レストランに入店し、席に座ったお客さまが最初に目にするもの。それがメニューだ。メニューが素晴らしいものであればお客さまの心はワクワクし、自然と会話も弾む。レストランにとっての命ともいえるメニューを、どのようにサステナブルにしていけばよいのだろうか。ここでは15のポイントをご紹介する。サステナブルなお店づくりに向けてメニューを考えている方は、ぜひ参考にしていただきたい。
1. 地産地消の食材を使う
一つ目のポイントは、できるかぎり地産地消の食材を使うという点だ。地元から仕入れた食材は新鮮なままお客さまに提供できるため、美味しさと満足度向上につながるだけではなく、フードマイレージも少なくて済むため輸送に伴うCO2排出削減にもつながる。さらに、レストランの運営を通じて地元農家や地域経済に貢献することもでき、まさに一石三鳥の取り組みだと言える。
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2. オーガニックの食材を使う
できるかぎり農薬や化学肥料に頼らずに育てられたオーガニックの食材を使うことで、安全性が高く健康にもよい料理を提供できるようになる。積極的にオーガニックの食材を取り入れることは、自然を再生し、自然が本来持っている循環のリズムを取り戻すことに間接的に貢献することにつながる。
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3. 旬の食材を使う
旬の食材を積極的に取り入れるという点もポイントだ。旬の食材であれば冷凍など長期保存の必要がないため、収穫してから消費されるまでの環境負荷も抑えられるだけではなく、より新鮮でおいしい料理の提供にもつながるためお客さまの満足度も高まる。また、旬の食材は当然ながら季節によって変わるため、お客さまのリピート来訪にもつなげやすくなる。旬の食材を取り入れられるようなメニューづくりをしておくことがポイントだ。
4. 認証済の原材料を使う
世の中には持続可能な形で生産・調達されている原材料であることを示す様々な認証制度が存在している。具体的には、オーガニックであることを示す有機JASをはじめ、国際フェアトレード認証、レインフォレストアライアンス認証、MSC認証、ASC認証、RSPO認証などが挙げられる。これらの認証を満たす原材料を調達し、お客さまにもそれを伝えることで、お客さまからより信頼を得られるようになる。
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5. 廃棄食材・規格外食材を使う
オランダの大手スーパー、アルバートハインの従業員らが独立して立ち上げたアムステルダムにあるレストラン「Instock」は、廃棄食材を使ったメニューを提供している。スーパーなどから廃棄予定の食材を集め、一流のシェフがクリエイティビティを活かして創り上げる料理はリーズナブルでとても美味しいと評判で、今では世界に知られるレストランとなった。生産者の方から廃棄予定や規格外の食材を安く買い取り、それをメニューに取り入れるのも、サステナブルなメニュー作りの優れたアイデアだ。見た目が悪いものはスープにしたり、消費期限が迫っているものは乾燥させてパウダーにしたり。ぜひ食材をレスキューしてみよう。
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6. 食材を使い切る
キッチンから出るフードロスをできる限り減らすために、食材を使い切れるようなメニューの組み合わせを作ることも重要だ。野菜の根っこから葉っぱまで、動物の頭から尻尾まで、どのようなメニューであれば全ての食材を余すことなく使い切ることができるかを考えることは、食材だけではなくそれを作ってくれた生産者の方、そしてそれを育んでくれた自然への敬意でもある。さらには、仕入れをはじめ調理や準備などにかかる時間や人件費、廃棄物の処理にかかるコストの削減も期待できる。
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7. 食の多様性を担保する
アレルギー対応はもちろんのこと、ヴィーガン、ベジタリアン、ハラルなど、食の多様性を担保し、食の好みやライフスタイルに合わせて自分の好みの食にアクセスできるより包摂的なメニューを作ることも重要だ。こうした取り組みはお店のサステナビリティ推進だけでなく、インバウンド対策にも効果的だ。
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8. できる限り肉を減らす
自然のシステムを切り離された現在の工業型畜産は、気候変動へ大きなインパクトをもたらしていることが明らかになっている。メニューの中でできる限りお肉を減らしたり、もしくは使うとしても放牧型などより環境やアニマルウェルフェアに配慮された畜産により育てられたお肉を使ったりすることで、メニューがもたらす環境への負荷を減らすことができる。
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9. 小さめのお皿を使う
イリノイ大学の調査によると、できる限り小さめの食器を使うことが、フードロスの削減につながることが明らかになっている。スモールポーションを心がけ、食べ残しを減らす工夫をすることで、お客さまが罪悪感を覚えるリスクを下げ、より満足して食事を終えていただけるようになる。
さらに、こうした小さめの食器を選ぶ際には、アップサイクルによる食器を選んだり、取り皿のサブスクサービスの利用したり、お皿自体のサステナビリティにまで配慮したい。
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10. メニューの数を絞る
メニューの数を増やしすぎるのではなく、できるかぎりシンプルにして数を絞ることで、無駄な発注を削減し、キッチン内の食品ロスを減らすことができるようになる。また、選択肢が多すぎるメニューはお客さまにストレスを与え、逆に満足度を下げてしまう。本当に自信を持って提供できるメニューだけに絞り込むことが、サステナビリティと顧客満足の双方の観点で最良の選択だと言える。
アメリカのレストランチェーン「Bloomin’Brands」では、メニューの数が減ったことで、従業員が料理の下ごしらえに費やす時間を減らすことができ、人件費の節約にもつながったという。結果的に、コロナによって減少していた売り上げを回復させることに成功している。
11. メニューの透明性を担保する
メニューには、アレルギー表示はもちろん、生産地や生産者の名前、認証、カロリーなど、その料理に関わる情報をできるかぎり載せるようにしよう。メニューのデザイン上、掲載可能な情報が限られるケースもあるが、その場合はウェブサイトを活用したり、料理提供時の説明で補足したりすることで、食の透明性を担保しよう。
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12. メニューに写真を載せる
お客さまは、これから自分が食べる料理が一体どのような原材料でできており、どれだけの量なのかをあまり知らずに注文することが多くある。注文時の期待と、実際の味や量とのギャップが大きいと、最終的に食べ残しにつながってしまう。メニューに写真を載せておくだけでも、このギャップの多くを解消することができる。
13. 会話でフードロスを減らす
フードロスを解消する一番の方法は、ずばりコミュニケーションだ。メニューを見て注文を受け取るとき、お客さまの食欲や注文の数などを見ながら必要に応じて丁寧にコミュニケーションをとっていくことで、頼みすぎによるフードロスを防ぐことができる。フードロスはちょっとした「会話」だけでも減らすことができる。中国では2021年4月の法改正により、飲食店は客が適量を注文するよう促す必要があり、大量に注文させた場合は最大で1万元(約16万円)の罰金が科されることになった。
14. メニューの素材にこだわる
メニューそのものの素材にまでこだわることができればベストだ。紙のメニューで提供する場合、FSC認証紙を使う、バナナペーパーを使うといった方法もあるかもしれない。使い捨てではなく、繰り返し使用可能なメニューにすることも大事だ。入れ替わりのない定番メニューは繰り返し使用可能な紙にして、旬の食材を使った入れ替わりの多いメニューは黒板に書くなど、メニューに応じて媒体を使い分けるのもおすすめだ。
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15. クリエイティブになる
サステナブルなメニューを作る一番のコツは、クリエイティブになること。メニューの考案から食材の仕入れ、調理レシピ、提供時のコミュニケーション、メニューそのものの素材にいたるまで、どうすればよりサステナブルでお客さまの満足度が高まるものにできるのか、ぜひクリエイティブに考えてみよう。そして、最後にどうしても出てしまったフードロスはコンポストに回すことで次の食材へと循環の命をつなぎ、ゼロウェイスト・レストランへの道のりを楽しもう。
まとめ
いかがだろうか?レストランのメニューをサステナブルにするアプローチは本当にたくさんある。1日100食をお客さまに提供するとしたら、それは1日100回、環境と社会をよりよくし、お客さまを幸せにするチャンスがあるということでもある。ぜひ、クリエイティブに楽しむことを忘れずに、できることから取り組んでみてはどうだろうか?
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