ケージフリーとは
ケージフリーとは、平飼いや放し飼いなど、採卵鶏をケージの中に入れずに飼育する方法だ。従来のケージ内で飼育する方法がアニマルウェルフェアの考え方に反しているという考えのもと世界的に推進されている。スイス、スウェーデン、フィンランド、ドイツなどでは、すでにケージ型の飼育方法を法律で禁止している国もある。
日本の採卵鶏の飼育方法
採卵鶏の飼育方法にはアニマルウェルフェアの考えに近い順に「放し飼い」「平飼い」「エンリッチドケージ」「バタリーケージ」の4つの飼い方がある。公益社団法人畜産技術協会の報告によると、日本の92%の採卵養鶏場が「バタリーケージ」を採用しているという。
放し飼い
屋外と鶏舎を鶏が自由に行き来できるようになっている飼育方法。日中の多くを屋外で過ごすことが条件になっており、日本では放し飼いで育てられている鶏はとても少ないのが現状だ。
平飼い
鶏舎内で放し飼いをする飼育方法。鶏は自由に運動でき、止まり木があれば羽を休めることもできる。自由に動き回れることで、ストレスが軽減される
エンリッチドゲージ
エンリッチドとは「改良された」という意味で、パタリーゲージよりも1羽あたりの飼育面積を広く設定し、止まり木なども用意したゲージのこと。
パタリーゲージ
一羽当たりの飼育面積が極めて狭く設定され、面積当たりの採卵効率に重点を置いた飼育方法。世界で広範囲に使用されている飼養方法だが、鶏の行動は極端に制限される。アニマルウェルフェアの観点から、EUでは2012年からバタリーケージを禁止する動きも出ている。
ケージフリーエッグ宣言をしている企業
自社で使用する卵をケージフリーに切り替えることを消費者に約束することを「ケージフリー宣言」という。世界中でこの動きは広まっており、大手ホテルグループのヒルトン・ホテルズ&リゾーツやインターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)は2025年までにホテルで使用する卵を全てケージフリーに移行することを宣言したほか、スターバックスやSHAKE SHACKなどの外食チェーンもケージフリーに乗り出している。また、日本でも内閣府の食堂で使用される卵がケージフリーに切り替わったことも話題になった。
ケージフリーエッグの生産者
井上養鶏場
神奈川県相模原市にある1928創業の井上養鶏場は機械化による大量生産は行わず手作業による平飼い養鶏を続けている。また、雄雌混飼の平飼いによる養鶏で、有精卵の生産販売をおこなっている。
セオリーファーム
セオリファームでは生産性よりも鶏にストレスを与えないことを最優先している。空気の流れがよく、床が自然に乾きやすい構造の鶏舎で平飼い飼育をおこなっている。一坪当たりのニワトリの飼育羽数は6.5羽で、ほかの平飼い養鶏場では約40羽、一般的なケージ飼い養鶏場が約150羽であるのに対してとても少ない。
ケージフリーの課題
放し飼いで鶏が外へ出られる場合は特に害虫を食べてしまう恐れがある。鶏の食べたものは卵の質に影響するので、安全性の確保という面では課題といえる。また、鶏の快適さや病気のリスク削減にために清潔さを保つ必要があるが、飼育面積が広くなればなるほど飼育者の清掃業務の負担が増える。万一、鶏がフンを踏んで歩くというような状態が続けば、病気による死亡率が上がり、結果として卵の高騰にも繋がりかねない。
ケージフリーの今後
こうした課題は鶏の行動の自由度を重要視しているからこそ起こりうることだ。また、1羽1羽のスペースが広いため、ケージ飼いに比べて伝染病のリスクが軽減されるというメリットもある。ケージフリーは管理面での生産者の負担は大きいが、それだけ手間暇をかけ幸福が尊重されているといえる。ケージフリーエッグを選ぶ消費者はアニマルウェルフェアへの関心が高い人が多く、商品の背景や生産者の考え方に敏感だ。国内ではイオンやコストコなど大手の食品スーパーマーケットでも取り扱いを始めており、ケージフリーエッグの認知度が高まっていることが窺える。飲食店においてもケージフリーエッグを取り入れることで、アニマルウェルフェアや健康志向といったブランディングの強化につながるのではないだろうか。
【参照サイト】鶏卵の表示に関する公正競争規約及び施行規則
【参照サイト】日本のケージフリー宣言企業一覧
【参照サイト】公益社団法人畜産技術協会
【参照サイト】株式会社落水正商店