮した料理や食品であることを消費者に伝えることができる。
一方で、日本ではこれまで信頼あるデータや計算ロジックに基づく計算結果は公開・流通されていなかった。しかし近年少しずつ動きが見え始めており、2021年12月には一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)が、食事メニューのレシピをもとに21品目のカーボンフットプリントを算出した「炭素版カロリー表」を公開した。
カーボンニュートラルの今後
世界に比べて遅れてはいるものの、日本でもカーボンニュートラル実現に向けて自治体や企業ごとに具体的な対策が取られるようになった。飲食業界においても2020年にスターバックスが、CO2、水、廃棄物のフットプリントを半減させる環境目標を正式に決定し、地球から利用する資源の量よりも還元する量を増やす「リソースポジティブ」を実現すると宣言している。気候変動への対策が急務となるなか、カーボンニュートラルへの取り組みは業界問わず必須となりそうだ。
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