「スマートドリンキング」「スマドリ」という言葉をご存知だろうか。お酒を飲む人も、飲まない人も、そしてあえて飲まない人も、ひとりひとりが、自分の体質や気分、シーンに合わせて、適切なお酒やノンアルコールドリンクをスマートに選択できる飲み方のこと。大手ビールメーカー「アサヒビール株式会社」による飲み方の多様性の提案だ。アサヒビール株式会社は、2022年1月に株式会社電通デジタルと共同で「スマドリ株式会社」を新たに設立。国内20~60代人口の約8,000万人のうち約4,000万人は「お酒を飲まない/飲めない」方であると推計し、そうした人に焦点を当てたデータマーケティングなどを開始している。
2022年の最新の調査では、世界的にアルコールの販売が鈍化する一方で、ノンアルコール飲料の市場規模は拡大を続けていることが分かっている。2022年から2030年までの予測期間において年平均成長率6.9%で推移し、2030年には2兆1326億米ドルに達すると予測されている。
アルコールを飲む人も飲まない人も、それぞれの選択を尊重し合い、共に楽しむことが定着していくなかで、飲食店もそうした“多様性”に対応していく必要があるだろう。そのためには、ノンアルコールドリンクのメニューを増やすだけではなく、環境や健康などに配慮した「サステナブル」なメニューを準備しておきたい。
今回のコラムでは、飲食店の客単価のカギを握るともいえる「ドリンク」に焦点を当て、サステナブルなドリンク10選を紹介する。どの商品も2022年10月現在国内での購入が可能だ。
(本コラムはノンアルコール編。アルコール編はこちら)
目次
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- 1.リサイクル可能な透明PETボトルを使用した「炭酸水」
- 2.廃棄予定の蒸留水を使った「炭酸水」
- 3.地産地消と医療機関の支援につながる「トニックウォーター」
- 4.ヴィーガン認証を取得「ノンアルコールビール」
- 5.オーガニック認証、ヴィーガン認証、ハラール認証を取得「ノンアルコール・スパークリングワイン」
- 6.ヴィーガン認証、ハラール認証を取得「ノンアルコール・ロゼ」
- 7.日本の森林の未利用木材を有効活用した「ソーダ/シロップ」
- 8.フェアトレードによるカカオを使用した「クラフトコーラ」
- 9.食品ロスのフルーツや野菜を使用した「スパークリングドリンク」
- 10.蚕を使った「プロテインスムージー」
- まとめ
1.リサイクル可能な透明PETボトルを使用した「炭酸水」
フランスの炭酸入りナチュラルミネラルウォーターの大手ブランド「ペリエ」では、「ペリエPET500ml」を2022年4月に発売。この発売に際し、フランスをはじめとする各国で長年流通されているグリーンボトルではなく、環境に配慮し、日本国内でリサイクル可能な透明PETペットボトルを採用している。
2.廃棄予定の蒸留水を使った「炭酸水」
2020年、東京都渋谷区「株式会社fabriq」と石川県白山市のアロマ蒸留所「EarthRing」により、「木を使い山を育てる」というミッションのもと地域共創プロジェクト「QINOプロジェクト」が始動。白山市のクロモジ(クスノキ科の落葉低木)の蒸留水を使った炭酸飲料「QINO(キノ) SODA」を販売している。
これまでアロマ精油の原料として活用されてきたクロモジ。精油1mlを作る際にできる蒸留水はその100倍の1Lだが、使用用途が少ないため、現状ではその多くが未利用のまま破棄されていた。QINO SODAは精油成分が染み込んだ、奥行きのある芳香を持つクロモジ蒸留水を活用することで、破棄されるはずだった自然の資源を活用している。
商品の利益の一部は、山林保全に還元。商品の梱包、発送を就労支援施設へ委託することで、障がいを持つ人々の雇用機会も創出している。
【関連記事】 廃棄予定の蒸留水を使った、木の香りを漂わせる炭酸水「QINO SODA」
3.地産地消と医療機関の支援につながる「トニックウォーター」
縄文時代より日本の生薬として伝わる、ミカン科樹木のキハダを使ったトニックウォーター「kizashiトニックウォーター黄檗(キハダ)」。山梨県のプレミアムクラフトリカーブランド「日和株式会社」が開発・販売を行なっている。原材料であるキハダ抽出物に加え、山梨県富士川町産の香り高い手搾りのユズ果汁とカボスエキス、シークヮーサーエキスをブレンド。清々しい苦味が特徴で、ミキサー(割材)としてはもちろんそのまま飲むのもおすすめだという。
日和株式会社では、山梨県下で新型コロナ患者を受け入れる10つの病院に対して同商品を計3,000本寄付するなどの社会貢献活動も行っている。
4.ヴィーガン認証を取得「ノンアルコールビール」
「三菱食品株式会社」は、「RIZAP株式会社」と共同開発した「RIZAP監修 プレミアムノンアルコールビールテイスト飲料」を2022年9月より販売している。大麦麦芽100%にこだわり、香料・甘味料無添加、アルコール分は0.00%。100ml当たり12キロカロリーと低カロリーで、ドイツビール並みのしっかりとした麦の香りと苦みが特徴だという。
同商品は、認証機関「ベジプロジェクトジャパン」によるヴィーガン認証を取得しており、肉・魚介類・卵・乳製品・はちみつなど、動物由来の原材料を使用していない。商品開発時に動物実験も行われていない商品だ。
5.オーガニック認証、ヴィーガン認証、ハラール認証を取得「ノンアルコール・スパークリングワイン」
南スペインのブドウ園で採れたブドウから造られたノンアルコールスパークリングワイン「Thomson & Scott Noughty(トムソン&スコット ナウシー)」。女性CEO兼創業者のアマンダ氏は2019年の「食品・飲料業界の最も素晴らしいビジネスリーダー100人」の一人に選ばれている。
スパークリングシャルドネとスパークリングロゼの2種類を展開しており、どちらもアルコール度数0.0%。オーガニック認証、ヴィーガン認証、ハラール認証を取得している。
一般的に、ノンアルコールワインの製法には「ブドウ果汁をアルコール発酵させず、ワインの風味を足してワインの味に近づける製法」と「一度アルコール発酵させたワインからアルコールを取り除く製法(=脱アルコール製法)」の大きく分けて2つの製法がある。同商品は、脱アルコール製法をとることにより、ワイン本来の風味がより豊かに感じられ、本格的な味わいを楽しめるという。
6.ヴィーガン認証、ハラール認証を取得「ノンアルコール・ロゼ」
大手日本酒メーカー「白鶴酒造株式会社」は、2021年8月よりスパークリングワインテイスト飲料「レ・ココット ロゼ」を販売している。南フランスで栽培されたブドウから醸造したワインを脱アルコール製法によりアルコール除去することで、ワイン本来の香りと味わいを残した、本物志向の本格的な辛口スパークリングワインテイスト飲料だ。
ハラール認証機関「ハラール・コンサルティング」の認定商品。アルコール飲料の製造段階で、濁りを除去する目的で使われる「清澄剤」は卵白やゼラチン、牛乳などを原料としているが、同商品では動物性の清澄剤を使用していない。
7.日本の森林の未利用木材を有効活用した「ソーダ/シロップ」
全国の里山に眠る植生の「食材としての可能性」の発掘を行う「日本草木研究所」は、日本の未利用木材を有効活用する「フォレストソーダ」「フォレストシロップ」を開発・販売している。モミ、アカマツ、カラマツ、アブラチャン、ヒノキなど軽井沢で採れる五種の香木を蒸留し、作られている。
日本の森林面積は国土面積の3分の2にあたる約2,500万ヘクタールで、そのうち人工林は約1,000万ヘクタール。人工林の半数以上が伐採の時期を迎えているが、商材にならない木を切っても赤字になる一方。伐採されることなく放置された木はしっかりと根が張れず土砂災害を引き起こすリスクも高まる上、日光を遮ることで森林の生態系を崩してしまう要因にもなる。また、二酸化炭素を吸収する力が低下していくので、気候変動のペースを速める一因にもなってしまう。日本草木研究所ではこうした問題を解決するため、間伐材の活路開拓や木材の公平な買取など、日本の林業界の活性化に取り組んでいる。
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8.フェアトレードによるカカオを使用した「クラフトコーラ」
健康意識の高まりとともに、砂糖や人工甘味料が使われていない「クラフトコーラ」の人気が高まっている。サステナブルな商品開発や施設運営を行う、京都の「株式会社ビオスタイル」では、コスタリカ産の上質なファインカカオを使用したクラフトコーラ「カカオ生コーラ」を販売している。カカオ生コーラに使用しているのは、無農薬のコスタリカ産のカカオ。ショコラティエールが原地の生産者と直接会って厳選し、栽培・乾燥・発酵までを監修し、対等な関係を保つためフェアトレードによる取引を行っている。
また、クラフトコーラには欠かせない主原料であるコーラナッツを使用せず、カカオを加えることで天然のカフェインを補って製作しており、香料を含む食品添加物も不使用。カカオの香りも楽しめる、京都発のクラフトコーラだ。
9.食品ロスのフルーツや野菜を使用した「スパークリングドリンク」
カットフルーツ工場で一時加工をする際にどうしても発生してしまう様々なフルーツの皮。鹿児島県産の香り豊かな甘夏の皮から天然香料を抽出し、ノンアルコールのスパークリングドリンクにアップサイクルしたのが「あまなつハニー」だ。
原材料となる甘夏の皮は、フルーツ・青果の卸・加工・販売を行う「株式会社 芋銀」の自社加工工場で剥かれ、食品ロスとなったものを使用。老舗飲料メーカー「株式会社チェリオ中部」で製造を行っている。
あまなつハニーを販売する「CRUST JAPAN株式会社」は、食品ロスのアップサイクルを行うシンガポール発のフードテック企業「CRUST」の日本法人。同社はグループ全体で「2030年までに世界中のフードロスを1%削減すること」を目指し、様々な企業と協力し、アップサイクル商品を開発している。
10.蚕を使った「プロテインスムージー」
このままのペースで世界の人口増加が続けば、いずれ人々に必要な栄養分が足りなくなる可能性があると言われているなかで、食糧危機の備えとして注目が集まる「昆虫食」。なかでも蚕(かいこ)はタンパク質を中心に、人間に必要な62種類の栄養素が豊富に含まれている。また、成長が早く省スペースで飼育できるなど生産効率の良さも特徴だ。
こうした蚕の研究や商品開発を行う「エリー株式会社」は、蚕専門の食品ブランド「SILKFOOD」より、「かいこプロテインスムージー」を販売している。商品は、1食分の野菜と蚕由来のタンパク質も摂取できる「グリーン」と、1日分のフルーツと蚕由来のタンパク質も摂取できる「フルーツ」の2種類がある。
【関連記事】 栄養豊富な蚕を使った食品ブランド「SILKFOOD」からプロテインスムージーが発売
まとめ
いかがだっただろうか。今回のコラムでは、2022年10月現在国内で購入ができるノンアルコールドリンク10選を紹介した。
性別や人種、国籍、嗜好、障害の有無など「多様性」を認め合う社会の実現が重要視されると同時に、飲食店の「フードダイバーシティ(食の多様性)」対応に期待する人も増えつつある。こうしたお客さまのサステナビリティに対する意識が高まるなか、「サステナブルなドリンクの調達に取り組む」ことは、顧客満足度の向上につながるのではないだろうか。
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