定額で一定期間、製品やサービスを利用することができる「サブスク」。新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要の拡大も相まって、サブスク市場は近年急速に拡大した。
必要なときに必要なものをレンタルし、不要になったら返却する「サブスク」は、変化に応じた“最適”を提供すると同時に廃棄物の削減やリサイクルを促進し、持続可能な循環型社会の実現に大きく寄与するシステムだ。さらに、購入するよりも価格が安くなるサービス形態が多く、導入には金額的なメリットもある。
矢野経済研究所がまとめた「2022サブスクリプション・定額サービス市場の実態と展望」によると、2021年度の国内市場規模は前年度比10.6%増の9,615億円。2022年度には1兆円を超えると予測されており、ものやサービスを購入して所有するのではなく「共有」する考え方への転換が進んでいる。
今回のコラムでは、店舗の内装や消耗品など、ホテルや飲食店に導入できる環境に配慮したサブスクサービス7選を紹介する。
目次
廃棄物削減に貢献
1.家具のサブスク「CLAS」
SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」の達成に向けて、ものを捨てない社会の実現を目指す「CLAS(クラス)」は、月々440円から自由で手軽に家具・家電の利用・交換ができるサブスクサービスを提供している。
CLASでは、返却品に専門のリペア職人による修繕やリフレッシュを施し、次のユーザーに貸し出すことで、商品を廃棄せずに循環させている。また、CLASが展開する自社ブランド「CIRCLE」シリーズでは、各家具をパーツごとに管理することで部分的な破損や劣化に対応できる仕組みだ。
ホテルやレストランの家具や調度品は定期的に変更することで雰囲気が変わり、リピーターのお客さまにも喜ばれる。一方で、新しく買い換えるとなると費用も廃棄物もかさんでしまう。環境配慮の視点だけでなく、イニシャルコストとランニングコストを考えたときに合理的な選択となるのであれば、こうしたサービスを活用することも1つの方法だ。
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改修コストや時間、廃棄物も削減
2.壁紙のサブスク「四季-SHIKI」
「株式会社O-line(オーライン)」が提供するサブスクサービス「四季 SHI-KI」は、四季に応じて年間4回まで、施工込みで月額40,000円から内装を変えることができる。
和紙を用いて施工されるため、内装の改修にかかるコストや時間、廃棄物も大幅に削減することができる。さらに、豊富な和紙のデザインにより、和風だけでなく洋風にもアレンジ可能。和紙には室内の湿気調整や空気の浄化作用もあるうえ、日本の伝統工芸による空間の演出は外国人ゲストにも喜ばれそうだ。
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フラワーロス削減に貢献
3.花のサブスク「bloomee」
週変わりで季節の花を配送する花のサブスクリプションサービス「bloomee(ブルーミー)」では、品質が良好でも茎の長さが足りないことなどを理由に規格外と判断される花を、生産コストに見合った適正価格で買い付けることでフラワーロス削減に貢献している。
流通段階からサプライチェーン全体を持続可能なものにすることを目指すbloomeeでは、減農薬での栽培など環境に配慮した生産活動に取り組む生産者との連携を強化。2022年10月には、花き生産業者・流通業者が環境・法令・品質等の基準に適合した生産や流通を行っていることを認証する国際認証「MPS-FLORIMARK GTP」マークを、サブスクサービスとして初めて獲得した。
カーボンニュートラルやゼロ・ウェイスト実現に貢献
4.トイレットペーパーのサブスク「BambooRoll」
100%「竹」由来のトイレットペーパーを定期便で配送するサブスクサービス「BambooRoll(バンブーロール)」。
竹は、成長の速さと二酸化炭素を吸収する能力の高さから、プラスチックや木材の代替資源として注目を集めている。竹とラタンの国際機関「INBAR」が発表するレポートによると、竹は植えてから最初の5年間は針葉樹・広葉樹よりも二酸化炭素を多く吸収するという。BambooRollは、こうした竹の特徴を活かし、竹を収穫、使用、そして自生してCO2を再び吸収するという循環をつくることを目指している。
また、BambooRollは原材料だけではなく、ライフサイクル全体における環境負荷にもこだわっている。製造工程で使われる電力はすべて、再生可能エネルギーである水力発電でまかなわれており、漂白はしていない。パッケージにはプラスチック・フリーのリサイクル段ボールを採用し、トイレットペーパーの芯(竹製)と段ボールはリサイクルすることができるため、ゼロ・ウェイストのパッケージを実現している。
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食器の循環を実現
5.取り皿のサブスク「sarasub」
取り皿に特化したサブスクサービス「sarasub(サラサブ)」。1908年の創業の老舗陶磁器メーカー「ニッコー株式会社」のファインボーンチャイナ製食器を、初期費用を抑えながら使用できるサービスだ。
現在、食器業界では、上質な食器づくりに欠かせない土や石などの天然資源の枯渇が進んでいる。一方で、レストランやホテルの現場では食器は消耗品として認識されており、割れることを前提に強度よりも導入コストを優先した結果、廃棄量が増えてしまうケースも少なくない。
そうしたなか、同社は貴重な天然資源を有効活用するために、契約満了後に食器を回収し、できる限りリユース(再利用)・リペア(修理)・リファービッシュ(再製造)を施すことができる「sarasub」を提案。使えなくなってしまったお皿も粉砕し、新たな資源としてリサイクルすることで、食器が廃棄されることなく使い続けられる社会の実現を目指している。
ニッコー株式会社の食器はすべて石川県の自社工場で作られており、その高い品質から、国内外の多くのホテル・レストランで採用されてきた。購入するのではなく毎月定額でレンタルすることで、初期コストを抑えながら同社の上質な取り皿を使用できる。
使用中のレストランからは、お客さまが手にする取り皿を上質なものに変えたことで「お客さまが料理の写真を撮ることが多くなった」「SNSで配信されることが多くなった」という意見も寄せられているという。
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廃棄物を出さない、植物由来の繊維
6.タオルのサブスク「Bio Towel」
「Bioworks株式会社(バイオタオル株式会社)」が提供するタオルのサブスクサービスでは、植物由来の抗菌タオル「Bio Towel(バイオタオル)」を3か月に1度の定期便で配送している。Bio Towelは、上質なコットンに、トウモロコシやサトウキビから作られる化⽯燃料由来素材不使用のポリ乳酸繊維「PlaX Fiber (プラックスファイバー)」を配合して作られた、柔らかな肌触りと高い吸水性、消臭効果が特徴のタオルだ。
ポリ乳酸繊維は、生分解性で燃やしても大気中のCO2を増やすことなく、使用後には一定の環境で水と二酸化炭素に分解できる環境にやさしい素材である一方で、染色ができないという特性からこれまで普及してこなかった。そこで、同社は独自開発した植物由来の添加剤をポリ乳酸に加えることで課題を解決し、品質と機能、染色性を改善した「PlaX Fiber」を誕生させ商品化を実現。定期配送サービスでは使用後のタオルの回収を行い、コンポストやリサイクルによって適正に処理することで廃棄物ゼロに貢献するという。
タオルはお客さまの肌に直接触れるものだからこそ、常に清潔で心地の良いものを用意する必要がある。使い続けるとごわごわして固くなりがちなタオルを、廃棄物を出すことなく定期的に替える手段として活用できそうだ。
朝採れの有機野菜をその日のうちに配送
7.自家農園のサブスク「朝採れ野菜 Chef’s FARM」
「朝採れ野菜 Chef’s FARM」は、飲食店向けに自家農園を提供し、有機肥料・無農薬栽培による栽培を代行、早朝に収穫した野菜をその日のうちに配送するサブスクサービスを提供している。
月額12,000円から利用でき、栽培代行サービスに加えて野菜の苗や種も用意されているため、手軽に自家農園を持つことができる。また、通年で約20種類ほどの野菜の収穫ができ、用意されている種類の他に栽培したい野菜などがある場合でも対応可能だという。こうしたサービスを活用し、店舗から近い場所に自家農園を持てば、地産地消も実現可能だ。
まとめ
いかがだっただろうか。今回のコラムでは、ホテルや飲食店に導入できる環境に配慮したサブスクサービス7選を紹介した。
サブスクは、購入するよりも価格が安くなるサービス形態が多く、導入することでコスト削減や発注の手間を省けるなどのメリットがある。さらに、近年消費者の環境への意識が高まるなかで、環境に配慮した取り組みを推進することは、顧客満足度の向上や他店との差別化にもつながる。
環境に配慮した取り組みを新たに始めるとなると難易度が高いかもしれないが、こうした経営面でのメリットもあるサブスクサービスの導入によって、手軽に始められるのではないだろうか。
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