
新型コロナウイルスの蔓延により飲食店の営業が制限されるなか、ランチやディナーのテイクアウトを始めるお店の数も急激に増えた。ソーシャルディスタンスを確保するために席数を減らして営業を続けているレストランにとって、席数の制限に関わらず料理を提供できるテイクアウトは貴重な収入源となっている。
一方で、テイクアウトは店内での料理提供では必要がなかった使い捨て容器やカップ、カトラリー、持ち帰り用の袋なども必要となるため、サステナビリティの観点からジレンマを抱えているレストランオーナーの方もいるかもしれない。
また、お店側は良かれと思って無意識に使い捨てカトラリーや袋などを提供しているものの、利用者の中にはそれらを受け取ることに罪悪感や違和感を覚えている人がいる可能性もある。そこで、今回は、テイクアウトサービスをできる限りサステナブルにするためのポイントについてご紹介したい。
必要なものだけを提供する
テイクアウトをサステナブルにするうえで一番優先順位が高いのは、やはり「Reduce(減らす)」だ。通常、テイクアウトを提供する際に、料理に加えて割りばしやスプーン、ストローなどのカトラリー、アルコール除菌ティッシュなどをつけ、さらにそれらをビニール袋などに入れて提供するというお店も少なくない。
しかし、お客様が求めているのは料理であり、その他のアイテムは必要ないこともある。カトラリーやティッシュ、ストローなどは必要かどうかを聞くようにする、もしくは必要な人だけ持っていけるように置いておくなど、できる限り不要な提供を減らすことで、環境にも優しく、コストも削減することができる。
マイ容器・マイカップを受け付ける
マイ容器、マイカップなどを持参してくれた人に対して割引サービスなどを提供することで、できる限り使い捨て容器の使用を減らすというのも有効だ。また、おすすめのマイ容器やマイカップなどを店舗で販売してしまうという手もあるし、無料のテイクアウトサービスとして給水スポット検索アプリの「mymizu」に店舗登録するというのもおすすめだ。現状、こうしたサービスに対応してくれるお店は限られているため、サステナビリティ意識の高いお客様から高い評価を得て、SNSなどで発信してくれるといった副次効果も期待できるかもしれない。
サステナブルな容器・カトラリーを選ぶ
テイクアウトで必ず必要になるのが料理やドリンクを入れる容器やカトラリーだが、これらもサステナビリティの観点を重視して選ぶと、環境に優しいだけではなく見た目の印象も大きく変わり、お客様の満足度を上げることにもつながる。
最近では、プラスチックではなくパルプやバガス、竹など自然由来の素材でできたお洒落なテイクアウト容器などもあり、それらを専門に取り扱う「DINING + SUSTAINABLE」や「TAKE PACK」などのショップも出てきている。
使い捨てのプラスチック容器やカトラリーなどと比較すると価格面での慎重な検討は必要となるものの、容器にこだわることでテイクアウト料理の満足度を上げ、リピートにつなげることができる可能性もあるため、お客様の反応を見るために試験的に導入してみるのもよいだろう。
リユーサブルな容器を使う
使い捨て容器ではなく、洗って何度も繰り返し使用可能なリユーサブル容器を選択肢として用意するというのも一つの手だ。すでに海外ではテイクアウト容器のシェアリングサービスが広がりつつあり、イギリスの「CUP ZERO」、スウェーデンの「loop-it」などがその代表例だ。いずれもアプリを活用することで、返却スポットを簡単に探せるようにしたり、返却によるインセンティブをつけることで参加店舗への来訪を促したりなど、ユーザーと参加店舗の双方に対して便利な体験を提供している。
日本でも同様の動きがあり、沖縄県中頭郡読谷村ではテイクアウト容器のシェアリングサービス「Re&Go」の実証実験が行われた。複数の飲食店が共同で同じリユーサブルな容器とカップを使用し、回収パートナー、洗浄パートナーと連携しながらアプリを活用してテイクアウト容器のシェアリングを行うという仕組みだ。
このように地域の中で連携しながら一つの仕組みを作ることができると理想だが、いきなり大きな仕掛けを作るのは難しいし、アプリを利用するとなれば、CUPZEROやloop-itなどのプラットフォーマーの存在が必要だ。しかし、リユーサブル容器の利用だけであれば、自身の店だけで小さく始めることはできる。
リユーサブルな容器を活用すれば、お客様が再び容器を返しにお店に戻ってきてくれるようになり、関係の構築や新たな売り上げにつながる可能性もある。容器を返却してくれた方に簡単なプレゼントをするというのも一つの手だ。全てのお客様が受け入れてくれるとは限らないし、回収した容器の洗浄というオペレーションも発生するため、まずはニーズを確認したうえで試験的に始めてみるのがよいだろう。
大事なのはコミュニケーション
結局のところ一番大事になるのは、お客様とのコミュニケーションだろう。普段からテイクアウトを利用してくれるお客様の中にも、内心は「もっとゴミを出さない形でテイクアウトができたらよいのに」と考えている人もいるかもしれない。
お店として、マイ容器・マイカップを受け付ける、リユーサブルな容器という選択肢もあるということを貼り紙などで伝えることで、選択肢を知ったお客様が反応してくれる可能性もあるのだ。
また、料理を渡すときも、カトラリーや除菌ティッシュをいるかいらないかを一言聞くだけでも変わるかもしれないし、そうした小さな会話から築くお客様との関係性が、長期的なリピートにつながる可能性もある。
お店としてサステナビリティに取り組むという意思をしっかりとお客様に示すことで、必ず共感してくれるお客様は現れるはずだ。今年の4月に電通が実施した意識調査によると、コロナ渦をへてSDGsに対する関心が高まった人は、全体の34.5%となり、「レジ袋を使わずに済むよう持参する買い物袋など」を利用したい人は64.5%にも上っている。消費者の意識は確実に変わりつつあるのだ。
まとめ
いかがだろうか。テイクアウトはとても便利なサービスだが、どうしても店舗で料理を提供する場合と比較してゴミが増えてしまうという課題がある。この課題を解決し、サステナビリティ意識の高い消費者が罪悪感を覚えることなくテイクアウトを利用できる仕組みを作ることができれば、長期的に店舗の大きな競争力となるはずだ。ぜひできるところから取り組んでみてはいかがだろうか。
【参照サイト】mymizu
【参照サイト】DINING + SUSTAINABLE
【参照サイト】TAKE PACK
【参照サイト】CUP ZERO
【参照サイト】loop-it
【参照サイト】Re&Go
【参照サイト】電通、第4回「SDGsに関する生活者調査」を実施