消費者の環境意識の向上やフードダイバーシティの浸透に伴い、急速に拡大しているプラントベース市場。最近では、スーパーで手軽にプラントベースミートやプラントベースミルクを購入できるようになったことで日本国内でも普及が進んでいる。そうしたなか、年々深刻化する水産資源の枯渇を背景に「プラントベース“シーフード“」が登場しはじめていることをご存知だろうか。
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水産資源の保全に貢献するためには、認証を取得したトレーサビリティが明確な水産物の利用だけでなく、プラントベースシーフードを活用することも手段のひとつだ。そこで今回のコラムでは、日本で製造や販売が行われているプラントベースシーフード5選を紹介する。日本の食文化に欠かせない「魚」の保全に貢献し、インバウンド集客を強化する手段としてご検討いただきたい。
目次
こんにゃく粉由来のプラントベース
マグロ/サーモン/イカ
業務用食材の製造、卸売、輸出入事業を展開する生鮮加工食品メーカー「あづまフーズ株式会社」は、植物由来の代替シーフード専門ブランド「GREEN SURF(グリーンサーフ)」から、こんにゃく粉を主原料とする100%植物性の代替シーフード「まるで魚シリーズ」を発表。シリーズ第1弾として「まるでマグロ」「まるでサーモン」「まるでイカ」の3種をリリースした。
「まるで魚シリーズ」は風味や食感にこだわるだけでなく、白いスジを入れるなど見た目も本物の刺身を忠実に再現。また、傷みやすく賞味期限が短い刺身と比べて、冷凍で730日保存可能であるため食品ロスが生じにくい。「NPO法人ベジプロジェクトジャパン」が発行するヴィーガン認証を取得していることも特徴だ。
2022年9月に伊勢丹新宿店本館地下1階にて3日間限定で開催されたキャンペーン「進化が止まらない!注目の次世代フード特集」では、「まるで魚シリーズ」をプロの料理人が調理した6種のメニューが販売された。ちらし寿司や海鮮丼、カプレーゼ、マリネなど、これまでプラントベースではなかなか実現しなかったメニューが提供され、人気を博したという。商品は同社の公式オンラインショップ(外部サイトへ)で購入が可能だ。
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漂着海藻から取れるアルギン酸から作られたプラントベース
イクラ
柑橘農園を運営する「株式会社Mr. Orange」は、ヴィーガンいくらである「プチル(業務用向け商品名:みずたまご)」を開発、販売している。「プチル」は、漂着海藻から取れるアルギン酸からつくられる粒状の食品。味や色・香りのついた液体に、プチルを24時間漬け込むだけで、味が定着するという。
いくらかと思ったら、みずたまごという新しい食品だそうです。 pic.twitter.com/diAaxhsqx7
— 河野太郎 (@konotarogomame) March 12, 2021
内閣府の食堂で提供された「ヴィーガン海鮮丼」で使用されたことでも話題となった「プチル」。もともと、ソースなどをゼラチン質の膜で覆い球状にする「スフェリフィケーション」と呼ばれる調理技術が存在するが、特殊な術が必要とされることから、日本ではごく一部のレストランでしか使われていなかった。プチルを使うことで、料理・スイーツ・ドリンクなどジャンルを選ばずに、誰でも簡単にスフェリフィケーションを再現することができ、時間が経ってもプチッとした食感はそのままだという。
プチルは公式サイト(外部サイトへ)にて購入することができ、少量サイズから気軽に試すことができる。代替イクラとしての活用はもちろん、工夫次第で様々なアレンジができるサステナブルな食材だ。
【イクラを取り巻く環境問題について、詳しくはこちらの記事へ】
大豆由来のプラントベース
ウニ
食品の製造・販売をする「不二製油株式会社」は、独自の特許技術で作られた豆乳クリームなどを原料に100%植物由来で作られた、ウニの代替食品「ソイウニ」を開発した。
ソイウニは、ウニのねっとり感やザラザラとした粒感まで忠実に再現しており、本物のウニと遜色ない味わいだという。また、本物のウニと比べて変色しにくく冷凍保存もできるため、品質劣化による食品ロスの発生防止にもつながる。品質が一定で臭みがないのもソイウニならではの特徴。メニューへの導入を検討したい場合は、同社の公式ホームページ(外部サイトへ)から問い合わせが可能だ。
昨日はウニのクイズにたくさんの回答をいただきありがとうございました😊
果たしてどちらが大豆でできたウニなのか・・・
実は、正解は「両方とも大豆でできている」んです!!
ちょっと意地悪なクイズだったかもしれません💦 pic.twitter.com/6JomXU5SOl— 【公式】不二製油グループ (@fujioilgroup) August 19, 2022
また、同社が2021年10月に東京・有楽町にて1ヶ月間限定で行った、100%プラントベースのメニューを提供するポップアップイベントでは、ソイウニを調理した「ソイウニドリア」が提供されるなど実用化も進んでいる。「ANNニュース」の取材でソイウニドリアを実食したリポーターは、「食感は非常に滑らかで風味は完全にウニだが、生臭さがないため非常に食べやすい」とコメントしている。
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まとめ
いかがだっただろうか。今回のコラムでは、日本で製造、販売されている「プラントベースシーフード」を紹介した。飲食店がプラントベースシーフードを積極的に利用することは、水産資源の保全に貢献するだけでなく、インバウンド集客におけるヴィーガンやベジタリアン対応の強化にもつながる。
2022年10月11日より、新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした入国者数の上限撤廃などの規制緩和が始まり、これまで義務付けられていた屋内でのマスクの着用についても、2023年3月13日以降は個人の主体的な判断に委ねると厚生労働省が発表した。また、農林水産省が公開した「飲食事業者のためのインバウンド対応ガイドブック」によると、外国人観光客を対象に実施した意識調査で「訪日前に最も期待していたことは何か」という問いに対して、最も多く挙げられた回答は「日本食を食べること」だったという。
一方で、訪日ベジタリアン等を対象とした観光庁の調査によると、「菜食などのオプションがなく食べたい料理を諦めたことがある人」は55%、また「対応店でないと入店しない」と回答した人は45%もいることが明らかになった。
コロナ禍の収束に伴い今後さらなる外国人観光客の増加が見込まれる今、飲食店のフードダイバーシティ対応は欠かせない。日本食にとって欠かせない「魚」を100%植物性で再現したプラントベースシーフードを活用し、メニュー開発に取り組むことで他店との差別化にもつながるのではないだろうか。
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【参照サイト】農林水産省:飲食事業者のためのインバウンド対応ガイドブック
【参照サイト】厚生労働省:マスクの着用について
【参照サイト】観光庁:飲食事業者等におけるベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド