BIO HOTEL®(ビオホテル)とは

2001年にヨーロッパで発足した「Die BIO HOTELS(ビオホテル協会)」が認定した、厳しいBIO基準をクリアした持続可能な宿泊施設のこと。
BIO HOTELは提供する食事やアメニティにおいてBIO(ドイツ語でオーガニック)な製品を使用し、再生可能エネルギーを活用するなど環境保護に積極的に取り組んでいることが前提となる。

地域の生産者とのネットワークを大切にし、信頼関係を構築することで独自のホスピタリティを充実させ、同時に生産者のモチベーション強化にも繋がっている。
また、タオルやベットリネン類などの備品から施設の建材や内装材まで、できる限り自然素材を使用。再生可能エネルギーの活用など、CO2排出量削減に取り組んでいる。

このように日常的、またホテル業務において総合的に、責任感のあるサステナビリティを意識・実践しているのが特徴だ。

BIO HOTELS JAPANの公式サイトによると、ビオホテル協会の厳しい基準を満たして認定を受けたホテルはドイツ、オーストリア、イタリア、スイス、フランス、スペイン、ギリシャの7ヶ国、約100軒(2016年時点)だ。

BIO HOTEL®認証制度

ビオホテル協会で設定している認証基準は大きく3つ。
認証は一年毎の検査により更新され、年度途中の抜き打ち検査も実施される。その際に基準を満たしていない場合は、罰金が科せられるか強制退去という厳しい仕組みとなっている。

1.フード基準〈食べ物・飲み物等〉
基本的に全てBHJガイドラインに達したものであること
2.コスメティック基準(コスメ、せっけん、シャンプー等)
全てBHJガイドラインに適合したものであること
3.環境基準
1つ以上のCO2排出量削減の取り組み

BIO HOTEL JAPAN(ビオホテルジャパン)とは

2013年、「Die BIO HOTELS(ビオホテル協会)」の公認を受け、「BIO HOTEL JAPAN(ビオホテルジャパン)」(以下BHJ)が設立された。

BIO HOTELの普及はもちろん、空間やサービスといった体験を通して「BIO」という新しい価値観を創造することをミッションに掲げた。BHJでは、BIO HOTEL認証制度を採用しつつ、日本独自の厳しいガイドラインを設定している。

国内のビオホテル3つ

「カミツレの宿 八寿恵荘」長野

日本のBIO HOTEL第一号は、長野県にある「カミツレの宿 八寿恵荘」。自然に寄り添った運営スタイルで2015年に認証を受けている。

料理に使うのは野菜のみ。自家農園で無農薬栽培したものや、近隣の農家から届く採れたての野菜が主役の、体に優しい食事が提供される。
寝具やリネンはオーガニックコットン、内装の木材にはすべて県内産の無垢材を使用。地元池田町のアカマツの床をはじめスギ、ケヤキ、ヒノキなど計9種類の木が用いられ、部屋にいながら森林浴をしている感覚を味わえる。

宿名にあるカミツレ(カモミール)は、自社スキンケアブランド「華密恋(かみつれん)」から。30年以上作り続けているカミツレエキスを使ったスキンケアが使用でき、エキスをたっぷり入れたお風呂「華密恋の湯」に浸かれるのは、同宿ならではのメリットだ。

「Auberge erba stella(オーベルジュ エルバステラ)」北海道

2018年にビオ認定を受けた「Auberge erba stella」は、野菜ソムリエプロの資格を持つ夫婦が営む全3室のオーベルジュ。環境への影響を考慮して地産地消の新鮮な食材を扱うことを、最大のホスピタリティとしている。

またケミカルフリー、プラントベース、オーガニック、持続性など、ゲストへの6つの約束を挙げている。どういった取り組みや考え方に基づいたサービスが受けられるのかが明確だ。

2022年にはプラントベース、つまり動物性食品不使用の食事内容に移行。できる限り固定種・在来種を、無農薬・無肥料栽培で育てた自家菜園の野菜をメインに、自分たちで育てられない野菜やフルーツは、近郊の生産者から仕入れている。

もちろんスキンケアなどアメニティもビオホテルのガイドラインに沿ったものを揃えており、女性限定で自然由来100%のスキンケアブランド「サプミーレ」セットの用意もある。

「おとぎの宿 米屋」福島

2016年、温泉宿では初認定を受けた厳選かけ流しが自慢の宿。遊び心に溢れた「おとぎ話」をモチーフとした内装やサービスも好評だ。

地産地消を基本としてきた「おとぎの宿 米屋」だが、震災以降は地元産のみにこだわらず食の安全・安心を最優先させている。
国内生産1%という希少価値の高い牛肉、添加物やワクチンを与えず平飼いで育てた鶏の卵、米屋敷地内の自家農園で栽培した無農薬・無肥料、自然栽培の野菜。そして、JAS有機認証、国際的なオーガニック認証に適合した調味料にいたるまで、ビオホテル協会のガイドラインをクリアした食材を90%以上使用。

各部屋置きのスキンケアアメニティや大浴場のシャンプー・ボディーソープは、 国際的なオーガニック認証のアイテムを揃えている。
また大浴場や部屋付き露天風呂の溢れる温泉水を、館内の給湯や冷暖房のエネルギーに変換するシステムを導入し、CO2排出量削減に取り組んでいる。

 
近年、宿泊業のサステナビリティへの取り組みに、関心が集まっている。ノベルティ制作などを手掛けるアイグッズ株式会社が2022年1月に実施した調査によると、旅行者の71.1%が、環境に配慮している宿に好印象を持つと回答した。また、年に6回以上旅行をするリピーター層の74.7%が、環境に配慮した消費であるエシカル消費を意識すると回答した。

ヨーロッパ発祥のBIO HOTELはその厳しい基準からか、国内の認証ホテルはまだ少ない。しかし、サステナブルな取り組みを積極的に行う宿は国内にもたくさんある。コラム「ホテルのサーキュラーエコノミーを考える(2)認証制度編」では、「BIO HOTEL」の他にも、「エコマーク認定」や、「LEED認定」など、さまざまな認証制度を紹介している。

こうした認証の取得を目指し、「エコツーリズム」へシフトしていくことで、多くの消費者から選ばれる宿づくりの実現に近づくのではないだろうか。
 

ホテルのサーキュラーエコノミーを考える(2)認証制度編

【参照サイト】ヨーロッパ ビオホテル協会
【参照サイト】BIO HOTEL JAPAN

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