新型コロナウイルス流行の影響で、多くのカップルが披露宴やウエディングパーティーを控えたことにより、大きな打撃を受けたブライダル業界。しかし2023年5月の5類移行を受け、業界全体が徐々に回復傾向にある。
このタイミングで、改めてブライダルの最新トレンドを押さえておきたいブライダル担当者も多いのではないだろうか。コロナ禍を経て、現在の結婚式はオンライン・オフライン需要が混在し、まさに多様化している状況だ。また、サステナブルな取り組みにも注目が集まっている。
この記事では、サステナブルな結婚式が開催されている理由や現在の結婚式のトレンドについて詳しく解説する。結婚式のトレンドを把握することで、顧客の心をつかむ提案のヒントが見えてくる。
結婚式での、新型コロナの影響は減少傾向へ
現在の日本では、感染症対策の縛りのない結婚式が増えている。マイナビウエディングによる2023年4月の調査によると、新型コロナウイルスの5類への移行で、70%以上の回答者がマスク着用なしの式をしたいとの希望を持っている。
コロナ禍である2022年までは、結婚式開催を延期する動きが見られていた。しかし、2023年においては、一転してウエディング需要が復活したと言えるだろう。
また、感染症対策で活躍したオンラインでの取り組みが、5類移行後も新たなトレンドとして活用されている点にも注目しておきたい。
結婚式のトレンド
2023年の結婚式は、新型コロナウイルスの対策で業界が培った技術やノウハウを、フルに活用していくのがトレンドだ。また、復活したオフライン需要との組み合わせも求められている。
WEBを活用したオンライン開催
感染症対策で導入が進んでいたのは、WEBを利用したオンラインでの結婚式だ。需要が減った現在も、利便性のある一部項目については積極的な活用がされている。
たとえば、WEB招待状の利用は、主催者・列席者ともにメリットのあるサービスだ。ペーパーレス化による環境負荷削減に貢献できるうえ、郵送の手間がなく、紙に比べて集計や抜け漏れの確認も簡単にできる。
また、コロナ禍を経てオンライン会議システムの活用など、オンライン上でのコミュニケーションも一般的なものに。WEB上での結婚式の参列が可能となり、多様化に成功している。オンラインならではの演出も企画できそうだ。
最近では、オンラインでご祝儀が決済できるサービスも開始されている。列席者は直接ご祝儀を持たなくてよくなり、新札の準備の手間もない。オンラインの良いところを存分に活用することで、時間や予算の節約にもつながるだろう。
少人数制で、コミュニケーションを重視
数年に渡った非接触期間の反動で、家族や友人に感謝の気持ちを伝えることが重視されている。催しものに時間を割くより、直接交流できる時間を大切する傾向がある。
また、よりコミュニケーションを取りやすくするため、少人数での実施も増えているのが現状だ。30人以下での開催がトレンドで、両親や親しい友人のみを呼んでいる。少人数制にすることで、ゲスト一人ひとりと対話をする時間が増え、列席者の思い出にも残りやすい。ほかにも、人数が少ないことで準備期間が短くなり、負担が減るのもメリットだ。
フォトジェニックな雰囲気づくり
現在は、InstagramやTikTokなどのSNSを使い、手軽に式の様子を発信することができる。そのため、フォトジェニックを意識した結婚式がトレンドになっている。写真映えするチャペルやガーデンをこだわりの装飾で彩り、SNS上でいつでも見返せるのが魅力だ。ウェルカムボードのような唯一無二のものに力を入れると、話題性が高くなるだろう。
どのような雰囲気の式にしたいのか、フォトジェニックな観点で顧客の要望を聞くことが大切だ。
オリジナリティの追求
一般的な結婚式の定番を追うのではなく、型にはまらない自由な式をおこないたい人が増えている。チャペルでの挙式、披露宴での会食などの従来の流れを意識せず、自分らしさを追求していく。
たとえば、2人の共通する趣味を存分に体験できるような結婚式は、まさに自由な式にあてはまるだろう。列席者とともに登山をしながら、山頂で式を挙げるというユニークな事例もある。ほかの新郎新婦と違い、その2人だからこそできる結婚式を、ともに考えてみるのが良いだろう。
1.5次会の開催
1.5次会とは、披露宴と二次会の中間に位置するパーティーのこと。ゲストにより気軽に参加して欲しいと考えているお客さまや、予算に悩むお客さまにおすすめしたいスタイルだ。
式場やホテルではなく、馴染みのあるレストランやカフェなどで開催するなど、カップルによってさまざまな形式が考えられるが、一般的には開催費用をリーズナブルに抑えられるのが最大の魅力だ。料理の提供も着席でのフルコースではなく、着席でのビュッフェスタイルや立食スタイルなど、予算やゲストの顔触れによって最適なスタイルを選ぶといいだろう。
開催の費用が少ないため、ご祝儀をなくし、会費制にすればゲストの負担を減らすこともできる。大きな金額をかけずとも、ウェディングドレスを披露しつつ、ゲストへのおもてなしができる。
サステナブルな結婚式にも注目が集まっている
社会や経済、人権、地球環境など、さまざまな分野における問題を解決するための持続可能な開発目標である「SDGs」。日本人でも急速に浸透してきており、サステナビリティを取り入れる意識が芽生える要因の一つとなった言葉だ。
結婚式においても、地球環境の保全を考慮した「エシカルウェディング」や「サステナブルウエディング」の開催が注目を集めている。サステナブルな結婚式を選ぶ場合、社会や環境への問題解決に貢献することを目的に行う人が多いが、エコやリサイクルの考えがベースにあるため、開催のためのコストを削減できる場合もある。
ここからは、サステナブルな結婚式の具体的なポイントを紹介したい。
サステナブルな結婚式の6つのポイント
1. 料理
地産地消の食材を取り入れることで、輸送によるCO2削減や地域の活性化に貢献することができる。配送コストを抑えながら、ゲストに新鮮な食事を提供できる点も魅力的だ。地元の野菜のみを使うメニューが一品あるだけで、メッセージ性のあるサービスになるだろう。
また、形や色が原因で店舗に出す基準を満たせない「規格外野菜」も積極的に利用すると良いだろう。見た目以外の品質には問題がないため、食品ロスの減少に貢献できる。
さらに、ビュッフェ形式ではなくコース料理を選択することで、食べ残しを防止することができる。持ち帰り用の容器を用意したり、ゲストごとに量の調整もできるよう配慮すれば、誰もが後ろめたい気持ちがなく料理を楽しめるだろう。
2. ドレス
近年では、環境負荷の少ないオーガニックコットンで作られたウエディングドレスや、ドレスの作成時に余る布を使ったシューズなど、サステナブルな衣装も登場している。あわせて、リサイクル素材を用いたスーツを採用すれば、カップルでのサステナビリティの促進が可能だ。
親が着ていた結婚式のドレスや着物を譲り受け、リメイクしたうえで着る方法もある。ドレスにかかる予算を削減できるだけでなく、家族の絆をたしかめるひとつの演出にもなるだろう。
3. 装飾
会場を彩る装飾も、役目が終わってしまえばゴミとして処分せざるを得ない場合も。少しでもサステナブルな式にするためには、環境配慮を前提とした装飾の採用が必要だ。
土に還る素材のバルーンや紙吹雪を使えば、ゴミの発生を気にせず使用できる。また、会場で使った装花をアロマにするサービスを利用し、思い出とともに持ち帰ればフラワーロスの削減にもつながる。
4. ギフト
発展途上国との公平・公正な取引による商品であることを示す「フェアトレード認証」のような、サステナビリティに配慮されたギフトを用意することで、世界の貧困格差をなくすことにつながる。
フェアトレード・ラベル・ジャパンの公式サイトでは様々なフェアトレード認証商品が紹介されているので、参考にしてみてはいかがだろうか。
また、ブライダルの引き出物では定番といえるカタログギフトも、現在はオンラインでの提供が可能だ。ゴミの削減につながるだけでなく、ゲストの荷物を軽減する効果もある。
5. メイク
最近は、ファッション誌などでも「ヴィーガンコスメ」を目にする機会が増えてきた。ヴィーガンコスメとは、乳製品をはじめ、卵やはちみつなどの動物由来の成分を使用せず、動物実験を行わずに製造した化粧品のこと。
一般的な化粧品に含まれているコラーゲンやスクワラン、プラセンタなどの動物性の美容成分の代わりに、植物性のオイルなどを使用している。動物を犠牲にすることなく作られていることから、残虐性(cruelty)のない(free)「クルエルティフリーコスメ」とも呼ばれている。
ヴィーガンコスメの他にも、化学成分に頼らず作られた環境負荷の少ないオーガニックコスメも人気だ。こうしたコスメを使用してメイクをすることで、サステナブルなブライダルの完成度を高めることができそうだ。
6. アクセサリー・ジュエリー
リサイクル素材の使用や、古いアクセサリーのリメイクなど、サステナブルな取り組みがされているアクセサリー「エシカルジュエリー」を選ぶのも良いだろう。近年では日本でも様々なジュエリーブランドがサステナブルな商品を展開している。
労働力の不当な搾取や環境破壊に加担しない方法で採掘された「エシカルダイヤモンド」や、「ロスパール」と呼ばれる規格外の国産パール、貧困地域の就労支援などに繋がるカラーストーンを使用したアイテムなど、様々な商品があるため、サステナビリティの実現と同時に、個性の演出もできるだろう。
サステナブルな取り組みをしている結婚式サービス
1. zero wedding/ゼロウエディング
「zero wedding(ゼロウエディング)」は、持ち出し費用の上限を超えない結婚式のプロデュースブランド。サステナブルな取り組みにも力を入れており、適正価格での利用と、サステナビリティへの貢献を同時に叶えることができる。
規格外野菜や経産牛を積極的に利用することや、廃棄予定の花をドライフラワーにし、美しさを保ちながら提供するなど、さまざまな取り組みを行っている。
3. asi/エイシス
「asis(エイシス)」は、サステナブルな取り組みを得意とするフォトウェディングサービスだ。asisのドレスやオーダースーツには、環境負荷の少ない素材を使用。古着の有効活用という観点から、アンティークドレスも用意されている。また、和装の製作にはバイオマスの循環サイクルの中で生産可能な正絹(100%シルク)を用いているところも、環境にやさしいポイントだ。
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さらに、古着の下取りを通じてリサイクル活動にも取り組んでおり、次世代に婚礼文化を継承するよう積極的に働きかけている。
結婚式のトレンドは多様化にあり
結婚式のトレンドは、オンライン需要などの利便性をそのままに、多様化している傾向にある。うまく取り入れることができれば、顧客満足度の向上だけでなく、運営コストの削減にも貢献できるだろう。
サステナビリティをはじめとする結婚式のトレンドをつかんだうえで、顧客の想いを実現できるような提案を目指したい。
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