カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとはCO2の排出量をプラス、吸収量をマイナスとして実質ゼロの状態になることを指す。日本政府は、2020年10月に2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにし、カーボンニュートラルを目指すことを宣言している。この背景には、2015年に、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けてパリ協定が採択されたことがある。パリ協定は気候変動枠組条約に加盟する196カ国全ての国が削減目標・行動をもって参加することをルール化した。世界共通の長期目標として、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」「21世紀後半にはカーボンニュートラルを実現すること」を掲げている。

なぜカーボンニュートラルに取り組むのか

世界の平均気温は2017年時点で、工業化以前(1850~1900年)と比べ、既に約1℃上昇したことが示されている。近年の国内外で起こっている大規模な自然災害の要因の一つが、この気温上昇だという声もある。また、気候変動に伴い、現在さまざまな作物が栽培されている主要地域の一部で、栽培に適した土地の面積が大幅に減少する可能性があるという研究結果も出てきている。

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IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、食品の生産、加工、流通、調理、消費に関連するすべての要素と活動をまとめたフードシステムが、温室効果ガス排出量全体の最大37%を占めているという。こうした状況からも飲食店がカーボンニュートラルに取り組まなければならないことは明白だ。

飲食店が取り組めること

|CO2排出量の算出

まずは、どこで無駄や非効率なエネルギー利用が起こっているかを見直すことが重要だ。環境省・経済産業省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームによると、CO2排出量の算出には店舗から出る温室効果ガスだけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計したサプライチェーン排出量が用いられる。サプライチェーン排出量は以下の3つのScope(スコープ)の合計になる。

Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

|温室効果ガスの削減

Scope1:ガス

・熱伝導のいい調理器具に切り替え
・オーブンを使う際はできるだけまとめて調理
・レンガの薪窯を採用

Scope2:電力

・エアコンや厨房機器を省エネのものに交換
・LED照明を導入
・エアコンの温度調整や節電のスタッフへの注意喚起
・再生可能エネルギーの導入

Scope3:間接排出

・植物由来の原材料を選定
・食品ロス削減
・廃棄物を削減
・地産地消を積極的に採用
・従業員の通勤は、車ではなく公共交通機関や自転車通勤を推奨

|カーボンオフセット

CO2排出量をゼロにしたいが、どうしても減らせない部分がある場合に利用するのがカーボン・オフセットだ。他の事業者が実現した排出量削減や吸収量を購入したり、森林活性化に寄与する活動を行ったりすることで自身が排出したCO2を相殺し、実質的にゼロの状態にするというもの。自身の取り組みだけでは難しいが、どうしても実現したい場合に最終手段として利用する企業もある。

カーボンニュートラルに取り組むレストラン

Wahaca

ロンドンを拠点とするメキシコ料理レストラングループ「Wahaca」は2016年、The CarbonNeutral Protocolに準拠した英国初のカーボンニュートラルなレストラングループとなった。Wahacaは排出量を削減し、冷蔵庫から発生する熱エネルギーをレストランの温水の加熱に利用するなど、独自の方法でサステナビリティを向上させ、カーボンオフセットも実施した。メニューの50%以上がプラントベースで、肉や魚もアニマルウェルフェアやサステナビリティに配慮したものを使用している。

Jikoni

イギリスのJikoniは、グリーンエネルギーへの切り替えやヴィーガンメニューの導入などの取り組みを行っている。また、炭素排出量を削減するために、Jikoniはカーボンニュートラルの達成を支援する企業Climate Neutralと協力し、具体的な削減行動計画・実行に移している。畜産物による温室効果ガスを考慮し、メニューは100%ベジタリアンとヴィーガン仕様へシフト。テイクアウト容器にはプラスチックを使用せず、すべて家庭でコンポストが可能なものに変更した。調達については地元の持続可能なサプライヤーと提携し、フードマイレージの削減に取り組んでいる。

レストランのカーボンフットプリントを計算するサービス

レシピ de カーボンフットプリント

2021年12月に、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)は、食事メニューのレシピをもとに21品目のカーボンフットプリント(CFP)を算出した「炭素版カロリー表」を公開した。

レシピを元にカーボンフットプリントを計算する「炭素版カロリー表」が公開

Foodsteps

2021年8月にイギリスのFoodsteps社は、1,000種類以上の食材の環境影響などを示した同国初のデータベースを開発し、カーボンフットプリントを算出するサービスを開始している。

イギリスで初。カーボンラベル付きのレストランメニューを実現する「Foodsteps」

カーボンニュートラルの今後

昨今、カーボンニュートラル実現に向けて自治体や企業ごとに、具体的な対策が取られるようになった。飲食業界においても2020年にスターバックスが、CO2、水、廃棄物のフットプリントを半減させる環境目標を正式に決定し、地球から利用する資源の量よりも還元する量を増やす「リソースポジティブ」を実現すると宣言している。気候変動への対策が急務となるなか、カーボンニュートラルへの取り組みは業界問わず必須となりそうだ。

【参照サイト】Climate Change and Land
【参照サイト】脱炭素ポータル|環境省
【参照サイト】Jikoni Celebrates Going Carbon Neutral With A Dinner & Pop-up Shop
【参照サイト】スターバックスが掲げる、コーヒーに関する環境目標

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