新型コロナウイルス感染拡大の影響で、消費者の意識にさまざまな影響が及んでいる。2020年10月の意識調査によると、新型コロナウイルス感染症の流行の前に比べて環境問題や環境に配慮した持続可能な暮らしに、より関心を持つようになった人は「非常に当てはまる」「ある程度当てはまる」を合わせて53.4%にのぼった。

そうした意識は消費行動にも反映されており、買い物をする際の意識や行動が「非常に変わった」「ある程度変わった」を合わせると66.8%。なかでも「できるだけ国産のものや地元産のものを選んで買うようになった」「環境に配慮した商品やサービスを選ぶようになった」など、サステナブルな消費に関する回答が上位にあがっている。

飲食店もそうした消費者のニーズをくみ取り、サステナブルなメニューを準備しておく必要があるだろう。table sourceなかでも、サステナブルなレストランのメニューに関するコラムは、多く読まれている人気記事だ。今回のコラムでは、飲食店の客単価のカギを握るともいえる「ドリンク」に焦点を当て、サステナブルなドリンク10選を紹介していきたい。どの商品も2022年9月現在国内での購入が可能だ。今回はアルコール編をお届けする。(ノンアルコール編は近日公開予定)

目次

 

1.廃棄予定のパンの耳をアップサイクルした「ビール」

神奈川県にある1923年創業のベーカリー「Boulanferme(ブーランフェルメ)」は、余ったパンの耳で全国のブリューワリーと協同で醸造したクラフトビール「upcycle(アップサイクル)」を発売。流通経済研究所が2019年に行った「日配品メーカーの食品ロスの実態調査」によると、乳製品や豆腐、納豆などの他の食品に比べ、パンの余剰生産発生率が高いことがわかっている。

Boulanfermeでは以前から、サンドイッチ製造をする工程で切り落としたパンの耳を飼料や肥料として畜産農家などに無償提供するなどして有効活用し、フードロス対策を行ってきた。ほかにもできることはないかと考えていたところ、クラフトマン(醸造家)の賛同もあり、パンの耳でビールを作るというプロジェクトを始めたという。

【関連記事】 廃棄予定のパンの耳から生まれたアップサイクルビール、発泡酒が発売開始

 

2.傷のあるフルーツを使用した香料無添加の「ビール」

日本の地ビール醸造の元祖として知られる「サンクトガーレン有限会社」は、傷などの”訳あり”果物を活用したフルーツビールの製造に力を入れている。同社では、いちじくやりんご、オレンジ、桃、梨などを使ったフルーツビールを季節限定で販売しており、傷のある果物の処分に困った生産者から直接依頼があり誕生したビールもあるという。2021年11月25日より冬季限定で発売されたデザートビール「ウィンターフルーツタルトエール」には、出荷前に傷ついた神奈川県足柄地区産のあしがらいちじくが約110kg活用されている。

さらに、訳あり果物は通常より安く仕入れられるため、製造の際により多くの果物を贅沢に使用することができる。そうすることで、香料を添加せずに果物本来の香りや味わいを引き出すことに成功している。

 

3.生物多様性の保全に貢献する「シャンパーニュ」

100年以上の歴史を持つシャンパーニュブランド「テルモン」では、所有する葡萄畑の100%オーガニック認証の達成のみならず、パートナー生産者の56.5ヘクタールにおよぶ畑のオーガニック認証取得も支援。自社およびパートナー生産者の全葡萄畑が2031年までに100%オーガニック認証されることを目指している。

また、葡萄畑だけでなく近隣の自然地域も含めた所有地全体にわたって、生物多様性の保全にも注力。今後3年のあいだに畑の周辺に2500本の低木を植えて「インセクトホテル(虫のホテル)」を作ることにより、種の多様性を守るとともに、二酸化炭素を継続的に吸収する仕組みづくりに取り組んでいる。

また、シャンパーニュ地方で初めての取り組みとして、外装材やギフト包装材の製造と使用を禁止。ボトルも、従来の透明のものから100%リサイクル可能なグリーンボトルに切り替えていく。さらに、敷地内には太陽光発電システムを設置。すでに同ブランドで使う車はすべて、電気自動車に切り替えているという。

2022年2月にはハリウッド俳優で環境保護活動家としても知られるレオナルド・ディカプリオ氏が、テルモンの環境保護に取り組む真摯な姿勢に共感し、同社への出資を発表したことが話題になった。

 

4.循環型農林業・馬耕による米を使った「日本酒」

近年、農林業の分野でも化学肥料や化石燃料を使わないサステナブルな農林業「循環型農林業」が注目されている。馬搬(ばはん)・馬耕(ばこう)といった馬を使った農林業もその一つだ。道の整備されていない山から木材を馬で運びだす「馬搬」は、山を無理に削る必要がないため、自然環境や水源の保全に役立つ。馬で田畑を耕す「馬耕」では、馬糞も優れた肥料として活用されている。

そうした馬耕によって無農薬で育てられた「馬耕米」で作られた日本酒が「田人馬(たじんば)」だ。一般社団法人馬搬振興会の代表理事として人馬材育成にも取り組む岩間敬氏が立ち上げた株式会社三馬力社が販売する日本酒で、化粧箱も馬搬で運び出した木「馬搬材」で作られている。

【関連記事】 循環型農林業「馬搬・馬耕」を伝えるイベントが開催。馬耕米を使った日本酒も提供

 

5.製造時のカーボンニュートラルを達成した「日本酒」

日本酒「福寿」の醸造で知られる「株式会社神戸酒心館」は、日本酒を造る工程において、CO2排出量の実質ゼロを達成した日本酒「福寿 純米酒 エコゼロ」を2022年10月20日に発売した。

製造におけるエネルギーには、「関西電力株式会社」が所有する一般水力発電の特定電源価値を有した、再生可能エネルギー由来CO₂フリーの電気や、「Daigasエナジー株式会社」のカーボンニュートラルな液化天然ガスを活用した都市ガスを使用している。

その他にも、精米歩合を70%から80%に抑えた精米工程や、「酒母」と呼ばれる工程の省略による醸造日数の短縮など、各製造工程で発生するエネルギー削減策も実施。また、ボトルに直接デザインを印刷し、ラベルレス化も行っている。印刷びんで使用するインクは有鉛から無鉛に、またプリント瓶も透明瓶に静電塗装を施したものに印刷するなど、より環境負荷をかけない取組みを段階的に進めている。

 

6.売上の全額がウクライナ人道支援へ寄付される「日本酒」

日本酒専門の酒販店「株式会社さくら酒店」は、ウクライナでの人道支援に繋がるチャリティー日本酒「SAVE UKRAINE(ウクライナを救おう)」を2022年3月12日に販売開始した。販売価格は税込み1,650円。売上金は全額、日本赤十字社「ウクライナ人道危機救援金」に寄付され、ウクライナでの人道危機対応およびウクライナからの避難民を受け入れる周辺国とその他の国々における救援活動を支援するために使われる。

1日でも早く発売・寄付ができるようにと、ラベルは社員が作り、一番早く印刷が出来る業者に急遽作成を依頼したという。

この「SAVE UKRAINE」は限定本数1,000本を販売したが、5日間ですべて完売。3月28日には後継商品「For the SAKE of UKRAINE(ウクライナのために)」が発売された。販売価格は税込み1,650円で、1本につき200円が国連UNHCR協会に寄付され、ウクライナ全土およびウクライナからの難民を受け入れている近隣諸国での緊急シェルター設置、砲撃で被害を受けた家の修理、現金給付支援、心理的サポートなどの保護・人道支援、冬場の防寒支援などに使われる。

 

7.千葉の環境再生に貢献、和梨の「スパークリングワイン」

千葉県の酒類・食品の総合商社「千葉県酒類販売株式会社」は、見た目に難があったり大きさが基準に満たなかったりするために出荷できない和梨を使った「梨スパークリングワイン」を販売。国内有数の梨の産地として知られる千葉県鎌ヶ谷市で作られる豊水梨を使用しているという。

また同社では、生産者支援としての取り組みを通し、地域社会の繁栄に貢献することを目指している。梨スパークリングワインを含む「千葉のめぐ実シリーズ」の売上金の一部を、千葉県の自然の再生を目的に創設された「ちば環境再生基金」へ寄付。地元の環境保全に役立てている。

 

8.地域の発展を支援、海底で熟成した「ワイン」

「SUBRINA(サブリナ)」は、南伊豆奥石廊中木沖の水深15mで、約半年間熟成させた赤ワイン。海底で眠っていた証しとして、ボトルにはフジツボや石灰藻などがそのまま付着しているという、見た目にもユニークなワインだ。

海底貯蔵庫は国立公園に面し、ありのままの自然が残され伊豆有数の透明度を誇る奥石廊中木沖。ダイビングショップ「中木マリンセンター」を中心に地元漁協の協力を得て貯蔵場所が決まった。冬には荒れ海となる中木はワインに振動を与え瓶内のワインに影響を与えると考えられているという。また、中木川より注ぎ込む冷たい水により海水温を外海より低く保ち、ワイン熟成に最適な温度を維持することができる。海の深さに合わせて水圧が高くなるため、ボトルの耐圧試験を繰り返し、コルクが飛ばないように特殊なシーリングが施されている。

SUBRINAを販売する「株式会社コモンセンス」では、南伊豆の地域発展にも注力。地元ダイバーと行う海底熟成作業は、多くのダイビング観光客が訪れる夏季を避け、オフシーズンである冬季に行っている。自然を守りつつ、地域の新たなサービスを創出し、持続的な発展を目指している。

 

9.コロナ禍で廃棄危機のビールを再生した「ジン」

販売数量が大幅に落ち込み廃棄危機となったビールを蒸留し、ジンとして再生した「REVIVE(リバイブ)」シリーズ。再生型蒸留所を運営する蒸留ベンチャーの「エシカル・スピリッツ株式会社」が販売している。コロナ禍で2021年の夏までの段階で廃棄危機となった余剰ビール約60,000リットルが、15,000本以上のクラフトジンとして蘇るという。

REVIVEの生産は、バドワイザーを展開する「アンハイザー・ブッシュ・インベブ ジャパン会社」と、老舗日本酒メーカー「月桂冠」、エシカル・スピリッツ株式会社の3社が共同で行っている。エシカル・スピリッツの持つビールを蒸留しジンに変える技術を月桂冠へ提供。また廃棄予定であった約80,000杯分のバドワイザーの提供を受け、世界にも類を見ない漬け込み式のビールから生まれたジン・REVIVEが誕生した。

【関連記事】 コロナ禍で廃棄危機のビール、約8万杯分を再生してクラフトジンに。一般販売を開始

 

10.日本の森林の未利用木材を有効活用した「ジン」

全国の里山に眠る植生の「食材としての可能性」の発掘を行う「日本草木研究所」は、日本の未利用木材を有効活用する香木酒「フォレストジン」を開発・販売している。原材料の60%以上にスギ・ヒノキ・ナラの間伐材を使用。ボタニカル原料の100%が国産野生香木という取り組みは、日本初の試みだという。

日本の森林面積は国土面積の3分の2にあたる約2,500万ヘクタールで、そのうち人工林は約1,000万ヘクタール。人工林の半数以上が伐採の時期を迎えているが、商材にならない木を切っても赤字になる一方。伐採されることなく放置された木はしっかりと根が張れず土砂災害を引き起こすリスクも高まる上、日光を遮ることで森林の生態系を崩してしまう要因にもなる。また、二酸化炭素を吸収する力が低下していくので、気候変動のペースを速める一因にもなってしまう。日本草木研究所ではこうした問題を解決するため、間伐材の活路開拓や木材の公平な買取など、日本の林業界の活性化に取り組んでいる。

【関連記事】 里山への想いが「木を食べる」という発想に。「木(食)人」の考える木と人との関係性

 

まとめ

いかがだっただろうか。今回のコラムでは、2022年9月現在国内で購入ができるアルコールドリンク10選を紹介した。

新型コロナウイルスの影響の長期化が懸念されるなか、最近は、適度な対策を講じながらもコロナウイルスと共に生きる「ウィズコロナ(with coronavirus)」という考え方をよく目にするようになった。それぞれのお店が自分たちの価値を見つめ直し、新しい取り組みを始めている。お客さまのサステナビリティに対する意識が高まるなか、「サステナブルなドリンクの調達に取り組むこと」もそうした新たな価値のひとつといえるだろう。

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サステナブルなレストランのメニューをつくる15の方法

【参照サイト】 コロナ禍と暮らしや環境問題への意識に関する調査
【参考サイト】 これまでのワーキングチームによる食品ロス実態調査結果、および事例の紹介
【参考サイト】 サンクトガーレン、飲むシュトーレンのようなビール「ウィンターフルーツタルトエール」2021年11月25日発売。神奈川の樹上完熟いちじく“傷あり”品活用
【参考サイト】 サステナブルな酒造りに取り組む神戸酒心館が世界初カーボンゼロの日本酒を販売
【参考サイト】 日本酒の売上金を全額ウクライナに寄付。人道支援チャリティー日本酒を緊急リリース
【参考サイト】 日本酒でウクライナへの人道支援を継続サポート。5日間で1,099本完売したチャリティー日本酒の続編を発売。
【参考サイト】 サステナブルな未来のためにこだわりぬくシャンパーニュブランド・テルモン 沖縄の自然のなかでシャンパーニュを堪能できる唯一無二の機会を提供
【参考サイト】 千葉県鎌ヶ谷産の和梨を100%使用した梨スパークリング
【参考サイト】 日本草木研究所草木酒|フォレストジン
【参考サイト】 林野庁:森林・林業・木材産業の現状と課題
【参考サイト】 AmazonのCMで話題の南伊豆 海底熟成ワイン『SUBRINA』。第四幕 “ACT4 2020”を6月21日(火) より予約販売スタート。先行予約特典付き

table source 編集部
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