コロナ禍に関連する規制緩和に伴い、国内外からの訪問客増加が期待される今、高い環境意識を持つ宿泊客への対応策を検討しているホテルも少なくないだろう。

また、2019年に「株式会社フレンバシー」が実施した「日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査」では、回答者のうち約32%がヴィーガンに関する何らかの行動を実践していると回答した。なかでも比較的多く見られたのは、「革製品や羊毛製品等の動物製品を利用しない」という回答や、「ヴィーガンのメニューがあれば選択する」という回答だった。こうした結果から、消費者の環境意識やヴィーガンへの関心の高まりが伺える。

今回のコラムでは、アメリカのヴィーガンホテルやB&B(朝食付き宿泊施設)12選を紹介する。提供される食事は、もちろんプラントベース(植物性)。客室の調度品に羽毛やウールの寝具、毛皮や革製の家具といった動物性製品を使用しないホテルや、アメニティーに、動物実験を行わないクルエルティフリーの石鹸やシャンプーを導入しているホテルも。
また、ペットと一緒に泊まれたり、虐待された家畜やペットなどが平和に暮らすアニマルサンクチュアリに隣接するB&Bもある。各宿泊施設が行っている環境に配慮した様々な取り組みをぜひ参考にしていただきたい。

1.The Stanford Inn by the Sea(カリフォルニア州メンドシーノ)

太平洋を一望できる、ペット連れにも優しいリゾートホテル。宿泊客は館内のヴィーガンレストランで、プラントベース(植物性)の朝食を無料で食べることができる。宿泊はせず、朝食を目当てに訪れる人も多いという。夜はヴィーガン仕様の高級ディナーを楽しむことができる。生ゴミはすべて堆肥化するなどフードロスにも配慮し、料理やガーデニングのクラスも多数開催している。

2.Deer Run on the Atlantic(フロリダ州ビッグパインキー)

絶滅危惧種の鹿、「キーディア」の保護区でもあるビッグパインキー島に位置する客室数4部屋のB&B。タオルやシーツなどの備品も、できる限りオーガニックを使用。海を眺めてヴィーガン仕様の朝食を楽しみながら、キーディアが通りかかるのを目にすることができるかもしれない。

3.Volcano Eco Retreat by Heart Core Hotels(ハワイ州マウンテンビュー)

ポリネシアンスタイルと竹を取り入れた客室が印象的なホテル。館内ではストローやペットボトルなどの使い捨てプラスチックは一切使用しないなど、ハワイへの環境負荷削減に真摯に取り組む。朝食は全てプラントベースで、食材はできる限り地元農家から仕入れており、地産地消にも積極的に取り組んでいる。

4.Black Sheep Inn and Spa(ニューヨーク州ハモンズポート)

2020年初めにイギリス人夫婦がオープンしたB&B。暖かくて居心地の良い客室で、まるで自宅にいるような気分で寛げる。朝食の自家製ヴィーガン焼き菓子やパンケーキを、ランチ用に詰めて、近隣のフィンガーレイクスの湖畔でピクニックをするのもおすすめだ。

5.The Gray Barn at Woodstock Farm Sanctuary(ニューヨーク州ハイフォールズ)

Woodstock Farm Sanctuaryに隣接し、美しい山脈と牧草地が一望できるB&B 。The Gray Barn at Woodstock Farm Sanctuary では、「家畜」として飼育されてきた畜産動物を約400頭も保護しており、バスルームとテラス付きの客室には、それぞれ保護された動物達の名前が付けられている。朝食は全てプラントベースで、部屋に動物性食品は持ち込みできないなど、100%ヴィーガンが徹底されている。

また、同ホテルにはウェディングプランも用意されており、“アニマルウェルフェアに貢献するウェディング“という珍しい取り組みも行っている。

6.Red Robin Song Guest House(ニューヨーク州ウエストレバノン)

野生生物のリハビリテーションも行うRed Robin Song Animal SanctuaryのB&B。保護されたヤク、ヤギ、ブタ、ロバ、ウサギなどと触れ合うこともでき、動物好きな人にも最適な施設だ。フレンチトーストやアーモンドバタークレープなど、ヴィーガン仕様の朝食も楽しめる。

7.Dreamers Welcome(ノースカロライナ州ウィルミントン)

歴史ある街並みの中にある、アートに囲まれたホテル。家具や寝具をはじめ、黒炭のハンドソープやキャスティール石鹸などのバスアメニティにも、動物性製品は一切使用されていない。朝食も全てヴィーガン仕様。プエルトリコに系列店Dream Catcherがある。

8.Finca Victoria(プエルトリコ、ビエケス)

生物発光湾や野生の馬なども目にすることができる、ビエケス島のB&B。一万平米を超える敷地内には、野菜を育てる庭園や、朝にヨガのクラスが行われるスペースも。ヴィーガン仕様の朝食はアーユルヴェーダ式。夕食には地元シェフによるヴィーガンのポップアップも開催される。

9.Park Lane Guest House (テキサス州オースティン)

太陽光発電や、オーガニックでクルエルティフリーのバスアメニティを使用し、化学洗剤は一切使用しないなど、環境に配慮している。フェアトレードコーヒーも味わうことができ、そば粉ワッフルや、地元定番のタコスなどの朝食は、ヴィーガン仕様かベジタリアン仕様から選べる。

10. Best Friends Roadhouse and Mercantile(ユタ州カナブ)

1,600匹もの保護された動物達が暮らす、全米最大規模保護区Best Friends Animal Sanctuaryから車で10分程のホテル。ボランティアも宿泊し、ペット用ベッドやシャワー、ドッグパークも併設されている。バスアメニティはクルエルティフリーで、館内のスナックや飲み物も全てヴィーガンだ。

11.The White Pig Bed & Breakfast and Animal Sanctuary(バージニア州シュイラー)

ブルーリッジ山脈に囲まれ、野生生物保護地域に指定されたBriar Creek Farmに位置する。保護されたポットベリーピッグの名前が付けられた各部屋は、アンティーク家具で装飾されている。豆腐を使ったヴィーガン仕様の朝食や、オーガニックのドリンクも味わうことができる。

12.Pebble Cove Farm(ワシントン州イーストサウンド)

シアトルから車で3時間以上離れたオーカス島に位置し、保護されたポニー、ブタ、鶏、ターキーなどが暮らすサンクチュアリと宿泊施設。ウォータービューの各部屋に備え付けられたスナックも全てヴィーガンで、コーヒーや紅茶、豆乳など飲み物は全てオーガニックだ。

同施設のSNSでは、豊かな自然や動物たちに囲まれた結婚式の様子なども公開している。

まとめ

環境にも動物にも優しい、アメリカのヴィーガンホテル。大自然の中に位置し、動物愛護に関心が高い宿泊施設が多いのも興味深い。
ホテル内を100%ヴィーガンにするのは難しくても、動物実験を行わないクルエルティフリーのバスアメニティを導入したり、地元レストランや無農薬農家と協力して、新しいヴィーガンメニューを加えてみたり。各宿泊施設のユニークなアイデアをヒントに新しい取り組みを始めてみてはいかがだろうか。

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table source 編集部
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table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆様に向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
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